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「ロックダウン中は閉店します」の貼り紙をしたカフェや床屋

シドニーのロックダウンが始まって約2ヶ月。許可された5キロ圏内での運動のために小さな町を通過すると、営業を縮小、または一時的に閉店している店舗が目に付いた。小規模な商店街だから、「貸店舗」の看板が以前より増えたこともすぐわかる。

「We will be back when lockdown is over(ロックダウンが終わったら再開します)」

「Temporary closed(一時閉店)」

「Takeaway only(持ち帰りのみ)」

店先のガラスにはそんな貼り紙が並ぶ。電灯の消えた暗い店内には、ロックダウン前なら忙しく動き回っていたはずのたくさんのスタッフの姿はもちろんない。

営業できるのは「エッセンシャル」の分野だけ

シドニーでは今、生活にどうしても必要な「エッセンシャル」と呼ばれる分野のビジネスだけが、公式に営業を許可されている。一般市民がよく利用するところでは、医療機関、郵便局、食品店、ドラッグストアなどがエッセンシャルにあたる。

少し前まではOKだった園芸用品店、工具店なども今は営業縮小の決まりとなり、修理業者などを除いてはネットショッピングまたはオンラインオーダーで商品を店頭受け取りしないといけなくなった。店内の滞在時間を短くすることで、新型コロナウイルスの感染率を少しでも下げる狙いだろう。

本屋も店頭受け取りのみの営業をしているのを見かけた。図書館も閉鎖されている。

衣料品店、床屋や美容院、美容サービス店は、エッセンシャルではないとされ、閉店中。冒頭の写真は、床屋の貼り紙だ。

ヘアカットもカラーも、今や自宅でやってしまうか、ロックダウンが緩和なり解除なりされるのを待つしかない。子供の散髪や自分の白髪染めをした、という報告はシドニーの友人知人のSNS投稿で頻繁に目にするようになった。

持ち帰り営業で飲食店はどこまで生き残るか

カフェやレストランなどの外食産業は、「持ち帰りのみ」の営業を許可されている。

オーストラリアではカフェでコーヒーを買うことがかなり一般的で、以前は朝にカフェラテとサンドイッチを手に出勤する人たちの姿は町の風景の一部だった。日本でコンビニや自動販売機で飲み物や食事を気軽に買う感覚に近いと思う。昼食や夕食に、持ち帰りや配達サービスを利用することも多い。

そんなわけで持ち帰り営業は許可されているため、多くの飲食店は店内飲食なしの営業を続けている。

もともと持ち帰り専門だった店はともかく、飲み物より単価の高い食事で稼いでいたカフェなどは、大きな打撃を受けているだろう。ウォーキングついでにコーヒーを買って帰ることはしても、以前なら店内で食べていたフレンチトーストを持ち帰るためにオーダーする人は多くなさそうだ。

加えて、町を歩く人の数は少ない。オーストラリアのカフェ文化は、飲食だけでなく、それに伴うおしゃべりや寛ぎの時間がセットで成立するものということもあって、それがない今、飲食店の客足はかなり少なくなっていると思う。

諦めて「一時閉店」を選ぶカフェも

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一部の飲食店は、持ち帰り営業でなく、一時閉店を選択している。いつも賑わっていたカフェも、よくお年寄りが休憩しながらランチを食べていたケバブ屋も、「Closed」の札をガラス戸に下げていた。そのまま永久に閉店、ということにならないといいのだが。

「従業員とお客様の健康と安全に配慮し、しばらくの間、閉店します」

カフェの貼り紙には、そう書かれていた。この異様なパンデミックの状況下に私たちは共にあります、またお会いするのを楽しみにしています、とメッセージは結ばれていた。

州政府が出す感染スポットリストには載っていない店なので、自発的に閉店していることになる。赤字を出しながら感染リスクに晒されて営業を続けるより、賢い選択ともいえるだろう。幸い、収入が減った個人だけでなく、スモールビジネスにも政府から補助金が出る。

僕自身、感染リスクを少しでも下げるべく、持ち帰りの飲食を全くしなくなった。淹れたてのコーヒーも買わない。空気感染が当たり前になった今、人に近づく機会や人がいた場所へ行く機会を減らす以上の安全策はない。

そこのカフェのコーヒーは美味しい、あのバリスタは良い腕をしている、新しくできたあの店のコーヒーはどうだ、などと会話していたことが随分と昔のことに思えてしまう。

シドニーでもワクチン接種の普及率が少しずつ上がってきたことで、遠からずロックダウンの緩和に向かうのだろうか。もしそうだとしても、文化としてのカフェを安心して楽しむことができるのは、もっと先のことかもしれない。

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