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2017新春文楽みてきた

2017年最初の観劇は文楽からスタート。お正月恒例のにらみ鯛を見るのもこれで3回目かな?

今年は7日、8日に行ったので初日の休憩時間には手拭い撒きも。こういうのはアイドルや野球選手のボール投げと同じくとれたためしがないのですが、一度ぐらいはゲットしてみたい…

演目はこんな感じでした。

◆第1部
寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)
奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)
 環の宮明御殿の段
本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
 十種香の段/奥庭狐火の段

◆第2部
お染/久松 染模様妹背門松
(そめもよういもせのかどまつ)
  油店の段/生玉の段/質店の段/蔵前の段

2部の方を先に観たのですが、お染久松の心中ものながら、コミカルなチャリ場満載で湿っぽくならない不思議な作品でした。

油屋の段は咲太夫さんの茶目っ気たっぷりの語りで大笑いした。悪役の善六が義太夫の太夫さんのマネをして、お茶を飲むふりをしていて灰まみれになってしまうシーンで、お人形と同じタイミングでお茶をすすったり。

これからご覧になる方もいらっしゃると思うので、ネタバレNGの方はリンク先を見ないで欲しいのですが、去年大流行したあんなネタこんなネタもしれっと盛り込まれていてびっくり。師匠もyoutubeとかご覧になるのかしら…?客席も大いに沸いていました。

本当にねぇ、文楽は難しいとか暗くて重たいと思ってる人に、こういうの観て欲しいなーと思う。そもそもお笑い大国である大阪の芸能なんだもの。シリアスな話でも要所要所にこういう笑えるシーンが入ってくるんですよ。

とくに大阪で観ると、大阪のお客さんは肩肘張らずに笑うとこは大笑いしながら観てくれるので楽しい。東京は客席か固いからなぁ…。遠征費は大変なんだけど、私はやっぱり、大阪で観るのが好きです。

お染久松ものでは以前、野崎村を観ましたが、それに比べると同じ題材を扱っていても全体的に軽い演目で、しかもラストはいよいよ心中かと思いきやまたしても道化役の善六が割り込んで、主人公たちが手を取って逃げていくという野澤松之輔補曲のアレンジ版なので好き嫌いは別れると思う。正月早々湿っぽくなって帰るのも…という配慮かもしれないけど、私も正直、ラストはもともとの蔵の中と外で自害する心中バージョンのほうが観たかったな。

お染久松というのは、言ってみれば日本のロミジュリなんですよね。久松は丁稚、まだ前髪つけた青二才だし、その子供を妊娠しちゃった大店のお嬢さんのお染ちゃんも歳は二八ということは16歳。昔は数えだから、言ってみれば金八先生第一シリーズの杉田かおるですよ。子どもなんです。

幼い故に身分違いの障壁があっても余計に盛り上がる恋。途中の生玉の段(まさかの夢オチ)でも、解説には「赦されぬ恋に落ちてしまった身の不幸を互いに嘆き合うふたり」的なことが書いてあるんですけど、実際はといえば「ああ、あなたがイケメンすぎるからいけないの、神さまはどうしてあなたをこんなイケメンにつくってしまったのかしら」「君のえくぼが恋の落とし穴だったんだよ」的なことを言い合うという、どうにも深刻味の足りないバ〓ップルっぷりで、その割には二言目には「もうこうなったら死ぬしかない」と言い出すというのは、とにかくもう世間知らずの思春期の子どもの姿そのもの。

親や周囲の大人が懸命に早まったことをしないよう、叱ったりなだめたりして言いふくめようとしても、どだいこの年頃で恋愛に夢中になってる子どもというのは親の話なんか聞いちゃおらんのですよ。同じ年頃の子を持つ親の身として、このへん主人公より大人たちに感情移入しまくる私。

つか「親の決めた結婚相手」清兵衛がいろいろと出来る男すぎて「どう考えたってこっちと結婚するほうがいいじゃん!」と思うのですが、それもやはり私が「大人」だからなんですよね。

若くてピュアなふたりには、好きな人のことしか見えない。恋を貫くことしか考えてない。貫けないなら死んでもいい、いや死ぬしかない、という、幼さ故の純粋さがロミジュリだし、純粋さゆえに避けられない悲劇が涙をそそるわけです。

だからやっぱりここは、ちゃんと心中を遂げるバージョンのほうがいいと思うんだよなぁー。いつか心中バージョンのほうも観てみたいです。ま、お正月ということで今回はこれでヨシ。

油屋以外では、質屋の段の富助さんの三味線がカッコよかった。たまたま前の段が、うーん、なんか語りと三味線がちょっとちぐはぐな感じ…?という気がして(通じゃないからよくんからない)今ひとつ入り込めなかったので、余計ビシ!っとしまる富助さんの三味線がカッコよくきこえたのかも。

第1部はお正月らしく、おめでたい寿三番叟から。太夫さん、三味線さんが舞台正面にズラーっと並ぶとこは圧巻です。普段床の方はずっとは見てないので、こういう時に、と思って太夫さんと三味線さんの顔と名前を覚えようとする私なのだった。太夫さんはだいぶ覚えたけど、三味線さんはまだよく覚えてない。

奥州安達原の明御殿の段は2014年に一度みてるので2回目。最初にみたときは、老母浜夕の武家の女として毅然とした部分、それと娘や孫への情愛の葛藤を強く感じたけど(前のは誰の語りだったっけ…)、今回の英太夫さんの語りはもっと優しさというか母の甘さというか、抑えきれない親の情が強く出てる感じだったなぁ。だいぶ印象が違った。同じ演目を別の人で見始めるようになるとまた別の面白さが出てくる感じ。

本朝廿四孝も二度目。前回は八重垣ちゃんが簑助さんだったと思うが、今回は勘十郎さん。絵姿を拝む後ろ姿の可憐さと存在感は、やっぱり簑助さんなほうかなーと思ったけど、和生さんの遣う勝頼とのいちゃいちゃシーンは初々しく可愛かった。それにしても勘十郎さんは、キツネやるとき本当に生き生きしてる…好きなんだなーと思いながら見てた。

こんな感じの今年初文楽でした。去年は夏公演に来られなかったので、今年は行きたいな。ハモ食べるんだ、ハモ。

#文楽 #演劇 #2017 #大阪




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