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2017夏休み文楽特別公演

酷暑の大阪に見にいってきました、夏休み文楽特別公演。1日3回公演の2部と3部を続けて鑑賞。演目はこんな感じ。

◆第2部
源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)
 義賢館の段/矢橋の段/竹生島遊覧の段/九郎助住家の段

◆第3部
夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)

 住吉鳥居前の段/釣船三婦内の段/長町裏の段

実は第1部の子供向けの演目のほうに、私の推し太夫の文字久太夫さんや、襲名なさったばかりの呂太夫さんが出るので、そっちも行きたかったんだけど、先々週から仕事だ飲み会だジムの見学だと忙しくて寝不足だったのもあって、1部だけは事前にチケットとってなくて、2日目に人と会う約束もできたので、今回は残念ながらパスしました。面白そうな演目だったんだけど、いつかまた機会があれば。

入れ替えのときのすれ違いで、1部をみた帰りの子連れのお母さんグループを結構たくさん見かけました。こうして平均年齢が低くなってる劇場にくるとほっこりします。普段の客層は、四十路の自分ですら若いほうになっちゃう感じなので…。未来の技芸員さんが、この子どもたちの中にいるのかも!

今回は前述の通り忙しくてぼーっとしてて、遠征なのに演目や出演者の予習もしてなかったんですが、2部は歴史物。3部は世話物で、実際にあった殺人事件を題材とする舅殺しの話。

2部の布引滝は歴史物にしては筋が追いやすく、ちゃんちゃんバラバラとか船や湖が出てくる派手めのシーンもあるし、基本の「主君の子供をなんとか生かすために民間人の老人がんばる」「ものすごい悪者顔で、いっぱい意地悪してきた奴が実は生き別れの血縁者とかで、急に命を賭けて窮地を助けてくれる(←こういうのをモドリっていいます)」「ものすごく理不尽に女が死ぬのだが、ラストシーンではそれがすっかり忘れられた感じで子供が武士になるとかして、3人ぐらいが正面向いて、歌舞伎っぽく大見得きって『あっぱれー!』的に終わる」というパターン全部入ってるし、その割に死んじゃうとこはわりとアッサリで、エスクトリーム切腹みたいなくだりはないので、なるほど夏休みらしく初心者向け。

(ちなみに、切腹した人がなかなか死なずに核心的なこととか説明的なことを延々と喋り続けるやつを個人的にエクストリーム切腹と呼んでいる。中でもエクストリームだなと思うのは「さっきまで普通に喋ってたのに、着物脱いだら実は事前に切腹してて、出血に耐えてここまで行動してました」のパターン。初めて見たときは、いや死ぬでしょ!むしろ即死でしょ!!と思いました。)

託された旗を握りしめたまま流れ着く女の手首のエピソードなんかは伝奇的な要素もあっていかにも夏っぽいし、アニメ化とかしても面白そうな話だなーと思った。

夏祭浪花鑑のほうは、仁義に厚いヤクザ者たちとその女房が啖呵きりまくってるような話で、でもキリッとした女たちがカッコイイです。お姫さま系がヒロインの話にありがちなイラっと感がありません。義兄弟の契りがどうとかとか、東映ヤクザ映画を観る感じで楽しめると思います。

これも歌舞伎っぽい(←ぶっちゃけ歌舞伎は見ないからよく知らないけど、基本的にケレン味があるやつは歌舞伎っぽいとザックリ思ってます)、立ち回りの派手な演目なんで、文楽を観たことないひとや外人さんが観ても楽しめると思います。

クライマックスの井戸の近くの殺しのシーン、言いたい放題言われていた団七がうっかり舅を傷つけてしまい、ええいままよとなし崩し的に殺害を決意するとこ、勘十郎さんは本当にこういう心理描写がうまいなと思う。賑やかな祭りの囃子を背景にした泥臭い殺しのシーンは女殺油地獄なみにゾクッとします。

今回は咲寿太夫くんが住吉鳥居前の段を語ってて、まだ声が若いから老人の声とかはやっぱり少し物足りない感じなんだけど、数年前聞いた時よりもずいぶん上手になったなぁと思った。語りわけもちゃんとできてるし声がいいと思う。若手の太夫さんに、もっともっと出番があるといいと思います。

あと和生さんの立役、やはり今回もよい。何かこの一年ぐらい、グッと雰囲気変わったような気がする。そのうち人間国宝とかになるんじゃないかしら。(追記:私先週は忙しくてなんの準備もせず大阪いって、見終わってからもモタモタこんなの書いててニュース見てなかったんですけど、和生さん、そのうちどころかまさに今年、人間国宝に認定されました!めでたい!あとなんか自分に見る目があるって言われたみたいで、それも嬉しい!)勘十郎さん、玉男さんとかに比べて地味に見られがちな気がするけど、私ここんとこずっと和生さん推しです。

よい人形遣いというのは、人形を使ってるというより人形が人に寄生したみたいに、冬虫夏草みたいに見えるものだと思ってるんだけど、簑助さんの次ぐらいにその雰囲気があるのは和生さんなんじゃないかとか思っちゃう。褒めすぎかしら。でもそれぐらい最近の和生さんはいいです。

※虫は苦手ですがこの図鑑には心を惹かれた…。

あと咲太夫さんは、お元気そうで安心しました。やっぱり地元大阪におられるときの方が体調良さそうに見えるなぁ。公演の最初の方だからかも知れないけど。

今回は、観に行った週末がちょうど市内で浴衣祭りだかなんだかをやってたらしくて、浴衣姿の人が多かったんだけど、斜め前ぐらいに、団七とお揃いの格子の着物の若い男性のお客さんがいました。

この、茶色いチェックみたいなやつ。団七格子と言うんだそうです。

「着物を着なくちゃ日本の伝統芸能はわからない」とかごちゃごちゃうるさい「ツウ」の御託に関しては、いつもケッと思ってる私ですが、こんな風にコスプレして楽しむのはちょっと面白そうって思いました。いつかやってみようかしら。

#文楽 #201707 #源平布引滝 #夏祭浪花鑑 #国立文楽劇場 #大阪 #舞台

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