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人と違う -「成長」の哲学、江副浩正を中心に(2/3)

江副浩正は、「人と違う」ことを重要な成長の要素だと考えていた。彼は、個性を発揮し、他者と一線を画すことで、新たな機会を創出し、自己成長につなげることができると説いた。

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」

もっとも有名な彼のこの言葉には、自立と自己成長の重要性が込められている。一方で、会社側の支援や教育の提供を怠ることを正当化する言葉とも受け取れる。しかし、江副がリクルートを創業した1960年代は、アメリカのケネディ大統領が「あなたの国があなたのために何ができるかを問うのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるのかを問うてほしい」と国民に呼びかけた時代だ。まるで、雛鳥が親からの餌を待つ時代から、自らの翼で大空へと飛び立つ時代へと変化したかのようだ。江副もまた、一人一人が主体的に行動することの大切さを訴えたのである。

江副は、リクルートの事業についてこう語っている。

「誰もしていないことをする主義だから、リクルートは隙間産業といわれる。だが、それを継続していって社会に受け入れられれば、やがて産業として市民権を得る」

人と違うことに挑戦し、新たな価値を生み出すことで、社会に認められる。そうした姿勢こそが、江副の考える「人と違う」ことの本質だった。

働き方においても、江副は一人一人の個性を大切にすることを説いた。大企業の社長でありながら、従業員は一人一人違う人間なのだという感覚が強かったのだ。

「メンバーをよく理解しようとすることもマネージャーにとって大切なことである。それよりもっと大切なことは、マネージャー自身の方針、考え方、人格までもメンバーに理解させることである。マネージャーとメンバーとのよい人間関係は、深い相互理解から生まれる」

上司と部下の関係性においても、お互いの個性を理解し合うことが重要だと江副は考えていた。そして、自分の意見を明確に示し、議論することの大切さも説いている。

「会議で一言も発言しない存在感の薄い人間になるな」

「上司・先輩の話を聞くときは鵜呑みにするな。質問を心がけよ。疑問を持ち、議論をし、そして理解出来ればそれは間違いなく実行出来る」

自分の意見を持ち、それを主張する。たとえ上司や先輩の意見であっても、疑問を持ち、議論することが大切なのだ。

江副浩正の「人と違う」哲学は、個性を発揮し、新たな価値を生み出すことの重要性を説いている。そのためには、自ら機会を創出し、主体的に行動することが求められる。そして、一人一人の個性を尊重し、互いの意見を議論することで、真の相互理解が生まれるのだ。この哲学は、画一化が進む現代社会において、私たち一人一人が自分らしく生きるためのヒントを与えてくれている。カモメのように、自らの翼で大空へと飛び立つ勇気を持つこと。それこそが、江副浩正が説いた「人と違う」生き方なのかもしれない。


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