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大傑作アニメ『負けヒロインが多すぎる!』の演出をガンガン語るぞ!!!振り落とされるなよ!!


『負けヒロインが多すぎる!』が昨夜に最終回を迎えましたね~
本当に本当に、最後まで面白かった!!!!

作画・演出・色彩・撮影から、シナリオ・演技・キャラの魅力に至るまで、一分の隙も無い最高のアニメでありつづけた本作。

今回はそんな大傑作について、個人的な感想と演出について考えたことなどをつらつら書いていきたいと思います!!





『負けヒロイン』について話す前に、まず自分の中で「ラブコメアニメ」というのがどうあるべきだと考えているかを語っていきたい。

決してラブコメ有識者でもない自分だけれども、「詳しくなければ意見を言っちゃいけない」なんて法律はないので開き直って堂々と書いていきます。



ラブコメアニメはどこまでいってもポップで、ラフでなくてはならない。


なぜならラブコメアニメを観る視聴者は、そこに少なからず恋愛というファンタジーを求めているからだ……というのが僕の持論です。

深夜に疲れて帰ってきた社会人、1週間頑張った学生、特に今日なにもしなかったニートまがいの大学生……その誰もが一旦頭をスッキリさせて、心から「可愛さ」「萌え」に耽溺できることが重要。

こういうのが、一番「キク」んだよなぁ……


ちょっとした生活の悩みを吹き飛ばすような底抜けのポップさは、時にくだらなさとも背中合わせであろう。

しかし深夜アニメというのは絶対に「くだらなく」なることを恐れてはいけない!


愚にもつかないへにょっへにょのシリアス展開よりも、一本「くだらなさ」という芯が通ったアニメの方が美しいんですよ。

これは映画や音楽でもそうなのかもしれないが、深夜アニメでは特にそうだと言い切れる。

事実、『ロシデレ』の生徒会選挙がらみの話って殆ど面白みがないでしょ?

コッテコテのラブコメをやっていた1話や、おバカえっち催眠エピソードがあった9話しか面白くなかった。

アーリャさん、君は普通に日本語で喋らないと成長できないと思う。
↑こんな真面目なことを俺に考えさせないで欲しいッス


「ラブコメ」とは「ラブコメディ」なのだから、恋愛をダシにしてとにかく萌えられなくてはいけないんですよ。

誰もが頭を空っぽに出来るラフな面白さ、それこそが傑作の第一条件!!


そしてこれまでの話とも重なる部分がありますが、ラブコメとはラフであると同時に、魅力的な芯がブレずに通っていなければならないでしょう。

ある意味で「テーマ性」とも言い換えられるかもしれませんよね。

ポップな展開と一掬いのシリアスを積み重ねた先に物語をどういった結末へ導くのか?という思想に強度があればあるほど、観る側は納得できる。


その「導く先」にあるものが、人生に強く影響を与えるような立派な教訓じゃなくたって良いんですよ。

「人生はそう悪くない」みたいにご立派な講釈を垂れられずとも、創作物を観た後で「人生も悪くないな」と感じることはある。


感動させるような展開を用意しないと感動してくれない、だなんて視聴者をあんまりナメない方が良い。

これと同じ理由で僕はオタクへ「現実を生きろ」と呼びかける作品が嫌いです。

明日から現実を生きるために”今”創作に触れてるんだろうが!!!!そんな芸のないメッセージしか伝えられないんなら自己啓発本でも書いてろ!!!!!と怒りたくなるので。

閑話休題。


「俺はとにかく可愛い美少女キャラとのイチャイチャが観たいッス!!!!!!」という思想が作品の根幹ならば、それを照れることなく突き通して欲しいよ、俺は!

これを12話やってくれや……なぁアーリャ………


「ラブコメなんだから恋愛にはケリをつけなくては」
と思うにせよ、永遠に続く桃源郷のような世界を描くにせよ、半端に描くのではダメなのだ。

向かう方向が決まったら、それを魅力的に見せられるように真っ直ぐ突き進む……それこそがラブコメアニメに求められる「タフさ」だと思う。



なぜ『負けヒロイン』をこんなに評価しているのか?


自分のラブコメ観みたいなものを語ったところで、ここからは『負けヒロイン』に関する話をどんどんしていきます。

『負けヒロイン』を自分がここまで高く評価する理由、それは本作が徹底してポップな視聴感覚を貫きながら、同時にストイック/ハードなまでにテーマ性を追求し続けたからだ。


ポップでありながら強固なテーマ性を持つ、いわば「ラフ」かつ「タフ」

この相反して見える2スタイルの両立を高い完成度で維持するためには、優れたシナリオだけでなく、それを上手く映像に落とし込む圧倒的な演出力が必要なはずです。


当然そう簡単に実現できるものではないし、実際これをやろうとして失敗したアニメなど枚挙にいとまが無いだろう。

僕がの乏しい視聴経験の中でも、ギャグパートとシリアスパートの繋ぎが歪な作品を上げだしたら両手ではとても足りないと感じる。

そんな至難の業を本作は「まるで特別なことはしていませんよ」とばかりにやりきっている。

そこに僕は心から痛快さを感じるんですよ!


僕が思うに、アニメにおいて演出が目立つことは最高。

だが同時に、優れた演出がその傑出度ゆえにフィルムと完全に同化して目立たない……これも本当に最高だと感じている!

『負けヒロイン』はどちらかというと後者という気がしていて。

本当に傑出した演出力を持ちながらも、同時に決して目立ちすぎることなく作品の一部として職人的な役割を果たしているように思います。




ここで一旦ストーリー面に関して軽く整理すると、本作はいわゆる「ラブコメ」へのカウンター的な作品だと語られがちな印象があります。

まずはオーソドックスな王道ラブコメにおける「負けヒロイン」という役回りを明確に本編内で示す。

そしてその後、本当にリアリティのある(いま顧みられるべき)「予後の人生」というのは寧ろ「負けヒロイン」側のソレだろうと提示していく。

だからこそ温水くんは「恋愛」というラブコメにおいては絶対的な支配力を持つ価値観の中でヒロイン達と向き合うのではなく、「友達」としてひとりひとりに寄り添っていく……みたいな感じなのかな?

物語の読解は不得手とするところなので、ここの意見はガンガン皆さんの意見を聞きたいところですね。雑語りも良いとこなんで。


まぁ僕はひょろひょろ&軟派な萌えオタクなので、普通に八奈見さんと温水くんに付き合って欲しい気持ちもムクムク湧いてくるのですけれど!!


でもそれは「原作で死別したキャラのハッピーエンドif 二次創作」を求める欲求みたいなモンですよね。

実際に原作サイドからお出しされると、それはそれで違うんだろうな~なんて思います。そこはファンアートの領域かな~と。


作品がそういうカウンター的なコンセプトを打ち出しているからこそ、逆にファンダムでは順張りのラブコメが求められるということ。

それは作品自体のコンセプト作りが強固で、芯を通すことに成功しているという事実を裏付ける何よりの証拠だなぁなんて思ったり。



『負けヒロイン』の演出は「嘘」が上手い!


ストーリー面に関しては、こんくらいで置いといて。僕はいつもの如く演出の凄さについて語っていきたいと思います。

とりあえず『負けヒロイン』の画面における素晴らしい点と言えば、画面の隅々まで行き届いた繊細な色使いや光のコントロールでしょう!

光源への意識や全体的な色彩の感じは実写のようなリアルさを志向しており、これは近年のTVアニメ全体における流行と言えます。

特にキャラクターの影部分に入っている緑色の反射光(※1)なんか、近年のTVアニメにおいてめ~~ちゃくちゃに流行している手法らしいです。

※1 反射光とは、地面・光が当たっている面から跳ね返ってくる光のこと。これによって影の一部にモチーフ自体の色と反射光の色が混ざった色味の光が入ったりする。


ちなみにこの「反射光」について先輩オタクから教えていただいたんですが…

「キャラクターの肌色」と「空・海などの水色」が混ざり合うことで、影部に緑色の反射光が出来るというメカニズムみたいですね。


しかしここまでしっかりと照明を意識してリアル調に寄せていくと、ともすればアニメーション自体が実写の猿まねのようになる恐れもあるのではないか?と思います。

照明だけでなく、これは背景などの過剰な写実性の追求についても指摘できる話でしょう。

「そこまでリアルにしてさ、君ぃ……わざわざアニメーションにする必要ある?」という話です。


昨今の実写素材(背景)を採用したOP・ED映像の氾濫を見れば分かるように、最早アニメーション本来の魅力に乏しいフィルムも少なくありません。

(下の記事で語っているように、決して自分も実写素材を嫌悪しているわけではないんです。要は包丁と一緒で使い方の問題。)


アニメーションをペラペラの”実写もどき”に格下げしてはいけない。

実写とはかけ離れた線/画面の躍動に宿る非現実的な快楽と興奮こそが、「アニメーション」の本懐ですから!


その点、『負けヒロイン』本編は素晴らしかったと言えるでしょう。

リアル寄りな質感の光や色彩に包まれながらも、アニメーションらしい「嘘」から生まれる快感を取りこぼすことは殆ど無い。

リアルな質感から生まれる感傷や切なさと、思い切りのよい嘘から生まれる笑いや萌えをバランスよく両取りするスタイルは、まさに恐ろしいほどの完成度です。


その卓越した演出スタイル、最終12話を例に覗き見てみましょう。

12話では全体を通して、キャラクターに近づくクローズアップの画角が頻繁に用いられていました。

これによってキャラクターのコミカルな芝居が分かりやすく画面上で表現され、本エピソードの突き抜けるようなポップさが強調されていましたね。

しかも単純にクローズアップするに留まりません。

POV(主観)ショット・スウィッシュパンによる切り返し・スマホ画面の反射・効果線など……とにかく演出の引き出しにある全てを使い切る!!といった圧巻の手数の多さ。

その癖してカット割がものすごく早いだとか、特異なアングルを使ってる!みたいな印象も強くは感じないんですよね。

だからなんとなく見ていると「演出が凝ってて凄い」という感情すら浮かぶ間もなく、作品の楽しさに放り込まれてしまう。手練れの暗殺者みたいな演出だなぁと冗談半分で思います。


そしてもう一つ最終話で印象的なのが、空間表現の多彩さです!

ホラー映画ばりの存在感を持つ志喜屋さんが登場するシーンでは、もう思いっきり嘘をついてるんですよね。こんな激ヤバな光が外から差してきたら豊橋も滅亡寸前ですよ。

けど採用するんです。だって掛け値無しに面白いから!

『ガールズ&パンツァー』でめちゃ重い砲弾を女子高生が片手でヒョイヒョイ投げるシーンに爆笑した覚えがあるんですが、志喜屋さん絡みのシーンは大概そういう魅力がありますね。


要は素晴らしいアニメは「嘘をつく」のが上手いってことです。

八奈見さんは温水くんに「嘘を覚えたのかな?」みたいなこと言ってましたけど、本作の演出家は皆揃って嘘の達人ですから今更!!


なーんて思ったら、観覧車のシーンでは「嘘なんて吐くわけないじゃないですか~」とばかりに端正な画面へと。

スタイルの多彩さをひけらかすようなイヤミ感のないまま、この使い分けですよ!痺れますね……

このレベルで「リアル」と「デフォルメ」の変わり身をしたら違和感を覚えそうな気もするんですが、全くないのが凄い。


水と油が完全に調和して、ひとつの液体となっているかのよう。

照明表現やここぞという見せ場では努めてリアルに、それでいてアニメーションらしい「嘘」の快感は握り込んで離さない。

面白いアニメーションってのは往々にして、なんでこんな「魔法」が起きているのか分からない物です。


強いて微妙だった点をあげるなら、第6話の異常にリアルなこのカットだけが個人的に受け付けられなかったかもしれません。

八奈見さんのちょっとセクシーな魅力を切り取らんと試みたカットなんでしょうけど、ここまで悪目立ちすると不気味さが勝つかな……

このカットだけ急激にキャラデザのリアリティーラインが上がってしまって、少し厳しいものがあります。

結果的に「君たちの見てるコレは所詮イラストなんだよ?」とネタばらしをされたような気分になってしまいました。素直に怖いよ!


この超リアルなタッチは、最近だと『Vivy』『着せ恋』などで用いられていた印象が強いですね。両方とも話題作だったので、覚えている方もいるかもしれません。

特に『着せ恋』12話は高橋沙妃さんの仕事ぶりもあり、
素晴らしい仕上がりになっていますね。


前者はアンドロイドならではの機械的な質感を、後者は普段から会っているギャルがモデルの仕事では全然印象が異なるという変身感を、それぞれ表現していました。

2作とも素晴らしく冴えた利用法ですよね、キチンと演出の筋が通っていて、視聴者に違和感を覚えさせる暇を与えない。

これらと比べると『負けヒロイン』は若干劣るかも……とは思います。


あと先ほどの「アニメーション本来の魅力」という話題で実写素材の話が出たので、『負けヒロイン』ED1に触れざるを得ないんですが…

個人的には正直ビミョーかなという印象を受けました。

アニメ作品で実写素材使う時って、もっとパキッと綺麗さが出る感じで使って欲しいんですよね。それかグググッとカオスにするか。

全体的に照明やセルアニメの質感がノスタルジーを感じさせる方向に振っていて、個人的に刺さる感じではないなぁと。

今期の実写素材を用いた映像という分野だと『小市民シリーズ』EDの方に軍配が上がります。


「フィルム感を利用して郷愁を引き出す演出」という視点で比較してみても、今期には『義妹生活』という引くほど演出が上手いアニメがあったので太刀打ちできない感じ。



EDの話もそこそこしましたね。ということはやはり、OPも外すことは出来ません!

以前に『お兄ちゃんはおしまい!』OPの魅力について書きましたが、『負けヒロイン』OPはそれを越えて余りある大傑作だと言い切れます。


端的に魅力を言語化するならば、時代を牽引してきた2人の演出家のスタイルを足して2で割らない豪腕戦法によって規格外のポップさを獲得している……とでも言いましょうか。


イントロの「負け!」コールの部分からして最高なんですよ!

輪郭線無しの超絶ポップなアニメーション→プリクラ等の「ラクガキ写真」風ルックで踊り回る効果線・テロップへと展開していく冒頭のカット群は、もう掛け値無しに素晴らしい!!

輪郭線無し&目を引く色使いで美少女をとびっきり可愛く演出しつつテロップと一体化させるこの手法は、『ヤマノススメ セカンドシーズン』OPなどに代表される石浜真史ワークスを彷彿とさせます。


そしてこの「ラクガキ写真」風のテロップ演出ですよ。これは『けいおん!』『響け!ユーフォニアム』などのOPで用いられる、代表的な石原立也イズム!

こういうプリクラ的な文字が跳ね回るの、凄くキュートな印象ですよね。

「女の子らしさ」みたいなオーソドックスな印象を経由せずともダイレクトに可愛さが伝わってきて嬉しい!


石原立也監督は他にも『きまぐれオレンジ☆ロード』OPからダイレクトに影響を受けた『中二恋』OPや…

説明不要のタイトル連打が最高に気持ちいい『日常』OPなど、超弩級の傑作を生み出し続けています!


石浜真史と石原立也……ポップな2大OP職人のメソッドを色濃く受け継いだ映像は、掛け値無しに最高のクオリティ!!

平面的な文字や色彩の演出を使いながらも、奥行き感が強調されるナメの構図を挟んでいくことで立体感もバッチリ。


そして最高のイントロが終わった後は、どんどんキャラクターがスタッフクレジットに干渉していくことでお祭り感を高めていきます。

この干渉の仕方も、引き出しがとても多くて素晴らしすぎるんですよね。
全てを語ることなんて僕レベルでは到底不可能なので一部に留めますが、スタッフクレジットへの干渉方法が本当に多彩でウットリしてしまう!

クレジットの「可動/不動」の差や、「意図的な干渉/偶発的な干渉」の差、あるいは「縦/横/回転」など動きのバリエーションも様々。

キャラクターに避けさせたり、ジャイアントスイング気味のワイプで文字を消したり、ジャンプ&ヘディングで浮かばせたり!とにかく愉快なアイデアが満載!!ここは遊園地かと見まごうポップさが素敵すぎる!


先ほど実写素材のくだりで「アニメーションの本懐」みたいな話もしましたが、僕はこのOPが現代における「楽しいアニメーション」のお手本だとすら思います。

輪郭無しのビチっと決まった色使い、アニメーションの美少女がひとつ隣り合う次元の「クレジット」に触れ回る快感。やっぱりこれこそが俺たちの見たいアニメーションだろうと!

これだけ素晴らしいOPがあると、本編も一気に魅力が引き上がるよな~と思うのです。信じられないほどポップでありながら、同時に驚くほど高度なテクニックが散りばめられた、本当に最高の89秒間!


おわりに


「俺の理想のラブコメアニメ」から「『負けヒロイン』のOP演出」まで、取り留めも無くひたすら語り続けてきました。しかし語れば語るほどに、本作の完璧な面白さがどんどん実感できますね。


ラブコメらしい美学に則った強いコンセプトを持ちながら、同時にポップな視聴にも耐えうる強いエンタメ性も兼ね備える。

トレンドと言えるリアリティーある画面をしっかりと追い求めながらも、同時にアニメならではの豪快な「嘘」も巧みに見せてくる。

『負けヒロインが多すぎる!』はまさに、一分の隙もないとすら言える傑作アニメでした。脚本も作画も演出も、それぞれがそれぞれを蔑ろにすることなく、全てが完璧に噛み合っていた!


素直に今年のTVアニメのベストだろうな~~と思います。こちらも大傑作である『物語シリーズ OMS』がどう終わるかというのによりますが!

「今年」とかじゃなく、余裕で時の試練に打ち勝って20年後まで存在感を放つことになるであろう傑作の匂いがプンプンしますからね。

まぁというわけで、この文章を読んでちょっとでも「また見返してみようかな」と思ってくれるオタクがいたら、それが一番嬉しい!

僕もまた1話から、見返していきたいと思います。というわけで……

『負けヒロインが多すぎる!』サイコ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





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