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20年前、着信ありの4文字で気持ちを伝える時代が確かにあった

ワン切り、知ってますか?

突然ですが、読者の皆さんは ワン切り って知ってますか?
言葉の意味を調べてみると、

ワン切り(ワンぎり)とは、電話機に呼び出しを1 - 2回鳴らしてすぐに切り、相手の着信履歴に自分の電話番号を残すための手法。Wikipedia より

とあります。1回(ワン)の着信で切るからワン切りですね。
20代前半の方がこれを見ても、きっと何のことか分からないことでしょう。相手の着信履歴に電話番号を残すことに何の意味があるんだろう?と。
20代後半の方は、携帯の電話番号を交換するときにするアレのことかな?と思い浮かべるかもしれません。

しかし、30代中盤~40才前後の人にとっては、ワン切りと聞くと青春時代の甘酸っぱい思い出がよみがえってくることと思います。
この記事は、36才の筆者が20年前の高校時代に思いをはせながら、甘酸っぱいワン切りについて書いたものです。ワン切りの甘酸っぱさを知らない若い方も、甘酸っぱさを忘れてしまった同世代以上の方も、是非お読みください。

メール送信1通10円弱。バイト代が通信費に消えていったあの時代

いまから20年前の1999年。筆者は当時高校1年生でした。
人生初めてのアルバイト(ジャスコの1階の八百屋)でお金を貯め、人生で初めて自分の携帯電話を買ったのがこの頃です。

ちなみにわたしが初めて買った携帯は、docomo の P157。青いボタンがカッコイイ。

1999年というのはiモードが発表されて、携帯電話でインターネット的なことができるようになった歴史的な年でした。しかし、iモードが出たからといってすぐに流行るわけでもなく、ましてや高校1年生にとって携帯電話の機種変は金銭的なハードルが高く、iモードはまだまだ少数派。
そんなiモード導入前の携帯同士のコミュニケションは同じキャリア内でのみ送り合える SMS でした。正確なソースが見つからないのですが、1通送るのに数円程度かかっていたように思います。
そう、ちょっとしたメールを送るのに1通数円もかかっていたのです。現代の感覚では携帯でメールをそんなにたくさん送ることは想像できないかもしれませんが、今でいうと LINE でぽんっとスタンプを送るたびに数円とられるイメージ。
高校生にとってこの出費はイタい。時給720円の八百屋のアルバイトで稼いだお金も大半が携帯の通信費に消えてしまいます。

そんなお金のない、けれど携帯電話で誰かとつながっていたいという高校生たちが編み出したのが「ワン切り」というコミュニケーション手段なのです。

着信ありの4文字でつながる心

当時、通信費用がかかるのは主に2つ。「電話をかけて、通話すること」「メールを送ること」です。この2つを行わずにいかにコミュニケーションをとるか、と考えて編み出されたのがワン切りです。
電話をかけて、通話をしなければ(相手が着信に応じなければ)通信費用はかからず、「着信あり」という結果を相手の携帯に残すことができます。
この「着信あり」で気持ちを伝え合うという高度なコミュニケーションが、20年前の中高生の間では行われていたのです。

仲の良い友だちに、ちょっと気になるあの子に、色んな意味でワン切りを送り合っていました。
液晶に表示されるのは、いつも同じ「着信あり」の4文字だけですが、それを受け取る時間や相手によって、「おはよう」「授業終わったよ」「一緒に帰ろう」「家に着いたよ」「おやすみ」などの意味を見出していたのです。あの時ぼくらは、着信ありという無機質な4文字に、いろいろな感情を感じていたのです。

気になるあの子からのおやすみのワン切り着信が、いつもよりちょっと長いツー切りとかだったりするとそこに何か意味を感じてしまって、何かあったのかな、ワン切りじゃなくて電話したほうがいいかな、と悩んだ末にこちらもちょっと長めのワン切りという中途半端なことをしたり。

そんな、20年前の甘酸っぱさを思い出した36才 令和最初の初夏の1日。

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