「100日間生きたワニ」を見てきた話

1.はじめに

 そもそも100ワニというコンテンツ自体への興味は薄く、どっちかっていうとマイナスイメージよりだったし、そもそも63分で通常料金というふざけた料金設定に割と腹を立ててたので「金払うのもアレだし見に行かんべ」くらいのスタンスだったのですが、それを翻して見ることにしました。理由になったのは大体二つ。

①上田慎一郎監督作品であること

 これは発表された時から気になっていたことでした。それに加えて、なかなかタイミングが合わなかったり、見る気がしなくて見れずにいた「カメラを止めるな」を最近ようやく鑑賞できたこともあって「これを作った人がとんでもないクソ映画を作るんだろうか」という疑問が生まれたので確認したい欲求が強くなりました。

②好きなクリエイター二人が作品を褒めていたこと

 片方は早い段階から絶賛記事を、もう一人の人もつい最近かなり良かったみたいな記事を上げてました。この二人が面白いっていうなら面白いんじゃないかな〜くらいの感覚が芽生え始めました。

 大体上の二つが理由ですが、個人的にはそこそこ好感触な映画だったので、見に行ってよかった〜って感じです。

2.クソ映画なのか

 巷では異常なレベルのクソ映画だなんだとボロクソ言われてますが、個人的にこの映画をクソ映画とするのはだいぶ厳しいと思います。映画としてのクオリティは及第点を軽く超えてると思います。 

3.前半部「100日後に死ぬワニ」のアニメ化としての話

 このパートに関しては、良くも悪くも原作に忠実だと思います。

 まずアニメーションに関しては、動きはゆったり目で作画枚数も確かに多くはないかなあとは思います。とはいえ、動くところはしっかり動いているし、異常な手抜きを感じるレベルじゃないとは思います。鬼滅とか呪術見たいなジャンプのアレと違って派手な作画でヌルヌル動かせばいいという作品ではないし、新海誠の作品みたいに背景をめっちゃ綺麗にする必要もない作品なので、これくらいの脱力感のあるアニメーションの方が原作の作風ともマッチしているし、これ以上作画に力を入れる必要性は感じませんでした。

 演技に関しても声優陣、俳優陣ともにしっかり演技ができているので、特に不満はないです。度々言及されているセリフ間の間が開きすぎているというところに関しては、アニメ映画としては間が開いているなあという感じはありますが、とんでもなく気になるというほどではないと思います。

 前半部の展開が退屈という話に関してはそもそも100ワニの映画という都合上そうなるのは当たり前なので、それはそもそも原作自体とのミスマッチだと思います。映画に文句を言う話ではないですね。そこを映画で変えてしまうのはしてはいけない原作改変だと思います。

 個人的に欲を言えばラーメン屋が閉店する所は映像にしてほしかったかな〜と思うくらいです。割と重要なとこだったかなーと思うんだけども。
 あと凄い蛇足に感じたのはゲーム大会のシーンですね。Eスポーツへの理解が薄いことをガンガンに感じるあの描写はぶっちゃけマジでいらんかったと思います。なんとなく負けた〜っていうのを描いて終わりくらいじゃダメだったのかな。

3.後半部と”カエル”の話

 そして後半部。映画オリジナルパートです

 ここで重要になるのが映画オリジナルキャラの”カエル”です。このカエル、巷で言われているようにまあとんでもなくウザイです。実際生理的に無理な人は多いでしょう。僕もあまり得意ではないですが、事前情報でウザキャラであるというのは仕入れられていたこともあって、不快感はそこそこくらいですみました。
 そもそも、客側からもある程度不快に取られるのが前提のキャラだとは思うので、ある程度はしっかりウザがられないといけないので、キャラ造形としては成功な部類だとは思います。
 しかしながら、それを抜きにしてもとんでもなくウザイのは事実ですね。特に同じバイトのヘビの女の子への絡み方はかなり嫌悪感を覚えるレベルで、これだけでNGになる人は多いんじゃないかなあと思います。そういう意味では少し過剰だったかな、といは思わなくもないです。

 ただ、単純にウザイのは登場してから十分くらいで、割と早い段階で彼の焦っているような馴れ馴れしさには暗い事情を潜んでいるらしいことは仄めかされます。そこまで耐えれるのかがある種見る側としての一種の正念場かなあって感じがします。こういうところからしても、やっぱ好みは別れる映画だよな、という印象があります。

 このカエルというキャラの評価そのものが後半パートの明暗を分けると思うのですが、個人的には投入して正解だったと思います。もちろん、先述したとおりかなり人を選ぶ劇薬の類だとは思いますが、彼の投入で物語自体は大分面白くなったとは思います。
 このキャラはワニが居なくなった後のポジションに収まったというところ(と色の近さ)からワニと比較されがちですが、真に比較するべきはネズミだと思います。趣味も一緒だし、抱えている暗い事情も一緒だし、なんだったら趣味をやらないことへの言い訳すら一致しています。カエルはネズミのイフの形の一つだとして作られたキャラであり、そんな彼の事情を知ったことでネズミは親友の死から前へ進む決意をするわけです。そしてそんな時にネズミがカエルを励ますために、ワニが自分を励ます時にやったことと同じことをする展開は割と刺さる人は多いと思います。僕は結構刺さりました。

 ネズミとカエルの描写にウェイトが裂かれすぎていて、他のキャラがカエルを受け入れるための描写が少なかったりもするので、手放しで褒められるかっつーとそうじゃないのですが、総じて悪くない作品だったと思います。少なくとも原作を真摯にリスペクトしていたし、最低限以上の面白さやメッセージ性もあったとは思います。

 あとエンドロール。息子を亡くしたワニの両親が息子が好きだったゲームを二人でやってるシーンとかは普通にグッときちゃいましたね。

 間違いなく人を選ぶ部類の作りがなされた映画だし、63分で1900円という強気な値段設定は足を引っ張りますが、個人的には見に行く価値は有った映画だとは思います。少なくとも僕は結構好きでした。アマプラとかに入ったら試しで見てみるのも悪くないとは思います。

P.S

 所で100ワニ関連を見るたびに思うのですが

半裸

なんでワニだけ頑なに半裸なんだ……。

 てっきりワニ父あたりからの遺伝だと思ったのですが、ワニ父はしっかり甚平着てたんでこの謎は深まるばかりです。葬儀の時とかどうしたんだろ、半裸のまま納棺とかまでやったのかな。




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