古巣

社会人?になって商社に勤めていた。そこで組織としての商売のイロハを教わった。その10倍くらい、まぁなんと言うか体育会ノリの理不尽な経験をした。

そもそもこちらはいわゆる会社で働いたことが無いので基準がわからない。こんなものなのかなぁ、会社って辛いなぁと言う日々を過ごしていた。しかし学生の頃にやっていた商売の真似事のせいで結構大きな借金もあったし、子供の頃から世界を相手に商売をしたいと言う思いは強く、なんとしてもここで頑張ろうと言う思いだけでなんとか乗り切った。

一通りの成果も出し、次にやることも決まり5、6年後に退職をしたのだが、辞めると言う話を伝えたところ当時の上司にやれ裏切りだの絶対許さないのそれはそれは面倒くさい反応をされて、半ば強引に飛び出したようなものなので、それから顔向けもしづらくてその会社の皆さんとはそれっきりになっていた。確か最後は親が死んだから帰るくらいのことを言って出てきた記憶がある。

そんな古巣と、20年ぶりにお仕事をご一緒させていただく機会に恵まれることとなり、昨日ご挨拶に伺った。しかも先方のトップは当時のぼくの先輩だと言う。あの地獄のようなストレスの中で、ほとんど唯一ぼくを可愛がってくれた先輩。また会えるなんて夢にも思っていなかったので前日は興奮して寝付けなかった。

受付で待っていると後ろから「なべさん?」と言う声。振り向いて顔を見た途端に懐かしさが一瞬に押し寄せてきて20年の時間が一気に凝縮された様な感覚を味わった。打ち合わせを終えてお食事までご一緒頂いたのだが、全く変わってない。豪快で人に好かれる求心力のある人だった。だから大組織の中で上に上がってゆくんだろうな。

で、先輩も交え当時の組織内での自分の経験を話したのだが「そんな酷いことあるわきゃねぇだろ」とみんな言う。いやいやここに生き証人がいますがな。商社ってみんなこう言う社会で、うちなんてマシな方だと思ってましたよ、と言うと「そんな変なのお前の部門だけだよ、聞いたことないよ」との回答。なるほど、かなりエクストリームな環境に置かれていたんだなぁとしみじみ。でもそう言うことに耐えてきたからこそ、会社という組織の中ではある程度動じなくなったんだと思う。

中でも自分より少しだけ年上だったまた別の先輩がぼくの直接の教育係で、その人がキャラも独特でまぁ口うるさい。あれがダメだこれがダメだダメだダメだみんなダメだで、毎日怒られていた。本当こいつだけはいつかぶっとばそうと思っていた。しかしその先輩はある日突然退職をした。最後にぼくに言ったのは「お前ならどこに行っても通用する。頑張れ。」だった。あれは嬉しかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?