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52万5600分の中の一瞬

今年最後の舞台鑑賞は、ミュージカル「RENT」の20周年記念公演でしめました。本当はオーラスのカウントダウン公演行きたかったんだけど、終わってからどうやって帰るのさ、という問題と、大晦日実家の母を一人にしておくのもなぁ、ということで断念。最終日のマチネーに行ってきました。

去年、日本バージョンを観てすっかり感動してしまい、映画版のDVDも買って耳が擦り切れるほど聴きましたが、2度目の鑑賞で「あ、ここにいるキャストの大半は初演時にはオムツしてたりする年齢だったんだなぁ…」と思うと、なんかふぁあああ!ってなった。

私は物語の舞台となる1989年からミュージカル初演の1996年にかけてはちょうど学生だったし、AIDSが不治の病と言われた時期の空気感とかも知ってる。歌詞に出てくるスパイク・リーの映画も観に行ったし、留守番電話だってもちろん使ってた。

でもここで歌ってる彼らにとっては、どれも大昔の話で、まずは物語の背景を知ることから始まるんだよなぁ…。

だけど、20年の時が流れて、もしかすると2016年の今は、このミュージカルの空気感がスッと理解できる、という若者は、例えば15年前とかよりも増えてるかも知れないな…と思った。

HIVの治療法は増えたし、不治の病ではなく共生していける時代にはなったけど、日本のホームレス問題は公開当時より悪化しているように思えるし、マイノリティーへの差別の問題や若年層の貧困問題など、少なくとも日本では2016年の今のほうが、初演時よりも顕在化しているのではないか。

ままならない夢や現実、人を愛し愛されたいという欲求、その中でもがく自分、仲間、そんな作品の普遍的なテーマはきっと、キャストも観客も若い人たちにこそ真っ直ぐに刺さるものだと思う。

そして我々のようなかつて若者だった人たちにとっては、「あの時からお前は、真っ直ぐに愛してきたか?真っ直ぐに愛しているか?」を問われるような、そんな作品です。

外に出るともう夜でした。

2部の1番最初の曲、シーズンズ・オブ・ラブ。この歌詞に出てくる数字が、このエントリーのタイトルです。一年間を分に直すと52万5600分。その最後の数百分が、まさに今通り過ぎていくところ。

今年一年、その52万5600分の中の1分1分に、どれだけ全力で愛を注げただろう?そう考えると、すっかりサボってしまった一年だったような気がする。

年が明けるとまた一つ歳をとる私は、生きてきた時間より生きる時間が短い側の人間になりつつあるわけで、本当にこの1分1分に全力で愛を注がなきゃいけないんだな。って思った。

また新たに始まる52万5600分の一瞬一瞬が、皆さんにとっても愛に満ちたものでありますように。

#舞台 #ミュージカル #RENT #演劇 #2016

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