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『大怪獣のあとしまつ』はクソ映画なのかという話をする

 公開初週こそ「令和のデビルマン」というパワーワードが登場してそこそこ話題になったが、その1週間後に久々のザ・原作レイプというレベルでの実写化を果たした『嘘喰い』が登場した事で割と一気に風化してしまった本作。じゃあ果たしてどういう映画だったか、というと中々にひどい映画だった。しかしながら、世間で言う通りのとんでもないクソとは言い難い映画ではあったので、その辺も含めてつらつら書いていこうと思う。(※オチまで含めてかなりしっかりネタバレをするので、その辺は注意


1.評価点など

 まず、この映画の誉めるべき点について。怪獣の死体処理というアイデアに関してはかなりしっかり仕上がっている。例えば怪人の死体は観光資源として非常に有効であるから、国が疲弊している今はできる限り原型をとどめた状態で保存したい、という意見が出たり、死体から有害物質は出ないが、悪臭ガスが出るのでそれにどう対処するか、などということがストーリーを通しての問題になったりする。ここは素直に、十分に期待に応えてくれてはいた。
 役者陣は豪華な上に普通にちゃんと演技のできるメンバーなので、そこもまあ安心。登場人物の九割がクソみたいな演技をしていたデビルマンとの一番の差別化はここと言える。主役の山田涼介をはじめ配役も綺麗にハマっている。この点に関しては近年の邦画でもかなり見事な方だろう。
 また、特撮技術の出来も良い。しっかり東宝や東映が関わっているということもあって、怪獣の造形なども良好。あえて特撮を使って撮っているシーンも多く、日本の怪獣映画である、という点を感じさせる気概があって、この辺りは素直に好きな部分である。

 人間ドラマに関しては出来の良い場面と出来の悪い場面が半々くらいで存在していたので可もなく不可もなく、という感じだったかな。怪獣の死体処理だけで二時間尺をもたせるのもまあまあきつかったと思うので、個人的には人間ドラマの搭載は必要だったとは思う。それにしてももうちょっとやりようはあったような気はするけども。

2.問題点

 で、ここまである程度褒めるところがあるということは、逆にまあ問題点も数多く存在する。
 
 まず、この作品は登場人物、特に政府関係者が悉く無能に見える。いや、実際は無能ではないのかもしれないけれど、その辺への取材が足りていないのか、政府関係の設定が異常なまでにふにゃふにゃしているので、閣議のレベルがものすごく稚拙で、官僚が仕事をしている背景も見えない。自衛隊の名前をわざわざ国防軍に変えて出してきたのも意味があったかかなり怪しく、怪獣対策に赤紙とかを出すレベルだった割には国が疲弊している感じもなかったり、この辺の設定はツッコミどころがかなり多い。その設定の曖昧さと稚拙な会議のレベルにより、主人公の所属する特務隊出身者以外の政府関係者が凄まじく無能に映る。

 それに追い打ちをかけているのが作中で散りばめられたギャグの数々である。ギャグの内容に関しては所々クスッとくるものはあるけれども、全体的にレベルが低く、その上登場頻度が尋常ではない。これに関しては監督である三木聡の作風がこうだから〜というのはあるのだけれど、この作品とは非常に相性が悪かったと思う。
 この映画はそもそも作品としての性質がバクマンとかで言われる「シリアスな笑い」の系統である。死んだ怪獣の死体をどう片付けるの?という話なのだから、当人達は大真面目でもこちらからしたら笑える、ある種不真面目な主題を取り扱った作品なのだ。そして、ここにあまりにも低レベルな閣僚達と、過剰なまでのギャグが投入されたことにより、不真面目な題材を不真面目に議論している絵面が出来上がってしまうことになった。こうなるともう「シリアスな笑い」は成立せず、そこにあるのは「出来の悪いコント」でしかない。こうなってしまうと作品の魅力は大幅に削がれてしまう。

 そして、この作品で最も最悪なのはなんと言ってもオチだ。個人的にここまで酷いオチは久々に見た。近年で酷いオチというと『ドラゴンクエスト ユアストーリー』のアレがあるが、あれはかなり人を選ぶ上に人によっては不快感を覚えるものではあったけれど、意外性はあるものではあったし、作劇的な意図はあった(ちなみに個人的にはそこまで嫌いじゃない)。しかし、このオチは違う。もう本当にただただひどい。映画の冒頭でデウス・エクス・マキナについてて、それもまあ伏線にはなっているのだけれど、今作のオチは悪い意味でのデウス・エクス・マキナの極みである。オチを簡潔に言ってしまえば、主人公が実は怪獣を倒したウルトラマン的な存在で、国が死体処理に失敗したので仕方ないから変身して宇宙へ運び出したところでエンドロールが流れる。
 
 ……もう言葉がない。主人公がウルトラマンみたいなやつである、という伏線は作品を通して貼られているのだけども、それはともかく「最初っからお前が変身してどうにかしろや!」という以外の言葉が出ない。これで作中で変身できない理由や、死体処理をしなかった理由が語られれば良いのだが、その辺の説明は一切なし。まさに映画全体をとんでもない茶番劇に変えてしまい、時間の無駄感を一掃増してくれる最低のオチであった。書いてて改めてムカついてきた。無料鑑賞だからよかったけれど、金払って見ていたらオチに多分キレてた。

3.総評

 マシな方のクソ映画(100点満点でいうと27点くらい。デビルマンは3点)ではあるけれど、オチが本当にどうしようもないので、嫌いな映画という点で言えば個人的には近年でもぶっちぎりのナンバーワン。これを見るんだったら君は彼方100ワニでも見てた方がまだ時間の有効活用だと思う。そういうわけで金を払っての鑑賞は非常におすすめしない。デビルマン並みのクソって言ってる人の気持ちもまあわからなくはない。

次回予告

 クソ映画について書くなら次回はおそらく『嘘喰い』についてです。その前にまあまともな映像作品についてなんか書きたいけど……。

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