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世界を壊すのも、世界を直すのも私たちってこと。Netflix おすすめドキュメンタリー「監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影」

書きかけのnoteの下書きばかり溜まっていくので、今日は絶対に書き上げるぞ!書き上げるぞ!2回言ってみた。あと、今日ちょっと真面目です。

今日はおすすめしたいドキュメンタリー「監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影」について熱く語りたい。見るとかなり暗澹としますので、元気のない日は避けて。でもぜひみんなに見てほしい番組。

構成は、二つのパートになってて、アメリカの主要なSNSやIT企業(GOOGLE、Facebook, Instagram、Pintarestなど)の元幹部社員や初期の開発者による内部告発気味のインタビュ-やノンフィクションの取材部分がメイン。そこにサイドストーリー的にSNSに翻弄されるティーンの男の子が主人公の再現ドラマが組み合わさった90分です。

わたしはこれを見た後に、正直、かなりSNS使う時間が減った。見ただけでSNSダイエット達成。そのくらいインパクトがあった。

原題は「Social dilemma」(ソーシャル・ジレンマ)という。邦題「監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影」は間違ってないんだけど、ちょっとニュアンス違うかなと思った。「監視」という中央当局がみんなを見張る!という感じに聞こえる。でもこのドキュメンタリーが提起しているのは、みんなが同意して(むしろ喜んで)差し出している個人の関心・趣味嗜好を集めたIT企業が「これが好きでしょう?」「これが見たいんでしょう?」と人を誘導し洗脳して、それが巨大企業の巨額な収益になってること。

そして、さらに怖いことは、それを開発した当の本人たちも、もうどうやって止めたらいいのか分からなくなってるということ。
番組は、インタビューを受けているIT業界のインサイダーたちが、口々に「SNS、IT業界の未来を心配している」といい、インタビュアーが「では、問題は?」というと、全員が「うーーん」「・・・一言では言えない」などと口ごもる印象的なシーンから始まる。

最初に、SNSが生まれたときには素晴らしいものだった。例えば離れ離れだった家族がSNSによって再会するとか、才能が発見されてデビューするとか。作ってる側も「いいもの」だと信じていた。でもそれがいつしか、巨大化し、利益マシーン化するうちに、企業の収益化のためにちょっとしたClickbating (クリックを誘う)な巧妙な仕掛けを施されるようになった。SNSは人々の精神を浸食し、思考を誘導し、社会を分断に導いているという事例が続々と出てくる。

だから原題の「ソーシャル・ジレンマ」がしっくりくる。これは監視でも、デジタルでもなく、「社会」の話。

開発した側の人たちにも、こんなはずではなかった感、「どうしよう。いい子を生んだと思ったのに、モンスターを世を放ってしまった・・・・」と思ってる様子がありあり。


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ところで、WEBのことを全然ご存知ないという方のためにプチっと解説すると、WEB上で検索結果や表示内容を決めるルールのことを「アルゴリズム」という。この番組の中でも何度も出てくる。

(知ってるわってかたは、ここから、下の***までスキップしてね)

WEBコンテンツを作ったら、検索結果に引っかかり、表示されるようにしなければ、絶対に日の目を浴びない、存在しないも同じ。そのためには、googleやSNSがどういうアルゴリズムになってるのか当然知りたいけど、基本はブラックボックス。ちなみにgoogleのアルゴリズムはだいたい260くらいのルールからなってるらしいが、真実は作ってる中の人しか知らない。そのデフォルトはgoogleが握っていて、google先生に気に入られる=自分とこのコンテンツが検索結果順位で上位に来る、ために全WEB業界人がしのぎを削っている。

その上で、googleはキーワード広告=特定の検索ワードの結果に対して上部の広告枠に表示させる広告の商品。入札式で高く入札するだけ上位位置に表示する、という恐ろしく金次第な仕組みで巨万の富を得ている。

他のプレイヤーはルールがよく分からないし、必ずルールメイカーが勝つことになっているけど、ちょっとでも日の目を見れる可能性があるなら参加しないわけには行かない、という70億人参加型の理不尽なゲームがWEB業界の姿なのだ。

(読み飛ばし、ここまで)

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このドキュメンタリーで一番ショックを受けたのは、(というか、薄々知っていけど、ここまであからさまだったのかと愕然としたのは)普通にgoogleの検索をしたときのサジェストに、検索している人に合わせて全く「真逆の」サジェストが出てきていることだった。

番組の中で紹介されてたのはgoogle検索で「気候変動」で検索した例。過去履歴からそれを問題だと思っている人には「気候変動 対策」などのサジェストが出てきて、それを問題じゃないと思っている人には「気候変動 デマ」などのサジェストが出てくる。自分の趣味嗜好を晒しているSNSはまだしも、googleもこんなにも歪んでいたのか。

思えば、私がナイーブだった。googleの検索上位を取りたすぎてgoogleを崇めすぎてた。バカ、自分のバカ!と泣きたくなった。こうして人間って搾取されてく!!と、まさに検索結果に歪められてきた自分の脳を取り出して、洗いたくなった。


とにかく、私達が、「自分で調べて、探して、見ている」と思っている事実は「見させられている」と思ったほうがいいんだ、と心に太字でメモした。あの人と、私が調べた結果は違う結果になる。googleで出てきたもん!とか、ググってみろよとかはまったくもって当てにならない。

ドキュメンタリーのなかの再現ドラマパートでは、ピュアな高校生の男の子が、擬人化されたアルゴリズム小人たちにいいように操られて、思ってもみなかった方向に進んでしまう。

今のアメリカがBLMがどんどん過激化したり、世界で陰謀論がまかり通ったらしているのも、アルゴリズムにそれぞれの考えを絶え間なく強化されているところが大きい。アルゴリズムは「あなたは間違ってないよ!ほら、みんなだってこう言ってる!」と気持ち良くなるものを見せてくる。



じゃあこのまま世界はどんどん悪くなって破滅しちゃうの!?と思った方。ぜひ本作品を見てもらいたい。
インタビューを受けている人も言ってる、「これは楽園(ユートピア)でもあり、地獄(ディストピア)でもある、だから人を困惑させる。」「もし、SNSを全部止めたとしても、もうジーニーはランプには戻らない」、だから業界規制や収益構造の変更が必要だと言っている。

そしてそれと同時に、ネットを使っている私たちは賢くなることが出来るか?も問われている。自分の見てるものが信頼に足るかどうか(ちなみにフェイクニュースは6倍早く拡散する!)、そのClickに価値があるのどうか、このClickで誰かを儲けさせたいのか、この仕組みをサポートするのか?それらを意識的に選択できるのか?ということ。

自分たちは自分たちが作り出したもので、世界をよく出来るのか?それとも世界を壊すのか?

一番好きだったドレッドヘアのAI開発者のおじさんが言っていた。

「歴史上、何かが改善されるときは誰かがこういったときだ。 
 ”アホらしい。もっといい方法があるだろ”」

Throughout history, every single time, something's gotten better, it's because somebody had come along say, "This is stupid. We can do better." 


いい言葉!

気づくのも、変えるのも、私たちだ。


ちなみに、このインタビュー受けてるIT企業の人の多くが、自分たちの子どもたちにはSNS使わせてないって言ってます!

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