ジャズ記念日(祝60周年): 12月21日、1963年@ニュージャージーRVG
Dec. 21, 1963 “The Sidewinder”
by Lee Morgan, Joe Henderson, Barry Harris, Bob Cranshow & Billy Higgins at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ for Blue Note (The Sidewinder)
トランペッター、リーモーガンによる8ビートジャズの金字塔で当時ブルーノート最高の売上を記録したアルバムからの冒頭タイトル曲。
モーガンの音色さながらの明るくキャッチーなイントロとメロディーに続く果てしなく明るく振り 切ったソロと、伴奏者の終始楽しげな演奏が大衆の心を掴んだ結果と言える。
モーガンに続くテナーのジョーヘンダーソンのソロも、その次のバリーハリスのピアノソロも、難解なところはなく、主旋律に忠実で明快さに割り切った演奏も一体感があって良い。このノリの源泉となっているのは、リズムセクション、特に冒頭、ソロ、そして最後まで躍動感あるビートを送り出す、ボブクランショウのベース。
アルバムジャケットは、トランペットを吹くモーガンを正面左斜め下から捉えた写真で、このアングルによって、背景に八角形の法隆寺・夢殿にヒントを得たともいわれているルディバンゲルダースタジオの天井が垣間見える。
秘密主義のゲルダーは存命中はスタジオ内での写真撮影を厳しくコントロールしていたそうで、貴重な一枚と言える。因みにこの曲まで続けて五曲、同スタジオ録音。
左がトランペット、右がテナーサックスに配置され、モーガンのトランペットのヒップなひねりが聴きどころ。そのひねりが、この曲のキーワードで、テナーサックスのジョーヘンダーソンもひねる、というかうねる感じで、メロディーやコブシをかなりブリブリと回している。
本曲は、「ジャズロック」の代表的な楽曲として有名だが、その名称には若干違和感がある。エイトビートのジャズを総称してジャズロックとして良いのか。
当時書かれたライナーノーツには楽曲を24小節の長いブルースという表現とラテンタッチとの記載もあるから、こちらの方が表現としては適切な気がする。どちらかというと、R&B的な気がします。因みにライナーノーツには、曲名は「蛇ではなくてドラマの悪役をイメージした曲」とのモーガンのコメントが記載されている。
聴きどころはモーガンはもちろんのこと、ビリービギンズによるアクセントとなっているタイトなスネアドラム。
そして耳を澄ましたいのはベースのボブクランショウ。頭の野太いベースラインから、シンプルながらゴリゴリ感満載の音数を控えたベースソロまで楽しめる。
この8ビートジャズの流れを作ったのは、現ジャズ界の大御所、ハービーハンコックと推測される。それは本作から約一年半前に制作された以下アルバムでの冒頭曲、これもまた人気のあるファンキーなスタンダード、ハンコック作の”Watermelon Man”にあると考える。
そして、そこから一年後、本作から約半年前の以下アルバムの冒頭曲、”Blue Bossa”がこの流れに乗る。野太いベースのブッチウォレンが両作品に参加して、その流れをブリッジしていると思われる。
そして、本作に連なると考える。その理由として、前作のテナーサックスのジョーヘンダーソンと前々作のドラマー、ビリービギンズが参加しているから、何らかのエッセンスが取り込まれていると考えるのが自然では無いだろうか。
そして、その後もハンコックは、8ビート作品を世に送り出す。
更にハンコックは、80年代に16ビートまで手掛けていくから、意思を持ってジャズの音楽の領域を拡大して進化させていったパイオニアと言える。
さて、最後にモーガンの、煌びやかなこれまでの紹介曲をどうぞ。
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