海でスイム”オープンウォータースイム”の魅力。を、ビリっけつスイマーが書いてみる1
3年前、45歳になってから、海で泳ぐオープンウォータースイムを始めた。夫と一緒に、オープンウォーターのレースに2018年、2019年はそれぞれ6-7戦参加した。
今年は大きなイベントはすべて中止になっているので、一戦も開催されていないのだが、本当だったら今頃、ノースショア・スイムシリーズという5戦のレースの真っただ中だ。
私も自分がはじめるまでまったく知らなかったオープンウォータースイムの世界。読んでくださった方の中で一ミリくらい「楽しそうかも」と思って下る方がいればいい。思い出を振り返りながら、レースのないこの夏を惜しみながら、書きたいと思う。
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オープンウォータースイムというのは、海や川や湖などで行われるレースで、プールと違うのは、基本的に長距離の遠泳であるということ。そして波と潮流の影響が大きいこと。あと、浮力になるもの、ウェットスーツ類も基本つけてはだめで、水着とゴーグル、キャップのみの身一つ参加となる。
そもそもそれまでどんなスポーツであってもレースというものに出たことがなかったので、そのすべてが目新しかった。
レースのスタート地点にはいろんな人がいて面白い。まずエリート現役スイマー軍団たち。ハワイ大学水泳部を頂点に、イオラニ高校水泳部などの若者たちは、もはや人間というよりイルカとかに近い、流体力学に適ったツルリとした筋肉質の体形に進化していて、いつもど目立ちしている。そして、昔は鳴らしたもんだよ、といった往年の中年スイマーたちもたくさん参加していて、ストイックに鍛えている人もいえば、お腹がビール腹になった人もいる。生涯泳いできましたというお年寄りもいて、85歳で全レース出ている名物おばあちゃんスイマーもいる。義足の人、松葉杖の人、いろんな人がいる。
私は、いつも夫と一緒に二人で参加しているので、緊張しながら静かにスタートを待っている。
海の上を泳ぐときって、コースロープもないのにどうやって泳ぐの?と思ったんだけど、レースのときは、海の上にスタートラインや、コースの目印となる大きなバルーンのようなブイが、転々と配置される。ブイは1メートルくらいあって膨らませる式で、レースによって丸かったり三角だったりする。(写真の中のオレンジの丸いやつ)
これはあるレースのスタート直後の様子。この時のスタートスタイルは、海の上にスタートラインが設定されて立ち泳ぎしながらスタートを待つタイプ。あとはビーチからスタートするレースと2種類ある。
この「立ち泳ぎスタート」の時も、まわりの人は立ち泳ぎしながらべらべら最後までしゃべったり笑ったりしていてキャッキャした雰囲気なのだが、プアーン!というスタートの合図が鳴った瞬間、いきなり全員が「おりゃー!」っといきなりしぶきをあげて泳ぎだすのは壮観である。
レースが1.6キロとか短いときは、ゴールしてから各自歩いてスタート地点に戻ってきてください、となるんだけど、2キロ越えのレースになるとシャトルバスが出てスタート地点まで選手たちを送り、選手は泳いで戻ってくる式になることが多い。その時は、水着だけきた老若男女がバスにぎゅうぎゅう詰めになって、送迎されているのも、かなりシュールな景色。
コース目印のブイは大体数百メートルごとに設置される。
どんなスポーツもそうだが上級者のエリートスイマーたちは危なげなく、最速・最短ルートをサメのように泳ぎ、秒を争うレースをしている。しかし問題はいつも、私を含む”よろよろスイマー”たち。クロールをしている間、ブイをずっと見ていられるわけではないので、一生懸命泳いでいるうちに曲がりに曲がってあっちこっちに散らばる。
レース中は、ライフセイバーのボランティアの皆さんがコース上に配置され、よろよろスイマーたちを「はーいはいはいこっちですよ~」ガード&リードしてくれる。スタンドアップパドルや、サーフボード、カヤック、ジェットスキーなどにのった彼らに、「almost there! 」「you are doing great! 」という掛け声にどれだけ励まされたことだろう。
”海で泳ぐのって怖くないですか?”とよく聞かれる。
もちろん怖い。
怖いけれど、怖さに向き合う、という経験も40も半ばになって初めてできた。「こわ面白い」それが私にとってのオープンウォータースイム。
出会えてよかったなあと思っている。
次は、私がどうやって練習したかとか、レース中に「死ぬ!」と思った経験について書きたい。