書評 「狙われた星」

今回は、『狙われた星』という、星新一のショートショート集をご紹介していこうと思います。ショートショートというのは、だいたい1000文字分くらいの短い物語のことで、星進一はSFのショートショートをたくさん書いています。

この作品ははそんな短編集の一つで、全部で15シリーズあるうちの、第1作目に当たります。

最初に収録されている作品は、『おーい、出てこーい』です。これは英訳されて日本の英語の教科書に収録されているくらいポピュラーなものです。

あるとき村の神社の社が台風で飛ばされ、下から大きな穴が発見されました。それはそれは深い穴で、「おーい、出てこーい」と声をあげてもこだまが返らず、石を投げ入れても底につく音が聞こえないほど深いものでした。人々はこの穴を有効利用すべく、ゴミなどの不要品をそこに投げ入れていきました。無限の穴を手に入れた地球はたちまち汚れ知らずになり、綺麗なビルが立ち並ぶなど、穴の周辺は発展していきました。しかしある時、空から「おーい、出てこーい」という声とともに石ころが落ちてきたことで、その後の展開が恐ろしいものになるという内容です。

他にもいくつか、僕の好きな作品を紹介したいと思います。

たとえば、『デラックスな金庫』です。主人公の男が金庫を大きくゴージャスなものにすることにお金を費やしていました。たいしてお金もないのに、なぜそのようなことをするのでしょうか? そうすると案の定、家に泥棒が入ってきます。命と引き換えに、金庫の番号を泥棒に告げる男。泥棒は意気揚々と金庫を開けますが、これは男の罠でした……。

『証人』も考えさせられた話です。

ある女優の死にまつわる物語です。警察側は自殺と判断しますが、ある刑事が他殺だと異を唱え、独自で捜査を開始します。早速彼女の出演していた劇場やテレビ局などに身元の確認を取るのですが、数多くの舞台や番組などを年がら年中やっている彼らには、たかだか何作品か出たくらいの女優のことなんて誰も気に留めていない感じでした。むしろ彼女の出演していたと思われる映画も、新しいものに置き換わって既になくなっている始末。最後の手段として、ニュースで女優について知っている人を公に探しますが……?

日本社会の孤独さ、物悲しさが書かれている気がして、心に感じるものがありました。

最後に皆さんに向けてクイズを出したいと思います。

『なぞの青年』と呼ばれる作品からです。団地の子供達が、公園などが潰されていって、遊び場がなくなっていると嘆いていました。そこに謎の青年が現れ、子供たちのために、お金を出して公園を造ります。そうして青年は子供たちに感謝されることになります。他にも老後の楽しみがないと嘆いている老人のため旅行ツアーを提供したりと、無尽蔵のお金を使って人々を救済していく青年。

果たして、このお金は、どこから出ていたのでしょうか?

それが詳しく知りたい方は、是非とも読んでいただくことをお勧めします。
星新一の単純ながらも意味が深い作品が数多く収録されていると思います。

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