研究

研究意義について

 卒業論文や修士論文を書いている大学生や大学院生と話していると,「私の研究には意義がない」とか,「自分の興味本位で始めたから意義はなに?って聞かれると答えられない」という話を聞くことがあります。

 「先生は何でも好きな研究をしていいと言うけど,好きな研究を考えたら,”なぜその研究をする必要があるの?”って尋ねられることあるじゃないですか。どうしたらいいの。」(意訳)と学生さんに言われたこともあります。

 振り返ってみると,私も研究意義について悩んでいる時期があり,その中で苦しみながら論文を書いていたなあと思います(悩んでいた時期の論文:仲嶺, 2015a, 2015b)。

 そこでここでは,研究意義について同じような悩み・苦しみを抱えている大学生・大学院生さんたちの一助になればと思い,私なりの研究意義に対する考え方を記しておきたいと思います。

研究意義はなぜ必要?

 研究意義は自分の研究の必要性を他者にアピールするためだけでなく,研究協力をお願いする場合にもあると良いことがあります。たとえば,知り合いにだけ研究協力をお願いする場合は,「私が知りたいから協力して」とお願いしても協力してもらえるかもしれません。ただ,知り合い以外にも研究協力をお願いする場合は,協力してもらう理由,つまり研究意義があると協力を得やすくなります。

研究意義は難しくない

 研究意義というと大層なことと捉えられるかもしれません。しかし,そこまで重く考える必要はありません。他者に対して「あーなるほど,だからこの研究をしたいのね」と思ってもらえる説明ができれば,それが研究意義になります。たとえば,「恋愛の研究をしたい」と思ったときに,「青年期は恋愛に悩む時期で,青年期の恋愛とはどういう特徴があるかを知れれば,青年期の悩みを解決する手助けになると思うんだよね」と説明できれば,これが研究意義です。

説明が(不)必要な研究意義

 研究テーマ(問い)によっては研究意義を深く考えなくても,自然と意義があるように見えるものもあります。たとえば,「既存の方法の問題点を克服した抑うつの解消方法を知りたい」であれば,「なぜその研究をするの?」と聞かれることはないでしょう。なぜなら,「抑うつは治すもの」という常識が存在するためです。すなわち,「それは良い(悪い)こと」と社会的に認められているものは,特に説明をしなくとも研究意義があるように見えます。

 他方,説明しないと研究意義がわかってもらえない研究テーマ(問い)もあります。たとえば,「飛行機を乗っている人の心理状態」という研究テーマは一見すると「なぜその研究をする必要があるのか?」と思われる可能性があります。「他にもっと重要なことがあるでしょう」と言われてしまうかもしれません。

 そもそも人間あるいは心を知るための研究テーマに研究意義の大小はなく,どのような研究テーマでも研究される必要があると個人的には思います。ただ,人には多様な価値観があるので,見る人によって「その研究テーマは人間あるいは心を明らかにするとは思えない」,つまり研究意義がない(あるいは小さい)と思われる場合もあるかもしれません。その場合は研究意義を自分で説明しなければなりません。

研究意義の種類

 研究意義の説明の仕方には大きく2種類あります。一つは学術的意義を説明する方法,もう一つは社会的意義を説明する方法です。

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