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不確実な現在こそ、SFプロトタイピングを。

知っておくべきだけど気疲れするニュースや、SNSの流れに直面することがある。

まるでディストピアに住んでいるような気分で混乱する。

一方で未来は急速に進んでいる。

拡張現実(AR)、複合現実(MR)、汎用AI、ブロックチェーン、量子コンピューティング、ブレイン・コンピュータ・インタフェース、自律走行、エクソスケルトン(外骨格)、ディープテック、バイオチップ、非中央集権型Web…

多くのバズワードが、隆盛するテクノロジーと共に生まれている。

このような状況で機能するかもしれない方法が「SFプロトタイピング」
選択肢が多く不確実な中で未来を予測し、良い点と悪い点の両方を検証し、新しい価値を創造できる期待がある。

最近、noteでもSFプロトタイピングや、未来予測するものが増えている。


未来を予測する地に足ついた方法

SFプロトタイピングとは、2010年にIntelの未来研究員(フューチャリスト)だったブライアン・デビッド・ジョンソンによって導入された、SFの物語づくりを通じて、未来のビジョンを探究する方法。

SFは、サイエンス・フィクション。
でもSFプロトタイピングは完全なフィクション(虚構)ではいけない。

実現可能性が高そうな科学技術の論文にもとづいて、世界観を構築し、人々に及ぼす影響、社会実装後のインパクトまでを予測する。



実際に社会で機能する方法として導入されている。

軍での採用
フランスのDIA(国防総省情報局)では、将来どのテクノロジーが必要になり、リスクがあるかを予測するためSF作家のチームを組んでいる。


SFプロトタイプ会社も存在
SF作家たちが世界観構築を行う「SciFutures」という企業がすでに存在する。VISA、Intel、FOXチャンネルと著名企業のプロジェクトの実績がある。


気候変動対策プロジェクト
ストックホルムレジリエンスセンターのAndrew Merrie氏による「Radical Ocean Futures」プロジェクトは、気候変動で危機にある海洋環境を、SFプロトタイピングを活用しシナリオ、アートワーク、音楽を作成。

SFプロトタイピングで、どのようなアウトプットになるのかは、このプロジェクトは参考になる。


MITなど大学の授業で導入
Sophia Brueckner氏は、2011年よりSFプロトタイピングを用いた授業をさまざまな大学で実施。

インタラクションデザイン、ウェアラブルテクノロジー、デジタルファブリケーション、ジェネレーティブシステム、サウンドデザインなどに導入。


批評的に楽観主義な未来を考える

SFプロトタイピングの実行方法はさまざま。

テーマの探究から始める場合もあれば、あらかじめ用意されたテーマを元に構築していく方法もある。

Sophia Brueckner氏の提唱する批評的な楽観主義は、未来を考える上でバランスがとれる。

未来では当然テクノロジーは必須。
でも、SF小説に通底するご都合主義な未来を作らない批評精神は、技術過信に陥らない視点を与えてくれる。

両方を反復することで、定量的な視点ではみえてこない、欲しい未来と欲しくない未来の輪郭がはっきりしてくる。


SFプロトタイピングが向いているプロジェクト
以下のようなプロジェクトが向いている。
事例であげたとおり、政治、ビジネス、アートプロジェクト、教育と汎用性が高い。

・SDGsなど、数年から数十年先を見越した長期プロジェクト
・未来を体現するコンセプトを提示しなければいけないもの
・ディープテックなどの基礎研究を応用したボトムアップ型のもの
・環境、技術、社会、経済と関連した複雑な未来予測をするもの

あくまでもSFプロトタイピングは手段なので、テーマに合わない場合は別のやり方をおすすめする。


<実行方法>
スペキュラティブデザインの考え方を取り入れることもできるし、さまざまだが、例としてあげてみる。

・チームビルディング
 デザイナー、エンジニア、ライター(SF作家だとなおよし)、プロジェクト責任者。人数や多様性はプロジェクトの内容による。


・多数の科学技術の論文を読む
 実現可能性の高い方法を模索する場合、サイエンス「フィクション」にしないために根拠が必要。


・複数のシナリオを用意
  事例であげた「Radical Ocean Futures」は4象限マトリクスで、4つに分類。


・皆で共創する
 ストーリーを作るのは、ライター任せにせず、複数人で実施できるワークショップが理想的。このとき「批評的な楽観主義」の批評の配分に注意しないと、チームでアイデアが出にくくなり、ものづくりしにくい。


・カタチにする 
 短編小説、コンセプトアート、コンセプト動画、プロダクトのプロトタイプ開発など。種類や粒度はプロジェクトに応じてチーム以外の第三者に伝わるカタチにする。


・評価  
カタチにしたものをもとに、SFプロトタイピングを通じて行った未来への提案がどう受け入れられるのか測る。


まとめ

未来を予測することは簡単ではない。そこにSFという物語性のあるものが加わると、途端に伝わりやすくなる。

ドラえもんの物凄い構造や持っている未来の道具を、科学的に解説されるより、のび太たちとの日常から理解するほうがわかりやすい。

例えば、最近の時流にあったストーリーものはこのような感じ。

SFプロトタイピングのゴールを、ビジョン提示とするのか、実際のプロダクト開発とするのかは自由。

不確実性の高い今、SFプロトタイピングという飛躍あるアイデアをつくり出す方法は楽しく創造的なはず。


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https://twitter.com/nakama_desu

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