高いワインと安いワイン
ドイツ在住、ソムリエ・エクセレンスのみゆきです。
下戸でお酒の飲めない私がソムリエになって海外移住。
ワインや食を通じてもっと日常を豊かに。
自然、食、文化の魅力をお伝えします。
市場で販売されているワインには高いものと安いものとあります。
「高いワインだから美味しいか?」
よく聞かれますが、ソムリエとしての答えは
「答えは必ずしもそうとは限らない。」
ワインは嗜好品なので、
飲む人の個人の味覚の違い(辛党だったり甘党だったり)やTPOが大きく関わります。
高い値段を出して購入したものはプラシーボ効果が働き
「美味しい」「素晴らしい」とか、いろいろ言いたくなる気持ちもわかります。
私はプラシーボ効果が人一倍効くタイプなので、すごくそう思います。
なぜ、高いワインと安いワインが存在するのか?
・原価
・原産国の物価
・法律
・生産までのプロセス
これらの要因が挙げられます。
原価は原産国の物価とも大きく関わります。
ワイン用ぶどうは栽培の適正地域があるので、ブドウの樹を放置しておいてもムクムクと育つような地域は原材料のブドウは安くなります。
機械で一気に収穫する方法、手摘みで収穫する方法もコストが異なります。
シャンパーニュが高価な理由の一つには手摘み収穫があります。(人件費が高いから)
ヨーロッパでは日照量を確保するために、高品質のブドウは斜面に植える傾向があるので、手入れの手間もひとしお。
物価に加え、手間賃が課金されます。
法律
これは、ヨーロッパのワインでよく見る表示ですが、
A.O.C. (Appellation d’Origine Contrôlée)
とかイタリアワインだとボトルの首あたりにD.O.C.やD.O.C.G.という表示があるのをよく見るはずです。
この地域で生産された特定のブドウをつくって、決められたレシピに乗っ取りきちんと作っていますよ!
という法律です。
日本にはない考え方なので、なかなか馴染みがないと思いますが
ヨーロッパはこの法律がチーズにしても、ハム、バターなど各々の地域によって細かく決められています。
地域の特産品の偽物が生産されるのを防ぎ、価値を守るために作られた法律です。
ということでよっぽどのことがおこって、法律が崩れない限り
価格が下落することはありません。
一方で、生産者の立場を守る法でもあります。
次に生産までのプロセス。
要するにこれも収穫後の手間賃。
すぐに現金にしたければ、ブドウを生食用として売ればいいのですが、
そんなにブドウばかり食べられません。(ものすごい勢いで実る)
そこで、人類はブドウを発酵させる技術を生み出します。
発酵させるだけでは安定して美味しく作れないので
「醸造技術」が発達します。
醸造技術のひとつに、樽を使ったり、長期熟成をさせる、、、
など料理人と同じで醸造者の腕前に大きく関わります。
「長期熟成」もワイン界では課金ワード。
50年後に飲んで美味しいワインを、「今」ウン十万出して買うのです。
ワインのボトル一本には
ただのワインが詰まっているだけではなく
歴史的なストーリーに文化、
マーケティングの要素も大きく関わっているのです。
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