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陰陽師 生成り姫 観劇記録

2022年3月4日(金) 新橋演舞場

三宅健くん主演の陰陽師を観劇してきました!!
大好きな林くんは健くん演じる安倍晴明の唯一無二の友、源博雅役。
陰陽師と言えば一時期ブームになりましたが、見ていなかったのでよく分からず(汗)さらに上演時間が三幕構成、3時間15分というのを行く直前に知り、最後までしっかり観劇できるか不安になりました…。
が、いざ観劇してみると面白くて3時間があっという間!!!もう一回観劇したいと思うくらい素晴らしい舞台でした。
各幕ごとに感想を書いてみたいと思います。


〈あらすじ〉
安倍晴明とその友、源博雅は酒を酌み交わしながら博雅の忘れられぬ女性“芍薬の君”のことを話していた。
その女性と出会ったのは12年前の堀川橋のたもと。博雅が笛を吹くと必ず牛車が現れるということが続いていた。そしてある日、博雅の笛の音に美しい琵琶の音色が重なる。その琵琶を弾いていたのが牛車に乗っていた一人の姫君。彼女は博雅の笛の音に誘われて橋のたもとに出向いたこと、笛の音に心を慰められていたことを告げる。だがもうここへは来られないと博雅に一輪の芍薬を渡し、名も名乗らずに去ってしまう。
この日からずっと博雅は姫君を忘れられずにいた。
晴明と博雅が姫君の話をした3ヶ月後、晴明の元へ琵琶の名手蝉丸が突然やって来る。その手にはあの姫君が弾いていた琵琶が…。蝉丸はある者にこれを源博雅へ託して欲しいと頼まれという。
琵琶は壊れた跡があり、修理されたものだった。
姫君に何かあったのではと悟った晴明は博雅を堀川橋のたもとへ連れて行く。
そこであの日のように博雅が笛を吹くとあの姫君が現れた。しかしその姿は生霊。姫君は博雅に「私をお助け下さい…」と言い、消えてしまう。
姫君の身に何があったのか、博雅は姫君を救うことができるのか…。


〈舞台装置と演出〉
今回の舞台、セットと演出がとても素敵でした。セットは森のような場所がメインセット。晴明の家なのですが、そこに精霊たちが何人もいる。そして酒の支度などをしてくれるのです。なんとも幻想的でした。
プロジェクションマッピングも使われていて、雨が降るシーンはとても美しかった。雨の匂いがしてきそうな、そんな臨場感がありました。
それから演出が面白くて、アクロバット隊のような方たちが数名いて各シーンに絶妙な強弱がついていました。
姫が自死しようとするシーンではその方たちは“水”を演じていたり、姫が鬼と化したシーンでは家来の物怪を演じていたり、物語により一層惹きつけられる演出でした。
最たるものは巨大な鬼。これを5人の方が顔・両手足に分かれて操っていたのですが、動きが繊細かつリアルでとても怖かった…。こういう見せ方って初めてで、凄いなぁと思いました。
下世話な言い方をするととてもお金がかかった舞台という印象(笑)でもお金のかけられ方が無駄じゃないので、こういう何もかもにプロの仕事が行き渡った舞台を見られることを幸運に思いました。
良き舞台というのは舞台装置に惹かれることが多いかもと、今回の陰陽師を見て気づきました。これまでに観た舞台の中で好きな作品を思い出してみると全部セットももれなく好き。演出が大事と思っていたけど、ストーリーに入り込めないのって案外セットに違和感があるとかそういうこともあるのかもしれないです。


【第一幕】
博雅と姫君との出会い〜姫君が姿を変えるまで

冒頭に堀川橋のシーンがあったので、お目当ての林くんの登場は早かったのです。
十二単姿で現れた林くんを見て、

かわええーーー!!!!!

と心の中で大絶叫しました(笑)
今まで海外戯曲の作品に出る林くんを見ることが多かったから、勝手に洋風が合うと思っていましたが和もいいねぇ。めちゃくちゃ似合ってた!!アクスタ売ってくれ!!←
博雅様に一目惚れでした。
12年前にたった一度だけ言葉を交わした姫君が忘れられない博雅様。なんて一途で素敵なお方なのでしょう…。
晴明とのやり取りは軽快で、2人が固い絆で結ばれた友であることがしっかりと伝わってきました。会話だけでそれを感じさせられるの凄い。そしてこの友情が後々大切なポイントになってきます。
生健くんはとにかく麗しかった…。白い十二単姿が眩しかった…。落ち着いたお芝居をされていたので、“健くん”ではなく“安倍晴明”としてすんなり見ることができました。
晴明が何度も博雅様に「お前はいい男よのぉ」と言っていたのですが、心の中でブンブン首を縦に振りました。
博雅様が想いを寄せる姫君は、夫に捨てられて身も心もボロボロになっていました。姫君を捨てた最低な夫は藤原済時。演じているのは姜暢雄さん。この済時という男、どうしようもないバカでクズな男なのですが姜さんが演じるとそれさえキュートでなんだか憎めなかった(笑)
姫君が両親の形見として大切にしていた琵琶を済時が借りパク。そしてそれを最近通っている綾子姫に勝手にあげてしまっていました。たまたま綾子姫が琵琶を弾いている時に姫君が近くを通りかかり、屋敷に忍び込んで綾子姫にそれは自分の大切な琵琶だと伝える。それを綾子姫は「捨てるから欲しいなら拾えば」と言って姫君の前で琵琶を破壊する。
済時が済時なら、惚れる女もどうしようもない。綾子姫はワガママで自己中で性格がどブスでした。これは恨まれても同情できないわ…と申し訳ないけど思ってしまった。
人が大切にしているものをぞんざいに扱うって絶対にしちゃいけないなと改めて思いました。
夫に捨てられ、夫を奪った女に大切な琵琶を壊されるという仕打ちを受け、姫君は自死を決意。しかしそれもお付きの者に止められてしまい、死ぬことすらできない。打ちひしがれた姫君の元に晴明のライバル道満という陰陽師が現れてしまい、これが全てを破滅の道へ追いやることになります。
壊された琵琶はお付きの者が蝉丸という琵琶の名手の元へ持ち込み、それが博雅様の元へ届けられます。これがきっかけで姫君の生霊に会えた博雅様はそこでようやく姫君の名を知ることができました。その名は徳子姫。
名前が分かれば色々調べることができる。そして博雅様は何もかも知ってしまうのです。それでも彼女への想いは変わらず、どうしても徳子姫を助けたいと願う。
この博雅様の想いが熱くて熱くて、徳子姫が羨ましかった。なんで私の名前は徳子じゃないだ!と思いながら観劇しておりました(笑)
「助けて欲しい」という徳子姫の生霊の言葉からまだ救う道はあると判断した晴明は博雅様と共に徳子姫を救いにいきます。
徳子姫は済時と綾子姫に復讐することを生きる力にしてしまい、丑の刻参りをする日々。そこへ道満が現れ、「あなたの願いは聞き届けられた」と伝える。すると徳子姫は鬼になってしまいました…。
そしてまず綾子姫を襲い、殺してしまう。このシーンがとてつもなく怖かった(震)最後首だけ取って、それにかぶりつくというとんでもないシーンがあり、震えました。徳子姫は元宝塚の音月桂さんが演じられています。お芝居が上手だから本当に怖かった…。
あと一歩の所で徳子姫を救うことができず一幕が終わりました。

【第二幕】
晴明・博雅VS鬼となった徳子姫・道満

徳子姫が既に鬼になってしまったことを悟った晴明はこれ以上何もできないと博雅様に伝えます。それでも徳子姫を助けたい博雅様は諦めない。
次の鬼の狙いはもちろん済時だと分かっているので、2人は済時の屋敷へ向かい、徳子姫との出会いから別れまでなど事情を聞く。そして鬼が襲ってくるであろう丑の刻に備えて準備をする。
自分の行動が招いたことだというのに反省する気配もなく命乞いする済時に本当に腹が立ちました。でも、世の中って鈍感でこういうどうしようもないバカの方が上手に生きていける気がする。それにもまた腹が立つ。結局ここでも済時は命拾いするので、バカは強いよ本当に。←
予想通り済時を襲いに来た鬼。おぞましい姿に震えながらも博雅様とっさには笛を吹きます。その美しい音色に理性を取り戻した徳子姫。同じく忘れられずにいた博雅様に自分のおぞましい姿を見られてしまったことを恥しみ、そのまま走り去ってしまう。
博雅様は徳子姫を追いかけ、晴明は琵琶こそ姫を救えるのではと考えて取りに行きます。
徳子姫の屋敷へ着いた博雅様は「あなたを救いたい」と徳子姫に伝え続ける。
徳子姫は人間と鬼の間を行き来しています。そこへ道満が現れる。そして、「あなたが晴明にもらった御守を破れば、徳子姫はあなたを喰らうことができ、2人は一心同体となれる」と信じられないことを伝えます。
博雅様は何の迷いもなく御守を破り、徳子姫に喰われ、2人は一体の鬼となって第二幕が終わりました…。
誰かを愛することはとても美しくて、同時にとても恐ろしいと思いました。
愛する気持ちが恨みになって自分を悪い方向へ変えてしまうこともある。博雅様の想いは本当に一途だけど、一緒に鬼になることを選ぶという決断はやっぱりとても恐ろしい…。究極の想いなんだろうな。心中とかもこういう類の愛なのでしょうけど、できることなら誰かを愛することで健やかに生きたいものですね…。
二幕が終わり、呆然としながら一緒に観劇していた後輩ちゃんと「博雅様と晴明がもう二度と一緒にお酒を酌み交わせないなんて絶対に嫌だね!」と喚きました(笑)最後どうなるの⁉と緊張しながら第三幕の幕が上がるのを待ちました。


【第三幕】
晴明と博雅が起こす奇跡

博雅様が徳子姫と共に鬼となってしまったことに打ちひしがれる晴明。
博雅様の想いはある意味成し遂げられたわけで、もうこれ以上2人に関わるべきではないのかと悩みます。
2人が鬼となってから10日後、蝉丸と共に晴明は堀川橋のたもとへ。蝉丸から「どうするのか決めたのか」と問われても、「まだ迷っている」と晴明は素直に胸の内を明かします。蝉丸が琵琶を弾くと、巨大な鬼が姿を表します。
琵琶の音色に博雅様の理性が戻りつつあり、晴明は人間の姿の博雅様と再会を果たすことができました。
そこで「お前がいない京の都で生きている意味などない。戻って来ないと言うのなら、俺も喰らって連れて行け!」と博雅様に告げます。
晴明の想いを聞いた徳子姫は博雅様に「もう自分は十分だ」と、博雅様に別れを告げます。鬼はその体を失い、徳子姫はあの世へ。そして博雅様は戻って来るのでした。

ハッピーエンドで良かった…(号泣)

二幕の後半から三幕はとにかく泣きっぱなし。泣いても泣いても涙が出てきてどうしようもなかったです。
特に三幕の晴明のセリフは共感しかなくて、博雅様が戻ってきてくれて本当に良かったと思いました。
だって晴明の立場になって考えてみれば、自分にとって唯一無二と思っている友達があっさりと自分より久しぶりに再会した好きな女性を選んでしまったのだから切なすぎる…。残される自分のことなど友達の頭には一瞬も過ぎらなかったのかって悲しくなる…。
でも人間って結局自分が一番だから、追い込まれた時に大切な人のことって考えられないんだろうな。私も気持ちがいっぱいいっぱいになって良からぬことを考えてしまう時、誰の顔も浮かばないもん。そんなものなんだよね。
それでも晴明の側に立つと、なんで思い出してくれないんだよ!ってなるからワガママな生き物ですね(笑)
戻って来た博雅様は鬼になっていた時の記憶がありませんでした。「なんだか夢を見ていたようだ」と晴明に言うと、晴明は「どんな夢だった?」と問います。
博雅様は「甘美な夢だった」と答えました。この答えがまた泣けました…。
想い続けた徳子姫を本当に救うことはできなかったけれど、最後に2人で見た夢は甘美だった。徳子姫も博雅様と再会できたことで本来の身も心も美しい姫の姿で旅立つことができた。最後に救いがあって本当に良かった。でも、2人がもっと早く出逢えていたらとても幸福な人生を2人で歩むことができただろうからそう考えると悔しい…。
実は徳子姫のお付きの者も徳子姫に想いを寄せていました。だから家が廃れてしまっても、姫を支え続けた。
最後はその手で済時を殺ろうとして、済時のお付きの者に斬られてしまうという悲しい終わりでした…。
実は徳子姫はいろんな愛に包まれていた。その愛に救われて欲しかった(泣)
博雅様と徳子姫には来世で再会して、幸せになってほしいです。


人と関わるということは必ずしもいいことばかりではありません。
煩わしいこともあるし、自分の感情がかき乱されてしまうこともある。
それでも人生には数度、自分の人生を変える人との出会いが訪れるような気がします。
そういう人との関係は失わないように抗って掴み続ける価値が絶対にあると、改めて感じました。
人は人に傷つけられるけど、同じく救ってくれるのも人だと思いました。
とても素晴らしい舞台でした。
観劇できて本当に良かったです。



もし迷っている方がいたら絶対に観た方がいいとオススメしたいです!!

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