見出し画像

オモコロとは、シュールレアリズムだ!!!(え、本当にそうなのかな?(どうなの?)(断定するとネット記事っぽいからそうしちゃった))


はじめに


オモコロとは。
くだらね〜けど最高に面白い記事や動画・ラジオなどを、我々インターネットに漂う吸魂鬼(ディメンター)に提供してくれる素敵なwebメディアのこと。


私は匿名ラジオを最初に知り、そこから記事や動画になだれ込んだクチなのでラジオへの思い入れが強めです。
けど今はオモコロというメディアのことを、分け隔てなく愛している。毎日の生きる糧。

この記事に辿り着いている方の多くはオモコロについて多少なりとも知っている方が多いでしょうから、説明はこれだけにとどめておきます。



今週更新の匿名ラジオ、とても面白かった!
その冒頭で恐山さんは面白おかしく、ユーモアとしてこう言っていました。

「ラジオってちょっと"具体"すぎてダサいなと思い始めて。ちょっとみんな…具体的な話しすぎ。まだ来てないわ、ルネサンスが。"この間あった話"…みたいな(のばっかり)」
カッコ内は筆者による
「匿名ラジオだってその代わりに"ない話"してるけど、これもまだシュールレアリズムでしかない」


シュールレアリズム
こんな事言うと怒られそうだけど、インターネットの人が1番好きな美術の流派だと勝手に思っている。お前らこういう小難しそうでありながら、しっかりポピュラーでフックのある様式好きだろ?

サルバドール・ダリ『記憶の固執』(1931年)

ぐにゃぐにゃにへたっている時計、あからさまに理解不能なオブジェクト…

シュールレアリズム絵画に登場する奇怪なモチーフのオンパレードはいかにも芸術然としていながらも、私のように芸術鑑賞センスのない人間にも分かりやすい「飛び道具」感があっていい。


なんてシュールレアリズムに少し思いを馳せていた時、私はふとある事に気づいた。

「オモコロに数あるシュールな記事の中に、シュールレアリズムの要素を持つものがあるんじゃないか?」


ということでシュールレアリズムをざ〜っくり!!!!本当にざっくりと説明してから、オモコロの特定の記事を例に挙げて「似てない?」と読者の皆さんに聞いていきたいと思います。

部屋で一人で読んでいるとしても、もし「似てる」と思ってくれたらその場で高らかに「似てる似てる!!!」と叫んでくれるとうれしいな。


シュールレアリズムとは

重ねて書きますが、この文章はあくまでネット上にいる誰かも分からないヤツによる記事。
オモコロとの関連性を分かりやすくするため、敢えてかいつまんで説明するところもありますので、決して100%鵜呑みにせず、慎重に読んでくださいね。


シュールレアリズムは、詩人のアンドレ・プルトンの著作に端を発する芸術運動。

シュルレアリスムこそヘーゲルの弁証法を理論的根拠とし、すべての二律背反を解消した超越的な観念が描写可能な重要表現である。

……とまぁこのように提唱された思想です。


積ん読王選手権の原宿さんみたいに頭抱えちゃったみなさん!!!!
要は「今までの常識にとらわれない新しい芸術を、作っちゃいましょ〜〜〜〜〜よ!!!!!!!!!」ということです。


ともかくこのシュールレアリズムという芸術運動は、さまざまな既成の美的価値観に反発する意思に突き動かされた芸術家達によって先導されたものでした。

その反発意思によってか、シュールレアリズムの特徴として「表現内容よりも方法・手段の発案に多くを負っていたこと」が挙げられます。


「新しい表現をしてやろう!」と意気込みまくった芸術家たちによって形作られたスタイルなので、作品に意味を込めるというよりむしろ表現方法そのものに寄りかかっていた芸術とも言えるでしょう。



そんなシュールレアリズムの発案者であるアンドレ・プルトン。

「四次元怪獣」ってのが沁みるぜ

『ウルトラマン』の怪獣名の元ネタになっていたりするので、界隈の人の中では有名人なのですが、これがまた変人。

やはり、と言うべきか偉大な芸術家というものは思想的に偏りまくっていてこんな名言までもを残している。

驚きは常に美しい、驚くべきものはすべて美しい、驚くべきもの以外に価値はない
アンドレ・プルトン


この人ぜったいに富士急ハイランドとか好きだろうな。現世に転生した暁には絶叫マシーン「ええじゃないか」に乗って、恐山さん言うところの「難しい話聞いた気分」(下動画参照)になって欲しいところ。


しかしこの言葉はシュールレアリズムを非常にわかりやすく表している。
要は彼らは写実的に描くだけの作品に飽き飽きし、見たこともないサプライズ的な作品を求めた「驚きフェチ」だったんですね。

そんな驚きフェチの変態芸術家たちは、「どんな方法を使えば未知の芸術が生み出せるか?」と日夜試行錯誤。


その結果として生まれたのが、初期のシュールレアリズムにおいて頻繁に使われた「オートマティズム」という発想方法なのです。

これはTwitterで流行ってた「認知シャッフル睡眠法」にかなり近いテクニック。オタク向けに言うと、ネオンの念能力みたいな感じ。

要はいっさいの先入観を離れ、無意識下における純粋な思考を書きとるというものです。

「眠りながらの口述や、常軌を逸した高速で文章を書く実験」
「半ば眠って意識朦朧とした状態や、内容は二の次で時間内に原稿用紙を単語で埋めるという過酷な状態」
wikipediaより


このような、常識や意識が介在しない状態で言葉を生み出していくことでシュールレアリストたちは思いもよらない言葉の組み合わせを発見していくのが目的。

普通はつながらないような言葉を繋ぎ合わせ、日常的な思考の中には存在しない組み合わせを創出することが面白い


この「ありえない言葉の組み合わせを探したい」という考えによって考案されたオートマティズムはさながら大喜利のよう。


意識的に何かを表現するのではなく、むしろ無意識から何かを生み出す。シュールレアリズムはそんな芸術運動とも言えます。

まさに先述した、「表現の意味よりも方法に寄りかかる」というシュールレアリストたちの特徴にも合致しますね。



シュールレアリズムを感じさせるオモコロ記事たち


できる限り簡潔にシュールレアリズムの上っ面をなぞったところで、本題であるオモコロとの共通点を探っていきたい。

まずみなさんがパッと思いついたのはこの記事なんじゃないでしょうか。
かなりバズった記事ですし、オモコロの人たち特有の「コいてる」奴らへの偏見が感じられる良い記事です。
現代アート、というバカにされがちなテーマに正面から挑んでいて凄い。

この記事でインターネット人(んちゅ)たちの審査をしてくださった三杉レンジさんが最近ヤスミノさんの記事で再登場した事に、伏線回収的なアツさを感じた人も多いはず。

…ですが、この記事はあくまで「現代アート」風のものを作ろう!というコンセプトが根底にあるのみ。それがシュールレアリズム的かというと、少し異なるように感じます。


単にアートと関連があるだけでは、シュールレアリズム的とは言えない。

RHYMESTER宇多丸が漫画や映画など、ヒップホップとは関係のない作品からヒップホップ的な価値観=B-BOYイズムを見出したように、私もまた「アートっぽい」という表層に囚われず真にシュールレアリズム的なオモコロ記事を探していくべき。


そう考えて私はオモコロ記事、またはチャンネルの動画やラジオなどをじっくりと読み直していきました。
ブラウザのリーディングリストは7割方オモコロなのでお気に入りの記事を読み直すのは楽。

しかし今回はただ読み直してゲラゲラ笑うのではなく、シュールレアリズムの思想が宿った記事を探すわけですから意外に難航。


また、今日の日本で使われている「シュール」と「シュールレアリズム」はかなり意味が異なります。
自分の中でシュールレアリズムの勉強をしっかりしたつもりでいても、慣れ親しんだ「シュール」ばかりに目がついてしまうのが現実。

2時間ほど頭を捻りながらオモコロ記事をdigり、ついに見つけたのがこちらの記事です。


いや、ホントにこれ??????????????


そう叫ぶ読者の声が聞こえてくるようです。

なんてったって、付いてるタグが「# クズ」「# バカ」。タイトルからしてあからさまに芸術とは無縁なクソ下ネタ記事の登場に、戸惑われる方も多いかと思います。

しかしこのシャッフルワード記事(シリーズ)、数あるオモコロ記事の中でも有数のシュールレアリスティックさを持つ作品。


「ある言葉とある言葉を組み合わせて全く新しいAVを作ってみたいって、そう思ってるわけ。」
オモコロ編集長・原宿

↑名言みたいなフォーマットで紹介しても、割とくだらないことはバレてしまうな…


撮影に行く暇がない時や、記事が足りない時に投稿されるこの「全く新しい〇〇をシャッフルワードで作る」様式の記事。

オモコロをご存知でない方のために確認しておくと、この「シャッフル」の方法はアナログで…

当該記事より引用


このように各々が用意した出鱈目なワードの山から引いていくわけです。
出鱈目なワードを用いて、普段は考えもしない言葉の組み合わせを探す……?この手法は……?

そう、オートマティズムそのものズバリ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


オートマティズムの奇怪な組み合わせを象徴する言葉に「解剖台の上のミシンと蝙蝠傘」というものがありますが、原宿さんがシャッフルワード記事で生み出した「保菌者号がイク!」「出会って4秒でガンジー殺し」というパンチラインも、実質これと並ぶ名言と言える。


ちなみにこちらの記事では、なんとヤスミノさんたちがオートマティズム的な筆記法に挑戦してアイデア出しをしている様子が描かれています。

シャッフルワード記事のようなお下劣な作品だけでなく、様々な記事のアイデアがこのようなシュールレアリズム的な発想から生まれたのではないか。そう感じさせてくれる記事です。


また、オモコロのYoutubeチャンネルにおいて鬼バズりしている「AIシリーズ」もかなりオートマティズムに近いものがありますね。



投稿されてから約1年で、120万回近く再生されているこの動画。
内容はオモコロチャンネルの概要やメンバーをAIに学習させ、台本を書かせてその通りに進行していく…というもの。

まさに、人間の意識的な思考から外れた表現手法のみを追い求めるシュールレアリズム的な価値観によって成立している作品。
表現の内容が100%空っぽで筋書きに意味が全くないところも、シュールレアリズムの様式を踏襲していると言えます。

AI動画内で為された空っぽな表現の例
意味を持たないオートマティズム絵画の例
イヴ・タンギー『無限の分裂』(1942年)


このようにパッと見た印象は全く異なる二例ですが、『オナァラ・キリング』も『無限の分裂』も根源にある「誰も見たことのない組み合わせを生み出そう」という欲望は全く同じ。


AIによっていろんな表現を模索していたのは恐山さんですが、先述したシャッフルワードを行なっていたのは原宿さんや永田さん。

それを考えると、オモコロ編集部の面々はかなりシュールレアリズム的にお笑いを生み出している節があるのでは?なんて邪推してみたり。

とにかく、部分的にであれ、オモコロとシュールレアリズムの間には深い影響関係がある
あるのかも。あるの…か?なぁ?


おわりに


先述した通り、オートマティズムにはそもそも大喜利的な要素が色濃い。
それを踏まえると決してオモコロだけではなく、現代において、少なくないお笑い芸人・ネタがシュールレアリスティックなものであると論じることもできるのでは?と思ったり。

反省点としては、オモコロの真髄たる「品性下劣さ」が詰まっている昔の記事はなかなか掘り出しにくく、今回の調査ではごく近年の記事・動画に絞っての例となったことが挙げられます。

下ネタを連発する古典オモコロ記事はある意味でシュールと受け取られることも多いだろうと感じるので、そこら辺もガンガン調べてみたかった…!


我々はよく、オモコロ記事を読んで「シュールすぎるわ!」と笑い転げる。

でも、「シュール」とは何なのか?
どんなところにそれを感じたのか?

そんなことを追求することは、大抵の人はしないもの。
ただでさえ「あたまゆるゆるインターネット」だし。

でも今回少し頭を捻って考えてみると、思ったよりもさまざまなことについて見識を深めることができた。
くだらねぇ〜wと感じていたシャッフルワード記事も、今やシュールレアリズムの芸術様式に則った格調高い創作にすら思える。

しかしこの記事を読んでくれたみなさんとは、随分と気が合うんじゃないかって予感がしますね。どうです?
あ、やっぱりそう思いますよね!じゃあ……………

お茶しましょうね 奇数日に
包丁のWikipedia


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?