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高い声を再び出せるようになりました

20代の頃はもちろん、35歳くらいまでは朝起きてすぐハイEsくらいまで楽に出せた私でしたが、年齢とともにレパートリーが変わり、そういった高音を出す曲をほとんど歌わなくなったある日、ハイEsが昔のように出せなくなっていることに気づきました。

今まで教わった先生方から「年齢とともに声の音域は変わってくる」つまり、だんだん低い音域に移ってくることは聞かされていたので、私にもついにその年齢になってきたのだとそれほど悩まずに来たのですが、昔出せた音が出せないというモヤモヤは微かに残っていました。若い生徒はハイEsくらいまでの曲はレッスンに頻繁に持ってきますから、その時に私がお手本を示せないのはいかがなものかとも思っていました(もとから出せないのなら仕方ないですし、先生が全てお手本を示すべきとは思っていません。例えばテノールのお手本をソプラノが示すことはできないわけですし…)。

この自粛期間中、そういった若い学生に動画でレッスンをしていたとき、今もう一度この高い音域に私自身も挑戦してみよう、高い音域を出せるメカニズムを探ろうと思いました。

結果、再びハイEs、さらにその上のEまでは出せるようになったのです。これは嬉しかったです。ただし、若い頃のように「特に何も気を付けずに」出せるわけではありません。若い時に高い声を出した瞬間の身体を今の身体でなるべく再現するという条件をクリアして、今は出すことができます。

高い声を出すために最低限クリアしなくてはならない条件はいくつかあります。人によって「これはクリアできているから、あとはこれとこれだな」と状況が異なります。発声に関しては、私は身体をリラックスエリアとサポートエリアの二つに分けて(サポートエリアはリラックスエリアの上下にあり、リラックスエリアをサンドイッチしている状態…これに関してはいずれ具体的に説明します)それを徹底させる(やるべき場所にやるべきことをさせ、やってはいけない場所をやらないような状態にする)ことで解決しています。私はたぶんそのうちのほとんどはクリアできていたのですが、歳を取って自然にクリアできなくなっていた部分がありました。

私の場合は「身体の縦軸の扱い方」でした。具体的な方法は「肩甲骨まわりを柔軟にし、舌の位置によって体幹をまっすぐ保ち、第三頸椎周辺を絶対に硬くせず、高い声のための道を開ける」ことでした。普段滅多に出さない高音を出すための準備のつもりでやっていたことが裏目に出て、肩甲骨や第三頸椎周辺が硬くなっていることに気づきました。肩甲骨・第三頸椎周辺はリラックスエリアに含まれるのに、ハイC以上の高い声を出すときについつい硬くしていたのです。メカニズムが分かった今、若い頃よりさらに高い声まで出せるようになり、ハイEといった高音を出す際の(自分自身の)喉を開けるということの必要最低空間の感覚が正されました。今まではもう少し開けないと高い声は出ないと捉えていました。しかしそれがやりすぎであり、上記に書いたとおり、やりすぎたせいで肩甲骨まわりや第三頸椎周辺に無意識に力が入ってハイEs、ハイEといった高音が出せなかったことに気づきました。

喉を開けるといった感覚は個人差があります。やりすぎかどうかは声を聞いて第三者が耳で判断するしかありません。開けているつもりでほとんど開いていない、ちょうどよいと本人は思っても開けすぎている(つまり他の場所に弊害が起きている)なども声を聞いて判断できると思います。

名選手=名監督とは限らず、良い耳と適切な指導ができれば良い指導者になれると信じていますが、私の今回のケースは自分が出来たことで、生徒の身体の状態に以前よりさらに細かく気づけるようになったと思います。

一生勉強。ゴールはないと承知していますが、ゴールの方向は見誤らず一歩ずつ近づけると良いなと思っています。

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