見出し画像

本の楽しみ方が変わった話

子供の頃は、本を読むのが好きで図書館に行くのが好きだったのに、だんだんと本から遠ざかり、就職活動の面接の際に「苦手なことはありますか?」という質問に『本を読むことが苦手です』と答えるほどに。

本を手に取り、読み始めると、最後まで読み切らなければ、という謎のプレッシャーに襲われることがあった。

でも今は本が好きで、本屋が好きで、文章書くのが好きで、自分で本を作りたい、と思えるほどに変わった。
その変化の背景には本の楽しみ方を教えてくれた大きな出会いときっかけがあった。

本が読めないイコール集中力が無いと思っていた

小学生の頃は、本が好きで、ハリーポッターシリーズを読むのが楽しみで、読書感想文も嫌いではなかった。

中高生になると急に本を読まなくなった。単純に忙しくなり、本を読む時間を作らなくなったのと、対象となる本が少し難しくなり、読み込んで理解するのが大変で途中で面倒になっていたように思う。

大学生になってからは、ゼミの課題で出された本を何となく目を通して、気になる項目だけ軽く読んでレポート書いて提出していた有り様。

本はただ文字が並んでいるだけで、その文字を読み込むもの。そんな認識。
最後まで読み終わらなければいけない、と意気込んで、途中で断念すると「ああ、私は集中力と理解力が無いんだな」と落ち込んでいた。

私は本の読み方が分からなくなっていた。

本は読むだけのものでは無い

とある日、広島県尾道にある小さな珈琲屋でコーヒーブレイクをしていて、店主と本の話になった。


『本を読むのが苦手なんだよね。本は嫌いじゃないんだけど、集中力が続かなくて、最後まで読みきれなかったりする。』と私が店主に話すと、カウンターに座っていたお客の青年が

『別に最後まで読みきらなくても良いんじゃないですか』と静かに口を開いた。

『本を読むのが苦手だと思うのは、きっと本当に好きな本、自分に合った本に出会ってないだけだと思います。』

『本を選ぶときはタイトルや表紙が好き、っていうだけでも良いし、読まなくても手元に置いといて本棚に並べておくだけでも良いし、最後まで読まなくちゃいけないというのは無いと思います。』

『本の楽しみ方は色々ありますよ。』

新しい世界を知った気がした。
どうして今まで誰も教えてくれなかったんだ。

そもそも本の見方、買い方、選び方が私は違ったのか。
読まなくても手元に置いとくだけで本としての楽しみ方は合っている。私にとっては、はじめての考え方だった。

美しい本に出会った

本屋といえば大型書店で今話題の小説を見てみたり、私は旅行関連の雑誌を見るくらい。あの広いフロアで気になる本を探すのは中々大変だ。

一方で尾道には個人経営の小さな本屋があった。店主がセレクトしたこだわりの本がそこにはあった。全ての本に目を通せるくらいの小さな本屋。

その店でちょっと変わった本を購入した。

花の本だ。写真集のように道草の花の写真が載っていて、花に合わせてエッセイが書いてあった。サイズはB5でアルバムのようなしっかりとした紙の表紙。そしてその表紙をトレーシングペーパーで包んであった。透明なキャラメルの包み紙のような。表紙いっぱいの花が透けて見える。

「微花」webサイトから写真引用

https://kasukamagazine.stores.jp/

ああ、美しい。

本としても読みたいけど、どちらかと言ったら飾っておきたい。こんな本があるんだ。私の知らないジャンルだった。大型書店では出会えない。

本に対して「美しい」と思ったのは初めてだった。

個人書店が面白い

個人書店では、自費出版と言われるような本が多く並んでいる。自費出版は出版社を通さずに自分たちで製作した本。大型書店には並ばない。

そして本はこうあるべきだという型にハマらない自由な本が多い。例えば小説の型はもう決まっていて、全部同じだ。漫画もそう。でも少部数の自費出版の本たちは多種多様。本のサイズも紙の種類も文字の大きさも様々。

岡山 451books

今はネットでも本が読めるようになったけど、手に取らないと分からない良さがある。

個人書店に行くようになって、さらに新しい本の世界を知った。良いなあと思う本も増えたし、買いたい本もどんどん出てくる。

『他人の本棚を見ると、その人の頭の中が見える』というけれど、本屋さんもきっと同じ。店主の頭の中を見ているような気になる。

ちなみに珈琲屋で会った青年はその後しばらくして本屋をオープンした。古本を中心とした小さな本屋。彼のワールドが広がっていて最高だった。

本にはお金を使う

本を買うことに対する助言をくれた人もいる。

大学のゼミ教授だ。

大学卒業後、私は埼玉から岡山に移住して、新しい日々を楽しんでいた。

『暮らしはどう?』
「充実してます!田舎だし、お金もあんまり使うところが無いんですよね」
『なるほどね。それはよかった。でも本にはお金を使いなさい。』

そんな会話を交わした。当時は「そうですよね、本は買うようにします」なんて返事をした気がするがその時はあまりピンと来ていなかった。

でも本屋でこの本買おうかな、どうしようかな、と悩んでいるといつも教授の『本にはお金を使いなさい』の言葉がフラッシュバックする。その瞬間だけいつも思い出す。この言葉に背中を押されるように悩んだら出来るだけ買うようにしている。当時の私のことを思って言ってくれた言葉であり、私のお守りのような、呪文のような存在。

本を買うのは、知識を買うのに値する、という話がよくあるけど、その通りであって、本は新しい世界を教えてくれる。

本の楽しみ方を知れた

本についての助言をくれた方々のおかげで私は今、本を楽しめている。
今書いたこれらのきっかけが無かったら私は今も読書が苦手なままだっただかもしれないし、新しい世界を知るチャンスを逃していたようにも思う。

本が読めないイコール集中力が無い、と思っていたけど、それは間違いだったと今なら分かる。
本は集中力を試す為に読むものでは無い。

もっと肩の力を抜いて本を楽しんでいきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?