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第7章:旅先のホストファザーたちが教えてくれた豊かな暮らし。

私が北欧へ旅に出て1番知りたかった事は「暮らし」

今まで「豊かな暮らし」がしたいと漠然と考えていたのですが、その「豊か」に当たるものは何なのか、分かるようで分からない。そんなモヤモヤがずっと続いていました。

自然と共存した暮らし

旅に行く前はこれが1番しっくり来ていました。

「自然」と「暮らし」というワードでいつも思い浮かぶのは自然災害のことでした。ただ自然を楽しむだけではいけない、自然を理解して共存しなくてはいけない。そう考えていました。

私の場合は高校3年の時に東日本大震災。そして岡山で西日本豪雨を体験しました。特に大学が観光系だったので震災復興に関わる活動も少ししていました。「自然」と私たちの「暮らし」をどう結びつけたら良いのだろうか。自然の偉大なる力には私たちの暮らしは時に負けてしまう、暮らしの方を優先しすぎると自然が滅びてしまう。このバランスがずっと分かりませんでした。

デンマークに滞在した時にホストファザーとこのテーマについて話をしました。
すると彼は、

私たち人間は自然の一部だから「自然と人間は共存しなきゃ」という考えはそもそも違うと思う。私たちはすでにin nature でありwith natureではない。(私はこの時しきりにwith natureという言葉を使っていました)そして都会や街、人々が暮らしている部分はこの地球上でほんの一部。それ以外は自然が広がっている。それに気付く事が出来ればきっとバランスは取れるよ。

この話を聞いた時に今まで私は自然と人間を区別しすぎていて、バラバラに考えすぎていたように思いました。

この旅の中で1番忘れたくない、大切にしたい会話です。気持ちがすごく軽くなったのを覚えています。

そしてこの旅の中での1番の財産は、ゲストハウスで知り合ったあのデンマーク夫婦のお家に滞在した時間でした。

ここで私は自分の理想とする暮らしのヒントに気付く事ができました。

彼らの家は森に囲まれていました。けれども日本の田舎のような山々はなく、とても開放感のある見晴らしの良い場所でした。

とにかく彼らの暮らしは素敵だった。

まず朝食はキッチン横にある小さなテーブルでコーヒーとパンを。
テーブルの横には小窓が。小窓には餌箱がぶら下がっている。ひまわりの種を入れると小鳥たちが集まっていくる。今日もみんな元気だね、なんて会話を交わしながらの朝食。

さて、散歩に行こうか。と周辺の森を散策。紅葉していたり、川が流れていたり、湖のほとりで休憩したり。色んな表情に出会った。

家に帰ってきたらお庭にイスとテーブルを出してティータイム。夜は星空を見に行ったり、たまにはお家で映画タイム。夜はコーヒーではなく紅茶を。

毎日がものすごく幸福感で溢れていました。
「ああ〜幸せ」と思う瞬間がたくさん。

でも振り返ってみるとそんなに特別な事はしていないように思いました。

散歩をしている時にお父さんがお花を一輪つんで私にくれました。

「このお花を押し花にして日本に持って帰るのはどうかな。一緒に過ごした今日という日を残しておこう、そしていつでも思い出す事ができるよ。」

私が到着した日もお花を用意してくれて、なつきがいる間はこの花を飾っておこう、と素敵なおもてなしをしてくれました。

彼らはここの土地での暮らしを大切にして、楽しんでいる。そして何年もかけて自分たちの家を作り上げてきた。彼らの家は居住空間とは別にアトリエがあり、庭も手作りだ。日本が好きすぎて日本庭園を真似たらしい。

暮らしを楽しむ、というのはきっとこういう事だ。

そして自然の表情に目を向けて、暮らしに取り入れている。道端のお花をマグカップにいれて飾ったり、鳥の鳴き声聞きながら朝食。晴れた夜は外に出て星空を楽しみ、曇りの日は映画を見る。ああ、なんて素敵なんだ。居心地がとても良かった。

手の届かないような特別な事をしている訳ではない。身近なところにある小さな変化や美しさが日々の暮らしをより良く彩っている。その気付きがあるかどうか。

今日は天気がいいね。だんだんと暖かくなってきたね。今日は風が強いね。
毎朝窓の外を見てそんな会話をするのがとても心地良かった。

私が1番惹かれた暮らしはとても素朴で幸せな日常だった。

自然と共存した暮らし

「共存」という言葉が急に重く固い表現に思えてきました。

私たちは常に自然と隣り合わせ。そして自然の美しさが私たちの暮らしを豊かにしている。

知っているようで、気付いていなかった。
分かっているようで、実は分かっていなかった。

私が探していた「豊か」に当たるものに少し近付いた気がしました。



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