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オタクが2023年上半期に"見た"アニメを振り返る


暦の上ではもう3月も中頃となり、2024年冬クールもいよいよ終わりに差し掛かろうという今日このごろ、ふと思った。


「あ、去年のアニメまとめを書いていない」


というわけで、前置きもそこそこに昨年上半期に「見た」アニメを月に一作挙げる形で振り返っていきます。





1月 お兄ちゃんはおしまい!


年始から世界にドロップされた萌えアニメの傑作こと『お兄ちゃんはおしまい!』、みんな見たよな!?見てない人がいるんなら、今すぐ映像配信サービスへGOだ!!!!!!


本編も個人的に毎週楽しく見ていたんですが、特に驚かされたのはやはりOP映像でしょう。

本作は今村亮氏の名前ばかりが先んじて有名になっている事からも分かるように、演出がそこまで目立たない「作画アニメ」という感じではありますが、OPはめちゃくちゃに演出が上手いです。



ぽよよん☆ろっく先生こと、渡辺明夫御大の手がけた珠玉の絵コンテはまさに徹頭徹尾「萌え」の塊!!初期MOSAIC.WAVのジャケット描いてた真の漢は、やっぱり地肩からして違ぇわ。

そもそも、作品のメインとなるキャラを魅力的に演出することが出来ているだけで、演出家としては十二分に仕事を果たしているんですよ。

しかし単に美少女を美少女らしく描くだけじゃあ満足しないのが、我らが御大なんだなぁ…!


このOP映像で自分が特にケレン味を感じた演出は、何を置いても「ワイプ」。キャラ芝居も素晴らしい映像なんだけど、このワイプづかいがセクシーでたまらない!

ワイプという演出技法自体、自分はかなり好きというのはあるんだけど、このOP映像におけるワイプは名だたるワイプの中でもかなり快楽指数が高い演出だと思う。


ワイプというとTV番組において、VTRを見ている出演者の顔を映す小窓をイメージする方も多いのではないでしょうか?

本OPで自分が触れたいのは、ワイプはワイプでも「拭う」という意味のワイプ。元の画面を拭き取るように次の画面を展開するカット繋ぎの技法です。

『おにまい』OPで言うと、サビに入ったあたりのコレ(1:05〜)が分かりやすいワイプにあたるのではないでしょうか。

ころころ…と画面を拭うように転がるオブジェクトに合わせて
シーンを変えるのは、とてもお洒落!


単なるストレート・カッティングでシーンを転換するよりも単純に動きの面白さがありますし、「どうシーンを跨ぐか」というところに作品の味が出ますから!大好きな演出ですね。


そんなワイプ演出は上で示したカットからも分かるように、一瞬のうちにシーンを転換させることが多い印象です。

コミカルな作品で用いられている場合はどんどんテンポを増していくために、シリアスな作品の場合は緊張感を出すために。
ワイプはさらっと済ませてしまうのが「粋」なんだから!と自分は思い込んでいました。


しかし『おにまい』OPを観て、そんな私の価値観はあっけなく転倒しました。まひろちゃんスク水シャワーシーン(0:39〜)から展開されるこのカット繋ぎ、まさに青天の霹靂!!!

まひろちゃんの手が画面横から次のシーンを連れてきて、完全にシーンが移り変わるまで約2〜3秒もあるんですよ!!!うっそぉ!?

まったりとしながらも、緊張感に満ちたシーン転換の一瞬。それがグーーーーーーーーーーっっと引き伸ばされ、二つの異なる空間が接続される奇跡の瞬間がたっぷりと画面に現れる!

分かるかなぁ〜伝わるかなぁ〜?このケレン味が!

演出が管理する領域でありながら、感じられるケレン味は作画から感じる快感っぽいという摩訶不思議な画面には、も~~喰らいましたね。最高!!


ちなみに自分、『おにまい』に関してはこんな記事も書いています!
入魂の記事なので、読んでいただけると嬉しいですね。



2月 妄想代理人


さっきまで萌え!萌え!と叫んでたのに、急に今敏かい!!!!いやはや、本当に節操のない作品選びですんませんね…


そして言うまでもなく面白かった!通り魔「少年バット」を巡るサスペンススリラー作品なんだけれども、ストーリー構成が決して謎を解くための一本道に成り下がっていないのが素晴らしい。

よかったのは、やはり今敏コンテの第1話・第12話。そして群を抜いて印象深い第8話「明るい家族計画」…!!


タイトルからして最高で、皮肉が効いているよな〜「明るい家族計画」はコンドーム自販機の宣伝文句であり、本編にて描かれる擬似家族を皮肉るようにも受け取ることができる。

もちろん粘膜接触という繋がりに縛られて便宜上「家族」を名乗っている市井の愚かさを、本編の擬似家族が経験するかけがえのない幸せな生活を通して批判するタイトルとも取れますけどね。

とにかく今監督自身も「全話中、もっともシナリオの出来は良い話数であろう。」と語っているだけあって視聴後の満足感はひとしおです。


ただ今監督もブログで触れていたように、話の根幹である秘密をラストにドカンと明かして終わるという本エピソードの締め方には賛否両論あるのかもしれません。

シナリオからの改変で私がもっとも残念に思ったのは「ーーーーーーーーーーーー」ということが「オチ」になってしまったことである。
これは私の主観であるが、こうしたはっきりとオチが付くような「落とし話」は話の構造が単純すぎるように思えるし、シンプルというより作品がオチにフォーカスしてしまうと「それだけ」の話になってしまいがちになる。たとえば「シックスセンス」みたいに。

「kon's tone」より
ネタバレ部分は一応伏せております


なるほど、今監督のおっしゃることは非常によく分かる。

僕の読解力不足でうまく論旨を捉えられていなかったら申し訳ないんだけど、「ラスト何行/何秒、あなたは涙する!」みたいな作品ってどうなの?という問題にも通じる意見でしょう。

そういう作品って、「ラスト何行」に全ての文章が奉仕してしまう印象があります。
そのオチを気持ちよく演出するために、それまでの全てが焚き火に使う着火剤のごとき扱いを受けてしまう……

それって、果たして健全と言えるのか?


文章やカットの連続が結末へ気持ちよく誘導する為のパーツであることは、確かでしょう。

しかし、文章やカットが「結末へのパーツでしかない」という意見が不適当であることも、それとまた同じくらい確かなんじゃないのか?


自分自身は『明るい家族計画』のことをそういった「それまでのカットをパーツにする」作品だとは微塵も思っていません。

でも正直、オチがどうでもよかったんですよね。
それまで描かれた三者三様に孤独な人間たちが信仰を深め合い、括弧付きの「家族」になっていく様があまりにも美しくて、心に刺さる。

だからオチがどうなろうと、自分の中でこのエピソードが大切なものになるというのは分かっていましたから。これで、いいのだ!!!!


ちなみにこの月は『妄想代理人』を見終えた後で『ご注文はうさぎですか?』も一気見していました。だから作品選びに節操がなさすぎるって!!!!!

ちなみに千夜ちゃんが大好きです。黒髪で、おっぱい大きくて、天然サディストなので。



3月 NEW GAME!


ひふみ先輩がイーグルジャンプを買収したおっさんに○されるエロ画像しか見たことが無かったので、アニメを観た第一印象は「ひふみ先輩…………えっち!」だった。

しかし蓋を開けてみれば、「きららアニメ」らしいふわふわとしたムードは残しながらも、お仕事モノ作品としての厳しさも併せ持ったバランスの良い作品。

そういえばつい最近、関連楽曲がサブスク解禁されましたね!
どれも素敵な曲なので、ぜひ聞いて欲しいところです。


本作は演出面でもかなり見所が盛りだくさん!
例えば1期第3話、主人公である青葉ちゃんが遅刻だ!と急いで電車に乗り込むと先輩である「ゆん」さんとバッタリ遭遇するシーン。

会話中にライザップ風の電車広告がインサートされるのですが、これが意外とその後の展開への布石になっていたりするんですね。

このインサートによって、だらしない太った身体とムキムキの鍛え上げられた身体の「before/after」の対比関係が視聴者の脳裏に刷り込まれます。


そして次カットでは遅刻の危機に爆焦りしている新人社員・青葉ちゃんと、遅刻だというのにどこか諦観した先輩社員・ゆんさんの会話が展開されていく。

シンプルな対比関係を示す広告カットの後にこの2人の会話を聞くと、まさにこの2人が対照的な存在であることが強調されていることが分かるでしょう。

未熟さを色濃く残す新米社員の青葉ちゃんと、社会に小慣れて遅刻への罪悪感が薄そうなゆん先輩。

そのどちらがどんな基準において「before」か「after」かは視聴者の判断・解釈に任せられるところでしょうが…

ともかく、2期においても力を入れて描かれているこの2人の対比関係。
それがカットとカットの繋ぎ…いわゆる「モンタージュ」によって、この時点から強調されていたことは特筆すべき!


あとはやはり、2期の第1話が素晴らしかった!!モジモジした仕草と破壊的なスタイルでオタクの心を撃ち抜くことで有名なオタクキラー・ひふみ先輩ですが、この回ばかりは演出でも魅せてくれます。

これは11分あたり、飼っているハリネズミと会話するひふみ先輩のカットですが……そもそも画面の内容が非常に興味深いですよね。


かなり主観っぽさが強いカメラワークで、私的な空気を画面に満たします。
それでいて、スマホのインカメラというギミックを用いることで成長の一歩を踏み出そうとしている先輩の表情芝居も画角から逃さない


さらにもう一歩モチーフの読解に踏み込んでみると、「インカメラ」というギミックそのものが「内向き」に使用するものですからね。
ひふみ先輩の内向きな性格と小道具そのものがダジャレ的にマッチしていて、素晴らしい演出!


この回は他にも「あれ、俺いつの間にか『エロマンガ先生』観てたっけ?」と勘違いしてしまう唇作画があったりして、激アツでしたね。
「沙霧アニメーター」こと小林恵祐ばりのフェチ作画、天晴れ!!!!!!!!!!

ひ、ひふみ先輩………

この唇のECUカット(被写体に超ズームして撮っているカット)も、単にえっちで魅力的なだけじゃない。

シーンを通してこのカットを見ると、引っ込み思案なひふみ先輩の「口を突いて出る本音」を視覚的に印象付けるカットとなっていて、演出的に巧みなんです。それはそれとしてえっちだが。なぁ???


このように『NEW GAME!』は安定した作画とポップセンスに溢れる演出が素晴らしくて、ガンガン見進めてしまいましたね!

演出が「俺は凄いことやってるぜ」と視聴者に語りかけてくるようなフィルムもあれば「大したことやってませんよ〜」というフリして凄いことをやっているフィルムもありますが…

本作は完全に後者でしたね。




ポップなデフォルメ・花吹雪・ハイライト回転といった派手で華やかな演出を使いながらも、渋いモンタージュやカット割りにも隙が少ない。
しっかりと「画面」がストーリーテリングに貢献している。

こういう品格があるアニメがやっぱり好きだな〜と改めて思わされる、素晴らしい作品でしたね。視聴していて不快感を1ミリも感じることがなく、売れるべくして売れた作品なんだなと納得させられました。


アアアアア

あとやっぱりひふみ先輩、俺はもう萌えを我慢できないっす……………………!!!!



4月 天国大魔境


「Disney+」独占ということで、実はあまり観られていないアニメファンが多いのではないだろうか?と不安になる作品。しかしよぉ、肝心のサムネがダセェなぁ……………

TVで放送してくれてるだけ良心的だとは思いますけどね!自分はTV放送されてないから『サイバーパンク エッジランナーズ』観られてないので………


まぁそんな配信環境の話は置いといて、「まさか現代にこんなアニメが堂々と来るとは!」と思わせてくれる素晴らしいアニメです。

エピソードごと(要は作画スタッフごと)にキャラの顔が違ったりだとか、昔ながらのアニメっぽい魅力が残っていて、そういうところがまず最高。

五十嵐海回、個性がありすぎる

そして派手で魅力あふれる圧倒的な作画ばかりが注目されがちなんですが、非常に演出も巧み!本当に惚れ惚れします。


このアニメの演出にグッと引き込まれたのは、第4話のBパートでした。
クレジットでは絵コンテ:大塚隆史さんになっているんですが、調べたところBパートは鈴木明日香さんの手によるコンテとのこと。

やはり魅せ場は、トキオによる告白シーンでしょう!作画も撮影も気合が入りまくった画面のクオリティでありながら、演出がそこに振り落とされない気持ちよさ。

このシーンの直前シークエンスが、キャラクターの芝居が視認しづらいほど大胆に画面を暗くしていたのは、この必殺シーンを完璧に演出するためだったのである!!!!

戸惑い・喜び・照れが入り混じる難しい感情を、凝った画角と丹念に作画された芝居によって十二分に描いた珠玉のシーン。


画面のルックだけを見ると撮影の印象が強いんですよね。だから最近の荒木哲郎演出みたいに、安直なインスタ映え志向の画面に陥りそうなんですが………

本作はそういったダサさに陥ることなく、しっかりと演出的効果を生む価値ある撮影に踏みとどまっている!それがいかに難しいことか、自分のような素人には想像もつきませんよ!カッコいいぜ……


↑荒木哲郎演出。すまん、正直最近の荒木フィルムはピンとこない……


あとはやっぱり第12話でしょうか。ストーリー的にも大きな転機が訪れる、悲しい事件が起こる非常にキツいエピソードなんですが…

非常にクレバーな演出と強い画面が散りばめられていて、満足感が半端ないんですよね。
1エピソードに詰め込まれている演出アイデアの量が、とーにかく多い。


冒頭からこの定点カメラ!目立たないながらも画面端にしっかりと影があるの、日常ににじみ寄る不気味さを掻き立てていて堪らないですね。


また、ロビンの元へキルコが向かうシーンでは、走るキルコの背景に風で舞う草と発電所で燃える炎をしっかりと入れ込む

背景の自然現象を感情と連動させて明快に感情を伝えるって、もう演出メソッドは黒澤明ですからね。

シンプルながら、絶大な威力を持つ演出!
『天国大魔境』は作画アニメだと食わず嫌いをしている人(そんな奴いるのか?)にこそ、演出も素晴らしいことを知ってほしい。


そして第12話では、全編にわたって菜園のトマトが頻繁にインサートされます。
展開が重苦しく痛々しくなっていくにつれて、次第に割れていくトマトの描写はまさに「絶望的」の一言。

核心部分のネタバレは避ける方針なので、この「割れる」という描写が如何にこのシーンと合致していて、見るも無惨な辛い演出か…というのを語れないのが惜しいですね。

とにかく未視聴の方はDisney+に加入するか、それか知り合いのアニメ好きに録画データを焼いたDVD貰うとかして、何としてでも見てください。

絶対に、観て後悔はさせませんから!!!!


しかし、同じクールに放送されていたトマトアニメという点で共通項があると言える(わけが無い)『水星の魔女』が全然楽しめなかったの、多分『天国大魔境』のせいなんだよな。


ストーリーでいくらゴリ押そうとされても、ストーリー・演出ともに優れているアニメに勝てるわけがないのである。

それに『ウテナ』があの時代にああいった高いクオリティで同性愛を描いているのに、現代でコレ?というガッカリ感も強かった。

クオリティの高いSFをいくらやったって、初回でアレだけテーマらしく掲げられていた「同性の恋愛」描写がてんでダメなんだったら、もうどうしようもないだろ!というのが僕の立場です。

知り合いに『水星』を好きなオタクが割と多いのでアレですが、アニメ作品としては決して傑作とは言えない作品だと思います。
ブームを生む力があるわけなので一定の面白さは確かにある作品だと思うのですが、本作のソレは自分に刺さるようなものではなかったんでしょう。



5月 ぱにぽにだっしゅ!


はい、みなさんこれが「真のアニメ」です。
問答無用で、全員に観ることを勧めます。


もうさ、どこから魅力を話したら良いのか…全然分からないくらい面白い。
これぞ「演出」であり、これぞ「パロディ」であり、これぞ日本の下世話でいなせな「アニメ」の真骨頂!!!

ちびっこ先生のベッキーと個性あふれる生徒たちによる自由気ままなギャグアニメである本作。ナンセンス系でもあるし、テンポで畳み掛けるタイプのギャグでもあるんですよね。

第16話のゲーム画面風、最高かも

監督を務めた大沼心の作風としてよく挙げられるものに「ゲームからの強い影響」があるのですが、本作はまさにそのイズムが強く画面に表れた作品!

こうした大沼監督のゲームのUIをアニメに組み込もうとする試みは、後に『バカとテストと召喚獣』にて結実します。

『バカテス』ではこうしたゲーム演出だけでなく、『ef』らしさも垣間見える世界レベルの演出が多用されていて、大沼心の集大成と言うこともできますね。文句なしのエンタメ大傑作!

あまりにも『ef』のカットすぎるが、『バカテス』のカットです


『ぱにぽにだっしゅ!』は言わずと知れた「キング・オブ・アニメ」こと新房昭之監督とシャフトがタッグを組んだ、「新房シャフト」の初期作品でもあります。

そしてシャフトを支える巨星2つ、大沼心と尾石達也が存分に創作の羽を広げた記念碑的作品とも言えるのではないでしょうか。


そんな大傑作『ぱにぽにだっしゅ!』からひとつエピソードを選んで紹介しろ…なんて言う方が無理って話なんですよ。全26話あるし。

『ef』で世界レベルの演出を見せつけつつも『バカテス』や『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』などでエンタメと高度な演出を両立させた大沼心。

後に『化物語』や『傷物語』で説明不要の卓越した仕事を見せつける鬼才・尾石達也。この二人が参加している時点で、フェイバリットなんて選びようがない!


ただ強いて選ぶならやはり、第二拾四話「死して屍拾う者なし」になってしまうかな……!

尾石達也の作品がアニメ演出に目覚めたきっかけでもある自分としては、彼の演出回はやはり大好物。

個人的にはこのエピソードが、尾石達也の全フィルモグラフィ中でも最高の作品に仕上がっているのではないかと思います。このエピソードをしっかりと語ることが出来るほど自分はオタクとして成長していないので、ここで詳細を語ることは出来ませんが……


尾石さんと言うと、その斬新で挑戦的な演出のクールさ…みたいな側面ばかりが取り上げられがちですが、その作風において「ユーモアセンス」が重要であることは特筆すべきでしょう。

しかもその尾石流「ユーモア」とは、洗練されたお洒落なソレではありません。もっと下世話でくだらなく、ともすれば失笑を買いかねないようなユーモア!それこそが尾石達也の真骨頂なんだと思います。


美少女の股間にフグの実写素材を置いたり、女の子が「いや~」と叫ぶシーンで耳(ear)の画像を表示したり……本来はそういうお下品さ・しょうもなさと切り離すことが出来ない演出家なんですよね、尾石監督は!!

最悪寄りの「最高」


こういうセンスはやっぱりATG映画やガロ系を経由している尾石さん独特の美意識というか、こういうのが本当にたまんないんですよねぇ……

やはり自分は尾石達也・大沼心が大好きだなぁ~~~~~~



6月 おねがい☆ティーチャー


みずほ先生、萌え~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


そんな心の叫びも飛び出しますわな!合田浩章のナイスキャラデザがこれでもかと炸裂した、直球ど真ん中を往くスーパー・恋愛・エンタテインメント!

続編である『おねがい☆ツインズ』の方が若干評判が良いっぽいのですが、個人的には断然『おねティー』派ですね。


cv.井上喜久子のえっちな教師こと風見みずほ先生に加えて、凛と張った川澄綾子ボイスが素敵な幼馴染・縁川小石ちゃん、引っ込み思案ながらもスリムな体型が綺麗な水澄楓さん(cv.大原さやか)など、よりどりみどりのヒロインたち!

そしてそんな中でも群を抜いて一番ヤバいのが、森野苺たむ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

アッアッ


小柄でロリ〜んな見た目とは裏腹に毒舌でダウナー、男子を上から小馬鹿にするような言動もしばしばな本作の最強ヒロイン。
搭載されてる属性があまりに良すぎる、しこたま応援団の新作か?

田村ゆかりの低音(蘭花・フランボワーズ等)が大ッ好きなオタクこと私にとっては、もうハマることは運命付けられていたようなもんですからね。

みずほ先生のお母さんである風見はつほさんの色気ムンムン(死語)っぷりも個人的にはガン刺さりですし、先生の妹・まほちゃんも「外見年齢は10歳」という罪深い説明文が我々の〇〇を掻き立てること請け合い。

右がはつほさん。えちちホクロがついとりますよ!!



そんな本作、青春の「停滞」から抜け出そうと必死に藻掻く本作のメインストーリーも勿論素晴らしいんですが、個人的に取り上げたいのは「その先」なんですよ。

『おねティー』は第12話で大団円を迎え、本筋のストーリーが終了するのですが、その先に1エピソードあるんですよね。
TVではオンエアされずDVDのみに収録されている…………なぁ、これだけ聞けば察しの良いお前らはもう分かるよな?


正真正銘のドえっち回、ここに爆誕!!

「主人公がみずほ先生にいたずらしようと寝床へ侵入したらそこにいたのは未亡人・はつほさんだった」という王道エロマンガ展開で幕を開けたかと思いきや……さらに出るわ出るわ、エッチで萌え萌えな展開の数々!!

アオ~ンワォワォ

見た目小学生なまほちゃんとデートをし、はつほさんにラブホへ拉致され逆○○○未遂、最終的にみずほ先生ともしっかりやるところはやっていく………

昨今の横着した挙げ句にくっついたその先は描かないスローなラブコメに唾吐くような怒涛のサービス展開は、もう「痛快」としか言いようがない!!!


とまぁそんな高揚不可避な最高の萌えエロ展開で魅せつつも、しっかりとレベルの高い作画・演出が随所に組み込まれている辺りが本作のニクいところですね。

キャラクターデザインを務めた合田さん作監ということもあってか、常にキャラのビジュアルは安定!

また、これまでとはひと味違うドタバタ展開に呼応するようにリアクションカットはデフォルメが効いたものに!
見ていて1番心地よい温度感のコミカルさを提供してくれる職人技にうっとりさせられます。


そして演出面に触れるならば、変則的なフレーム・イン・フレームの使い方が非常にハイレベルであることが挙げられるでしょう。

「フレーム・イン・フレーム」とは、一つの大きな画面内に小さな画面を形作るように画面内のモチーフを構成する手法のこと。

最近だと『ホリミヤ-piece-』4話(中村章子コンテ回)が最高だった


本作では単に画面内にもう一つの画面を作るのではなく、アイリスアウトのごとく黒を大胆にあしらった画面構成を行うんですね。

ちなみにアイリスアウトというのは、いわゆる「もう○○なんて、こりごりだ~~!(ヒューン)」のこと。これでちゃんと脳内に想像できるの、すごいよな。


本作ではキャラが1人考え事をするコミカルなシーンなどで、この変則フレームが頻繁に使われます。

キャラを囲むごく一部の画面以外を真っ黒にすることで、キャラの言葉が狭い範囲(フレームの中)にしか聞こえていないモノローグや呟きであるという事実を示す……非常にさえた演出です。


そんな変則フレームの完成形が、このおばかエロ回にて示されているんですよ!

右端に注目。既にフレームがありますね

それがこちら!主人公とまほちゃんがデートしている一場面です。そこにモテないクラスメイトが通りかかり…………

こうなるんですね。なんと主人公達を囲むフレームとクラスメイトを囲むフレームが衝突することによって、「秘密の会話が他人の耳に入ってしまった」ことを視覚的に表現しているんです。

先ほど書いたように本作のフレーム・イン・フレームは「キャラの声が届く範囲」を示しています。

それが他人と重なることで「会話が聞かれる」シチュエーションとなるのは視覚的・直感的にも明快!


そして画面自体も非常にクールかつコミカルな印象になるんだから凄いぜ!
クスッと笑って流されてしまうシーンかもしれませんが、高度な演出的配慮によって成立しているテクニカルなギャグシーンと言えます。


他にもキャラクターが他ならぬ『おねがい☆ティーチャー』の台本を作中で読んでいたり、苺ちゃんが「おねティー」と書かれた黒板を消してカメラへ目配せしたり…………

こんなクスッと笑えるメタ的なギャグまでも取りそろえている!!お前らの視聴者サービス精神には、一分の隙も無いんか!?!?


本当に心地の良い萌えとエロ、アニメーションが理想の形で続いていく、エンターテインメントの面白さに溢れた24分間。

王道のラブストーリー展開の後にこれを見せられた日にゃ、もう僕たちができることは手放しの賞賛しかないんですよ。


2024年3月現在、本作はdアニメストアにラインナップされていないので見ようと思っても中々手を出しにくいところでしょうが……

ラブコメや年上ヒロイン、ダウナーな田村ゆかりが好きなオタクにとっては間違いない作品となっています。激おすすめ!!!



おわりに


上半期に見たアニメとがっぷり四つ向き合い、感想をしたためること約1万字……!!
画像やサイトのリンクを貼りすぎて、スマホだと編集ページで文字を打つのにラグが発生するレベルになっています。バカかっての。

何でそんなに画像を貼るかというと、やっぱり「アニメの画面」およびその構成に貢献している「演出」に興味を持って欲しいからですね。
その気持ちがあふれすぎてか、『おねティー』のフレーム演出はちょっとコアで伝わりにくいかも?と反省しています。


今回は6ヶ月分紹介した作品、その全てに演出的なアプローチでの感想を書くことができて達成感がありました。

やっぱり自分は演出ファンなので、演出に注目するとアニメをこう観ることも出来るんじゃないのかな?という提案を、少しでも読んでくれた方に出来たらいいな〜と思っています。


映像というのは須く、隅々までスタッフの意図が張り巡らされているものです。

特にアニメは人物から背景まで、その全てを人間が1から想像する至高の芸術。画面には純粋培養のミザンセーヌが満ち満ちている!

だからこそ、スタッフさんが凝らした沢山の工夫を楽しみながら拾ってあげられる視聴者でありたいと常に思いますね。

いずれ2023下半期のアニメ感想も書くと思いますので、その時もまた読んでくださるとありがたいです!





おわりに………のおわりに

とても長い記事を最後まで読んでくださり、感謝感謝!!!!!!過去のアニメ関連記事をマガジンにまとめてありますので、読んでくださると小躍りして喜びます!!!!!

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