ジャズ記念日: 2月8日、1966年@ニュージャージー
Feb. 8, 1966 “Maiden Voyage”
By Bobby Hutcherson, Herbie Hancock, Bob Cranshaw & Joe Chambers
At Van Gelder Studio, Englewood, NJ for Blue Note (HAPPENINGS)
ハービーハンコック作曲のスタンダード化は、本演奏によるカバーで決定的となった。
ボビーハッチャーソンのクールな鉄琴が秀逸な旋律と絶妙にマッチ、ハンコック本人もピアノで参加して、題名の通り何に遭遇するか予期出来ない、緊張感に溢れ、戸惑いながらも航行していく『処女航海』の原曲の雰囲気を保っている。そのピアノと鉄琴との絡み方が、この曲のミソ。一方がソロを取ると、もう一方が伴奏に回って、計算されたかの様な漫才コンビのネタの様な間合い。
クライマックスは、ハッチャーソンのソロ、特に3:52からの鉄琴の激しい共振で、「キキキーン」と、この楽器でしか表現出来ない、普段耳にすることの無い折り重なる倍音の音色が捉えられていて刺激的で耳心地良い。
オリジナル作品との大きな差分はドラムで、縦にも横にもダイナミックに予測不能なアドリブでスリリングなドラマを生み出すオリジナル曲の天才トニーウィリアムスに比べると、こちらは冒険、アドリブを控えた縦の上下のリズムキープで、両者を比較すると、どうしても安全航行の印象を受ける。特徴的なのは、ハイハットの使い方。一般的には、スネアドラムを利用する変則的なリズムをハイハットに置き換えているのが興味深い。作曲者が参加している事、そして腕の良いドラマーのよる控え気味な演奏という事から推測すると、リーダーである同じ打楽器の鉄琴との金属音の干渉を避けるための意図的な配慮なのかも知れない。
完成度の高いオリジナル演奏曲を含んだハンコック同曲名のオリジナルアルバムも屈指の名盤でオススメ。2月2-3日に紹介したジャマルの演奏も同作品からのカバー曲で、これもまた偶然かも知れないがニ月の作品。二月になると聴きたくなる(弾きたくなる)アルバムのひとつと言えそう。因みにオリジナルのアルバムは三月録音で、これもまた冬に聴きたくなる。それは、冷たい空気とキリッと冷えたクールな演奏の相性の良さが理由なのかも知れない。
ハンコックのオリジナル曲がこちら。ドラムのみならず、トランペットのフレディハバードのドラマティックな演奏も素晴らしい。
最後に、ジャマルの演奏に興味がある方は、こちらからどうぞ。
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