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ジャズ記念日: 9月12-13日、1958年@ニューヨーク

Sep. 12 & 13, 1958 “Tea for Two”
by Blossom Dearie, Ray Brown & Ed Thigpen
at New York for Verve (Once Upon a Summertime)

初めにレコード針を落としたようなノイズから始まるのは粋な演出か。ディアリーがヴァーヴレーベルに残した6枚のアルバムの3枚目の冒頭曲。しっとりとしたアルバムの幕開け。アルバムにはマンデルロウのギターがクレジットされているが、本曲には参加していない。

ディアリーの甘く耳元で語りかけるような歌唱法は長期滞在していたパリ時代に確立したものと推測する。それも本作品ではフランス語で特徴的なサ行とタ行のアクセントが艶かしく記録されている。

1925年のミュージカルコメディ『ノー・ノー・ナネット』からの一曲でスタンダード化した。この歌の詩には各所に韻が踏まれていて、最後の方の「ェイク」の並びは以下の通り五つ並んでいて耳心地良く響く。

Day will break
And you'll awake
And I will bake
A sugar cake
For you to take

伴奏は当時、全盛期のオスカーピーターソンを支えるレイブラウンとエドシグペン。どちらかと言うと軽めに録音される傾向の多いレイブラウンのベースが雄大な重低音で捉えられているのが嬉しい。

本レーベルのVerve設立者のNorman Granzも、ブルーノート設立者のAlfred Lion同様に東欧系ののユダヤ人家系で、ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック(JATP)と題したコンサート・シリーズを興行し、出演したミュージシャンをマッチングするなどした演奏を録音、世に送り出して一大レーベルを築いたが、エラフィッツジェラルド、オスカーピーターソンのマネージャーを担ったり、ディアリーらのアーティストを発掘するなど、ジャズ界への貢献は計り知れない。著名なアルバムとしては、グランツの人脈をフルに活用した大物ミュージシャンのマッチングシリーズが多い。

サッチモとピアノのオスカーピーターソンの組み合わせ。

テナーサックスの名手、ズートシムズのリーダー作にピーターソン、ギターの名手ジョーパスらを擁した作品。

そのジョーパスと歌姫エラのシリーズ化したデュオ作品。

ノーマングランツも他のジャズ名門レーベル創業者同様に黒人の地位向上に多大なる貢献をしたそうで、人種に関係の無い平等な扱いを、報酬の支払いを始めとして行なっていたそう。グランツはその後、1960年にヴァーヴレーベルを売却、その後のヴァーヴは、より大衆に向けた以下のような名作品を制作していく。

本曲には登場していないマンデルロウのギターに興味を持った方は、こちらのサラボーンの絶妙な歌唱に寄り添った名伴奏作品をどうぞ。

同年二月のヴァーヴレーベル作品は、こちらもお楽しみください。本作と同じ録音場所、ニューヨークの当時の雰囲気が感じられるでしょうか。

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