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強いて言うなら笑わない人

好きなタイプは?という質問に長年頭を悩ませてきた。

悩むのと同時に、多くの人は恋愛における好みの「型」を、すべからく持ち合わせているのかと思ってゲンナリさせられる。僕は決まったタイプはないので「優しい人かな」と答えると、極めてつまらなそうな顔をされる。

今後10年強はこの手の質問が身に降りかかるであろうことを予想して、絶妙な回答を用意しておこうと思い立った結果、「笑わない人が好き」というフレーズにたどり着いた。

僕なりに頭を捻ったので、その過程を綴っていこうと思う。


よく、「お前はそんなんだからダメなんだよ」等といじられて場が沸く時がある。

学校や職場で何人かはいるであろう、小さなコミュニティでイジられては笑われるお調子者を、あなたも今までの人生で幾度となく知り合っているだろう。

そのお調子者、(またはピエロともいう)が僕だ。

イジられるのも悪くはない。仲が良い人たちに囲まれて話題の中心となるひと時を過ごせるのだから、おいしい役であると今までずっと思ってきた。小学生から大学生に至るまでイジられていると、そのポジションからしか見られない人間の性質に嫌でも気がつく。

愛のあるイジりを上手にできる人、単に人を傷つけないと笑いを生めない人、ギャラリーとしてその場を楽しむ人、それなりのリスペクトを持って純粋に僕を面白がってくれる人、他人には見せない攻撃的な言動を向ける人、様々である。

けれど、時々、本当にごくたまに笑う皆に混じって、クスリとも笑わない人がいる。僕はそんな人に遭遇するとドキッとする。愛想笑いの一つでもした方が自然にやり過ごせるのに、わざわざ不自然さを背負ってまで僕を笑わない意志に意味を探ってしまう。それくらい僕のことを大事に思ってくれているとしたらキュンとしてしまうし、単にその場のノリに流されない強さを持っているパターンもかっこいいなあと感心する。

いずれにしろ、僕はそんな人が現れたらかなり意識してしまうだろう。

___いつものように、僕は笑いの対象になる。皆が爆笑の渦に飲み込まれる中で僕は中心に立って踏ん張るだろう。周りを見回して、どの程度ウケているかのチェックも抜かりない。その時に全く笑っていない人を見つけて僕の笑顔も固まるのだ。周囲の声が古いラジオのように遠ざかり、鼓動が台頭して響き始める。僕は心臓が収縮するたびに恋に落ちてゆく……。

そんな物語の冒頭まで用意しておけばドン引かれることはあっても、つまらねえなあと悪態をつかれることはないだろう。好みのタイプを聞かれる際の回答は「みんなから笑われている時に1ミリも笑っていない人」に決定だ。このよくわからなくも妙に具体的な点が良い。

笑わない人、求む。

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