Good bye, moon light.

昨日発表になった「ムーンライトながら」の廃止。想定はしていたんだけれども、改めてその報を耳にするとやはりショックだった。

ながら」は徐々に廃止されてきた「ムーンライト」シリーズ?の中で臨時列車にされ、年々運航日を削られながらも唯一残っていた「普通列車」の「夜行」だった。

私は乗り鉄を始めて以降、「ムーンライト」としては「えちご」に1回、「ながら」に(多分)3回乗ることができた。

「えちご」は、これも既に廃止されてしまった「急行はまなす」を使った北海道までの往復鈍行旅の帰りにチートで(本当はひたすら鈍行に揺られて帰って来る予定だったのが、途中でだるくなったため、急遽乗ることにした)、「ながら」はくるりの四国遠征(2018年春季、下りのみ)とCoccoの広島遠征(2019年冬季、往復)だった。乗車回数が多いとは言えないけれども、どれも思い出深い旅の一部になっている。

中でも、去年の12月23日下りは(ライブ遠征の足として使っていたのに間に合わなくなりそうで当時は怒り狂ったけど)複数原因による大幅遅延→浜松での運転打ち切りという、乗り鉄としては"おいしい"トラブルに立ち遭うことができたので感慨深い。(そういえば当時のレポをまだ書いていなかった!)西に着いてから怒りのあまり深く考えずに指定席券を払い戻してしまったけれども、あれは記念にとっておくべきだったなと今は後悔している。


ムーンライトながら」の廃止をもって、国内の普通列車による夜行運転は全て終了となった。今後も「トワイライトエクスプレス」をはじめとする特急ライン、特に高価格帯のものは残すのかもしれないけれども、どうだろう。(あまり心惹かれないので調べてもいないんだけれども。)そもそも今は運航しているのかな?・・・いずれにせよ、少なくとも今後数年は厳しい状態が続くだろう。夜行だけでなく、昼の特急も。


パンデミック以前から、(「国鉄」ではなくなった)営利企業である鉄道会社にとっては、人々の日常の足である普通列車などより明らかに採算のとれる特急を重視する傾向があった。利用者数が少ないと言っては普通列車の運航本数を減らし、不便になったためさらに利用者が離れると廃線した。一方、リニアや新幹線、豪華特急などの「ドル箱」の敷設には熱心で、新幹線開業と共に在来線を第三セクター化し、かつて国内の大部分を覆っていた鉄道網はばらばらに分断されていった。

そこに生きる人々の暮らしではなく、簡単に莫大な利益を上げることができるものに群がるというのは「インバウンド」「IR」あるいは「原発」などと同じ発想だ。利権で儲かる一部の人が得をする一方、多くの人の穏やかな日常には利するところが少なく、挙句、何だかんだで問題が起こり頓挫すると、深刻な打撃・迷惑を、ドル箱でじゃぶじゃぶ儲ける人でも、一時的にやってくる・関わるだけの人でもなく、その地に根を下ろして暮らす人々に致命的に与えることになる。

ウイルスパンデミックの状況下では「旅行」でも「経費で落ちる出張」でも特急が使われる回数はぐっと減る。"Japan Rail Pass"を使うインバウンドさんも来ない。

だからといって既に必要最低限にしか残されていない・利用者も減った普通列車で収益を上げることもできないし(特に地方)、その普通列車に人が乗る機会すら、リモートやら自粛要請やらでますます減る。

採算が取れない。終電を繰り上げよう。運航本数をもっと削減しよう…

これでは電車離れがますます加速するエンドレスループへの突入だ。

そしてその先には、鉄道会社の人員削減(既に委託も増えているけど)、さらなる廃線やその他サービスの停止が見えている。


私は個人的に電車が好きなので、そういう意味でも鉄道サービスがきちんと継続してほしいと願っているのだけれども、それだけでなく、大変な労力と設備投資を伴って数十年前に全国を覆った鉄道網は非常に重要かつ優秀なものだし、それをきちんとメンテして、活用することは、今後の日本の再生にとっても必要不可欠だと考えている。

これだけ物流が複雑化した中で、道路網・車を中心とした運送はパンク状態だ。ドローン等を使うにしたって、収容量には限界があり非常に効率が悪い。

だったらいっそ、鉄道網を物流に本格活用してみてはどうか。昨年から既に新幹線を利用した事例などが出てきてはいるけれども、何故そこで新幹線を使うのかと思う。勿論、鉄道会社にとってはそのほうが儲かるからなんだろうけれども、一般車両でだって充分だ。陸路でトラックで運送するのと比べれば、一般車両のほうが速いくらいだろう。

話題性や(その朝採れたてのものがもう!みたいな)「付加価値」をつけ大きな利益を上げられる、高価なものにだけでなく、人々の普通の暮らしに必要な、普通のものを、貨物列車で効率よく運べばいい。食材だって、勿論採れたてのほうがいいけれども、普通の人々が日々の生活のため、日常生活圏で購入しているものは、全てが新幹線で運んでいるようなものではない。

鉄道網を活用した全国的な効率良い物流網があれば、ある地域で緊急事態が起きてしまった時にも、別の地域から今より容易に応援を寄せることができるようにもなる。地方と都市が「特急」のような特別なものではなく、日常の連続、「普通列車」で繋がっていけば、地方創生や東京一極集中の是正にも貢献することだろう。

パンデミックで削減された旅客用の運航を貨物利用で補填し、収益を確保し、特に運転手など、一度削ると取り返すのが困難な人員を確保し、きちんと保線を行う。

「特急」などのドル箱依存ではなく、その地に住む普通の人々に優しい鉄道を続け、「普通列車」で地域と地域を繋ぐ。

きっと実現されることなどないんだろうけど、鈍行乗り鉄な私は、そんな形で鉄道がこれからも安定的に続いてほしいなと思っている。


最後までありがとう、「ながら」。グッバイ、「ムーンライト」。

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