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ワールドトリガーに学ぶ人材育成術

ジャンプSQで連載中の『ワールドトリガー』に登場する大人や先輩たちはめちゃくちゃ人材育成に力を入れているので、彼らに人材育成の秘訣を学んでみましょう。
ワールドトリガーって何?という方は先に下記の記事をどうぞ!

ストーリーの重大なネタバレはありませんが、設定バレ・微バレはありますのでご注意ください。

子どもの人生は子どものもの。本人の意思を尊重する

ワールドトリガー世界の大人や先輩たちは、本人のやる気と意思を最大限尊重しています。
象徴的なのが、主人公の修が防衛任務で大けがした後に修の母が言った「……好きにやりなさい。あなたの人生だもの」というセリフ。

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修の意思を尊重する修母
ワールドトリガー 葦原大介)

親としては「危ないことはしてほしくない」という本心もあると思いますが、その気持ちを押さえて修がやりたいことを尊重してくれています。
子どもの人生は親ではなく子どものもの。個人の意思を尊重することは人材育成において非常に重要ですね。

「学びたい」と思ったときが学ぶとき

母親に好きなようにやりなさいと言われた修は、先輩の烏丸を師匠とあおぎ日々基礎訓練に励んでいます。
ある日、基礎訓練だけではチームメイトに負担をかけてしまうと考えた修は、烏丸に実践も教えてほしいと頼みます。

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実践を教えてほしいと烏丸に頼む修
ワールドトリガー 葦原大介)

それに対して師匠の烏丸は、修に実践を教えていない理由を説明します。意地悪で基礎ばかりやらせていたわけではなくて、ちゃんとした理由があったんですね。

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焦って実践を教える危うさを説明する烏丸
ワールドトリガー 葦原大介)

烏丸はこのように基礎訓練に集中するべき理由を説明しますが、修はそれでも納得できない様子。そんな修に烏丸はついに折れて、実践を教えてくれる他チームの専門家を紹介してくれます。

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他チームの専門家に話を通す烏丸
ワールドトリガー 葦原大介)

実践を学びたいと主張する弟子に、なぜ基礎訓練が重要かをしっかりと説明し、それでもなおやりたいという弟子の意欲を尊重して承諾。しかも自分よりも詳しい専門家に話を通してくれる…こんな師匠がついてくれたら、メキメキ成長できそうですね。

そして、烏丸からの紹介で修の指導を引き受けた嵐山さん。「下手に攻め手の小技を覚えて今の感覚が狂ったりしないかが心配だ」と烏丸と同じ見解を示します。
しかし、その直後に下記の一言。

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修の学ぶ意欲を尊重する嵐山さん
ワールドトリガー 葦原大介)

実践を学ぶにはまだ早い…だけど、「学びたい」と思ったタイミングを逃すのはもったいない、と指導してくれる嵐山さん、懐が深いです。

正解を教えすぎず、自分で考えさせる

ワールドトリガー世界の育成は、ただていねいに教えるだけではありません。

修が率いる玉狛第二チームが相手チームの戦術を下調べして次の試合の対策を立てる際、烏丸より更に先輩にあたるレイジさんは、「なんでもかんでも教えるな。自分たちで調べさせろ」と修たち自身に考えさせるよう促します。

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教えようとする烏丸を止めるレイジさん
ワールドトリガー 葦原大介)

目先の試合に勝つことだけを考えれば先輩がていねいに教えてあげたほうが早いでしょうが、いつまでも先輩がついてくれるわけではありません。
自分たちで調べて対策を練るのも訓練のうち。目先の勝利にとらわれず、長期的な育成を視野に入れていることが分かります。

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ワールドトリガー 葦原大介)

ティーチングとコーチングを区別して、教えず導く

そうして自分たちで対策を立てる修たちの様子を見にきた先輩オペレーターの宇佐美。宇佐美もまた、正解をいきなり教えるのではなくまずは修たちの見解を聞いています。

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まずは修たちの見解を聞く宇佐美
ワールドトリガー 葦原大介)

宇佐美はこのあとも、「じゃあ対策は?」「もし見つかっちゃったら?」と質問を重ね、修たちの考えを整理・補強しています。
正解を直接教えるのではなく、質問を重ねることで正解に導く、コーチングの手法ですね。

コーチングの手法を使うのは宇佐美だけではありません。
戦闘経験豊富で組織内でも随一の戦術眼を持つ東(あずま)隊の東さんは、チームの作戦を立てる際にメンバーの奥寺と小荒井の意見を引き出し、議論させています。

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議論させ、意見を引き出す東さん(25才)
ワールドトリガー 葦原大介)

目先の勝利にこだわるなら東さんが作戦を立てた方が良いのでしょうが、奥寺と小荒井の育成を優先させて、あえて彼らに作戦を立てさせているわけです。
さらに、「こういうケースはどうする?」と質問を重ねることで2人が立てた作戦を補強しています。

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質問することで正解を引き出す東さん(25才)
ワールドトリガー 葦原大介)

東さんも意見は言いますが、あくまで「駒の1つとしての意見」に留めています。立場が上の人の意見が絶対にならないような気づかいが見てとれますね。
ちなみに東さんは戦闘中も「まずはどうする?」「次はどう動く?」と一貫して奥寺と小荒井に考えさせています。

東さん以外にも、試合前のブリーフィングで作戦の意図を考えさせる王子、試合中に対戦相手の情報を整理させる弓場ちゃんなど、ワールドトリガー世界では、コーチングの手法が浸透しているようですね。

まずは基礎をしっかりと!レベルに合わせた育成メニュー

修に実践ではなく基礎訓練をさせていたように、相手のレベルに合わせた育成をすることはとても重要です。
作中では、東さんが奥寺と小荒井の成長レベルに合わせて使用するトリガー(武器)を制限していました。

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2人の成長を認めて副トリガーを解禁する東さん(25才)
ワールドトリガー 葦原大介)

最初からあれもこれもと手を出してもうまくいきません。まずは基礎をしっかり固めたうえで、少しずつ成長の階段を上がっていくのが重要ですね。
東隊に所属したら基礎がしっかり身につきそうです。

チャレンジを奨励し、失敗を許容する

人材育成では、失敗をおそれずチャレンジさせることが重要です。失敗から学ぶことも大いにあるからです。
ワールドトリガーでは、東さんが小荒井のMAP設定をいじるという提案を「やってみたいならやってみるのもいい」と許容しています。

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メンバーのやりたいようにやらせる東さん(25才)
ワールドトリガー 葦原大介)

「駒としての意見を言わせてもらうと、MAP設定は凝ってないほうが助かるな」と否定意見を出しておきながら、そこまでやりたいならやってみるといいとチャレンジを奨励する東さん。考えたうえでのチャレンジなら失敗をおそれずやってみたらいいと、チャレンジを奨励していますね。

また、失敗したからといって責めるのではなく許容するシーンもあります。
嵐山さんに実践を学んで試合に臨んだ修が真っ先に落とされてしまった試合後の解説で、風間さんが「落ちたことをどうこう言うつもりはない。落とされて学んでいくのがランク戦の存在意義だ」と発言しています。

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失敗してもチャレンジの姿勢と成長を認める風間さん
ワールドトリガー 葦原大介)

結果的には、修のチャレンジは烏丸と嵐山さんの忠告どおり上手くいかなかったのですが、すぐに否定するのではなくチャレンジする姿勢を認めています。こうして、失敗を許容して挑戦が奨励させる文化なら人はすくすく育ちそうですね。

ときには厳しく指導して、とりかえしのつかない失敗はさせない

このように修の失敗を許容した風間さんですが、とりかえしのつかない失敗はさせないよう、厳しく指導することもあります。
実戦で、命令を聞かない笹森に対しては下記のとおりかなり厳しく接しています。

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実戦では自主性よりも命令を優先させる風間さん
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これは試合ではなく実戦なので、失敗したら人の命にかかわります。そんな場面では、意欲よりも命令を優先させ、言うことをきかせているのです。
自主性を尊重するといっても時と場合によります。とりかえしのつかない失敗をさせないためにときには厳しく指導することも重要ですね。

地味な働きでもほめる

このように笹森に厳しく指導した風間さん。その後、笹森の働きもあり敵を撃破することができました。その際には笹森のことを認め、ほめています。

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「いい陽動だった」とほめる風間さん
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この戦いでの笹森の役割は、「姿を隠して奇襲し、敵にやられることで目くらましになる」という地味なものでした。そうした地味な働きであっても、役割を全うしたことを認め、ほめているのです。
厳しく指導するときと、認めてほめるときの使い分けをしっかりできている風間さん、流石(のツンデレ)です。

失敗の責任は上層部がとり、報告をほめる

メンバーの自発的な挑戦を促す文化をつくるには、「いざというときには上層部が責任をもって対処してくれる」という信頼関係が重要です。

修が率いる玉狛第二チームのメンバーの出自が疑われた際、広報部長の根付さんはすかさず「組織の評判を守るのは我々の仕事だ」としたうえで、次々に対応策を決めてくれました。
さらに、もしその対応策で問題が出た場合には自分が責任をとると明言もしています。

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責任をとる根付広報部長
※ストーリーのネタバレ防止のために伏字あり
ワールドトリガー 葦原大介)

このように、一隊員では責任がとれない問題については上層部が責任をもって対処してくれるので、隊員は安心してチャレンジすることができます。
そして、問題が発覚した際にすぐ報告・相談にきた修をほめてくれさえいます。

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失敗の報告をほめる根付広報部長
ワールドトリガー 葦原大介)

何か問題が起きて上層部に報告した際に叱責されてしまうと、それ以降は叱責をおそれて問題の報告が遅くなってしまいます。問題が大きくなる前に報告することは良いことと認める根付さんは、そのあたりが分かっている正しい大人の対応ですね。

相手の目線で話を聞き、共感する

人材育成のためには、メンバーのメンタルケアも欠かせません。
ワールドトリガーでは多くのメンタルケアシーンがあるのですが、特に印象的なのは千佳ちゃんの話を屋上で聞く宇佐美とレイジさんです。

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千佳ちゃんの目線に合わせてかがむ宇佐美
ワールドトリガー 葦原大介)

千佳ちゃんが抱えている心の闇を打ち明けるこの場面。宇佐美は、千佳ちゃんが話しやすいように温かい飲みものを渡し、千佳ちゃんの目線に合わせて身をかがめています。相手が話しやすいよう気づかってあげる、宇佐美のさりげない優しさが見てとれます。

さらに、「自分が人を撃てないのは人から責められるのがこわいからで、わたしはいつも自分のことばかり考えてる」と告白し自分を責める千佳ちゃんに対して、宇佐美はすぐに「それはふつうのことだよ!アタシだってそうだよ!」と共感しています。

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千佳ちゃんを気づかう宇佐美
ワールドトリガー 葦原大介)

千佳ちゃんの発言を否定するのではなく、「アタシだってそうだよ!」と共感することが千佳ちゃんの救いになっています。修や遊真、レイジさんは人からどう見られるかを気にしない強メンタルの持ち主なので、この共感のセリフは宇佐美だからこそ言えるものですね。

悩んでいるメンバーがいたら、話しやすい状況をつくって相手の目線で話を聞き、否定せずに共感する…宇佐美からメンタルケアの基本を学ぶことができます。

以上、「ワールドトリガーに学ぶ人材育成術」でした!みんなもワールドトリガー読んで人材育成を学ぼう!最後までお読みいただきありがとうございます!

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