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今日のジャズ: 1月5日、1962年@ローマ

Jan. 5, 1962 “These Foolish Things”
By Chet Baker,  Rene Thomas, Benoit Quersin & Daniel Humair At RCA Italiana Studios, Rome for RCA (Chet is Back!)

欧州リズムセクションを従えた色男トランペッターのチェットベイカーによるイタリアのローマ録音。アルバム名は、ベイカーがドラッグ服用による投獄から釈放されて「復帰」した、という意味で、その三週間後に録音されている。

このアルバムではベルギー人ギタリスト、ルネトーマのアルペジオを主体とする巧みなバッキングが堪能できる。アルペジオ的な和声はジャズギターの巨匠、アメリカ人のジムホールに近いが、欧州独特の哀愁に満ちたトーンと、チェットベイカー同様にその波瀾万丈な人生が映画にもなった同じベルギー生まれのジプシーギタリストの大家、ジャンゴラインハルトのような音階を扱うのが特徴。この曲でもその音色が何となく冬らしさを醸し出している。

誰と組んでもリリシズムの個性が光るチェットベイカーの堂々たるプレイは、ジャズ界の詩人と呼んでも遜色無い程に、音を選んで紡いで重ねていく事でドラマチックな印象を残す。50秒からの意表を突くハイトーンも計算されたかのように美しい響き。

欧州出身の名ドラマー、ダニエルユメールの若き日の爽やかなブラシ演奏も聴ける。上品なベースがこれらのバランスを取っているのが組み合わせの妙で、この人もベルギー人。

作詞作曲は、イギリス人コンビで、書き記された詞は作曲家に電話で伝えられたという。その歌詞はフランス語にも翻訳されて定番化している。その翻訳名は「取るに足りないこと (Ces Petites Choses)」。この楽曲をいち早くフランスで取り上げたのが、フランスのシナトラやビングクロスビーと形容され、ジャンゴとも共演経験のあるジャンサブロンで、その初録音は本作品から遡ること26年前の1936年のもの。

以下はその後の別バージョンだが、ベルギーの母国語の一つでもある、このフランス語の響きがとても良く味わえるのと、ギターの唄声への絡みが本演奏のトランペットとギターの絡みに似ているので、欧州での本作品当時の録音だけに、チェットはこのサブロンのバージョンを意識して演奏をしているのかも、なんてリアルな想像が膨らんだ。

更に本曲について、ご興味を持たれた方は、詳細記事を手掛けた方がいらっしゃったので、ご覧ください。複数ドラマーによるバージョン比較、とても興味深いです。

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