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ジャズ記念日: 12月22日、1977年@サンフランシスコ

Dec. 22, 1977 “Sophisticated Lady” by Jimmy Rowles & Ray Brown at Coast Recording, San Francisco CA for Concord Jazz (As Good As It Gets)

エリントンへのオマージュをする企画のように、11月6日に登場した名伴奏ピアノ奏者のジミーロウルズが、本作約五年前の12月5日紹介曲でエリントンとデュオ演奏を行ったレイブラウンと組んで、エリントン作曲のスタンダード曲を同じくデュオ演奏。

ブラウンを軸にエリントンと比較すると、白人のロウルズはバーラウンジで流れる音楽のように軽やかで優しく、エリントンのパーカッシブなタッチの強さとスケールの大きさが際立つ。

エリントンとのアルバムでも以下の通り本曲が演奏されているので、比較すると興味深いが、名伴奏者同士の演奏ということもあってか、両作品に登場して対象軸となるブラウンですら、エリントンとの緊張感ある冴え渡ったトーンから一転して、ロウルズと傾聴・調和志向のリラックスした演奏となっている。 本作録音時にロウルズは59歳、ブラウンは51歳と年齢差も少なく、二人とも円熟期に入っているのも、その一つの理由かもしれない。

そして本作から遡る事、37年の1940年10月1日にエリントンとブラントンによるオリジナルのデュオ演奏があって、ベンチマークされていると思われる。ブラントンの弓弾きが印象的。

本録音はサンフランシスコで、同じベイエリアに拠点を構える独立系新興レーベルのコンコード。
ジャズ愛好家のカーディーラーが立ち上げた1969年開始のコンコードジャズフェスティバルに端を発して、1973年に設立され、ファンタジー、スタックス、テラーク、サボイといったレーベルを買収して現在も存続している。その結果、ジャズの独立系レーベルとしては最大手となり、Prestige、Riverside、Contemporary、Pablo、Vee Jayといったカタログを保有している。

話を演奏に戻すと、音質的には演奏同様に柔らか目のトーンで、ピアノについては若干エコーが効いている印象。冬のサンフランシスコは曇りがちとはいえ湿度は低いので、敢えてそのような音作りをしているものと思われる。これも先のカラッとした空気感のエリントン作品とは好対照。組み合わせの妙とレーベルの姿勢が浮き彫りになる作品と言える。

このコンビには”TASTY!”という1979年10月録音の二作目があるので、スタンダード曲で構成された第一作目の本作は好評を博したものと思われる。

アルバムジャケットは何処となくCTI調

因みに本アルバムタイトルは、”As Good As It Gets”、その名前で思い出すのは、ジャックニコルソン主演映画の「恋愛小説家」。その意味としては、「最高に素晴らしい」というポジティブな意味と、「これが最善」というネガティヴな意味がある。本作は間違い無く前者で、映画の方は両面を意味しているような気がします。

アカデミー主演男優賞と主演女優賞を獲得

ロウルズはその後、1981年に”Plays Ellington and Billy Strayhorn” (Columbia)というソロピアノによるアルバムを制作しているから、相当なエリントン愛があるのだろう。

1981年6月、コロンビアレーベルの
ニューヨーク録音

最後に、本作アルバムの裏面にロウルズの写真が掲載されていて、それが現在ジャズ界随一の歌姫、ダイアナクラールのブログに掲載されている。その写真をご覧になりたい方は、こちらのロウルズ参加作品の記事をどうぞ。

最後に、ロウルズの手による珠玉のスタンダード曲にご興味ある方は、こちらをどうぞ。因みにロウルズの名前、以下作品では”Jimmie”の綴り。本作では”Jimmy”のクレジットとなっていて、どう使い分けているのか、よく分からなかった。それが権利関係によるもの、と邪推するのは考え過ぎかもしれないが、謎は解いてみたい。

最高に素晴らしい一日をお過ごしください。

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