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アレルギー持ちだけど新型コロナワクチンを打つことにした

ファイザー社製のCOVID-19ワクチンをシドニーの会場で接種した。1回目だったせいか無いに等しい副反応だった。アレルギー持ちの僕がワクチン接種を決めるまでの経緯などを、パンデミックの時代の覚え書きとして記録しておこうと思う。

ワクチンには賛成だが慎重だった

2020年に世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから、ワクチンが開発され、実用化されるまでのプロセスは、他の感染症のワクチンよりずっと短い期間で行われたと思う。

mRNAという新しい仕組みを使ったワクチンが人体に与える長期的影響の有無も、ワクチンの有効性の高さも不透明なまま、「ウイルスとワクチンとどちらのリスクを取るべきか」と悩んだのは僕だけではなかったはずだ。

事実、2021年前半にオーストラリアにいる友人や仕事仲間ともかなり突っ込んで話をして、多かれ少なかれワクチンへの不安を共有した。ワクチンの存在そのものに反対の人もいたが、話してみた肌感覚として多かったのは「ワクチンには賛成、でも今はまだ受けたくない」という意見。僕自身も完全に同意見だった。この時点では、まだ各社のCOVID-19ワクチンについてわからないことが多すぎた。

ワクチンのリスクが明らかになってきた

ワクチン接種後に死亡、という事実は世界中で報告され、あたかも多数が死亡しているようにも感じられた。しかし実際の分母は数百万人だということも次第にわかって、同時に、一部のワクチンによる血栓症のリスクなども明らかになってきた。

何がなんでも反対、ではない以上、明らかにされたリスクについては、ある程度避けようがあると考えた。オーストラリアでは、アストラゼネカ社製のワクチンは若年層に血栓症を起こす危険があるとして、当初、60歳以上が対象になった(後に対象年齢層を拡大)。

既往症やアレルギーなどがある人のほうがワクチンのリスクがやや高いということも、ニュースで見かけるようになった。もちろん、その他の人はリスクがゼロということではない。それでも、ワクチンで死亡する確率は事故や他の病気ので死亡する確率とさほど違いがないこともわかってきた。

こうした情報を踏まえて、2021年半ばにかけて次第に、僕のワクチン接種への懸念は少しずつ減っていった。とはいえ、シドニーでデルタ株が猛威をふるい始めた6月末にはまだ、「どうにか打たずに済ませたい」と考えていた。

アレルギーとワクチンと新型コロナウイルス

懸念材料の一つは、僕がアレルギー持ちであることだった。ひどい花粉症程度のもので、アナフィラキシーショックまでは起こしたことがないものの、それでも自分の体がワクチンにどう反応するかはわからない。完全なる健康体の人と比べたら、リスクは多少なりとも高いはずだ。

ワクチンについて話した友人の中にも、アレルギー性の喘息持ちの人が複数いて、彼らもワクチンにはかなり慎重な姿勢を見せていた。もっと多くのレポートが出るのを待ちたい、と。僕も心から同意した。

呼吸器系に関連したアレルギーがあることは、ワクチンだけでなく新型コロナそのものに対してもリスクが高いだろうと僕は考えている。ワクチンのアナフィラキシーを恐れて接種拒否をした結果、コロナで死に至った、では話にならない。では、家から出ずにコロナに感染しなければいい。とはいえ、自分はそれが可能でも家族がウイルスを持ち帰ってきてしまうかもしれない。でも、だからといって、もしワクチンでアナフィラキシーショックを起こしたら?

そんなことを繰り返し考えているうち、6月末、シドニーで急速に感染が広まり始め、あっという間にロックダウンが決定された。

デルタ株が状況を大きく変えた

シドニーのロックダウンの要因となった感染状況をみると、デルタ株が主であるようだった。それまでと比べて、圧倒的に感染拡大のスピードが速い。ロックダウンで人流を抑えているというのに、じわりじわりと日々の新規感染者数が増えていく。2ヶ月強で、1日の感染件数は1000人を超えた。減る兆しはない。

デルタ株は1人から5〜9人に感染を広げるという感染力の強さで、それまでの変異種とは全く別物だということが感染症の素人の僕にもわかる。飛沫感染ではなく空気感染が可能な点も、それを裏打ちしているように感じた。まだデルタ株がなかった昨年のロックダウンでは、人流を抑えることでウイルスも抑え込むことに成功したが、今度は違う。

既存のワクチンはアルファ株やベータ株を対象に開発されたものだから、デルタ株に対しては効力がやや弱いといわれている。それでも、接種の有無は感染率と重症化率に影響し、接種したほうがだいぶマシと思える数字が出ていた。

今は辛うじてコントロールされているシドニーの医療体制も近く崩壊に近づき、病院は満床になるだろう。その時に、感染しても適切な医療が受けられる保証はないし、病床を圧迫する重症者にもなるべきではない。ましてアレルギー持ちの僕は重症化するリスクがある。

ワクチンとウイルスを天秤にかけて、ウイルスのリスクがより重さを増したということだ。自分の感情や意見だけでなく、社会の状況を判断材料に加えるなら、ワクチン接種を先延ばしできるのもここまで、と僕は接種を決めた。もちろん、2021年初頭と比べて、ワクチンに関する情報が各国から出揃ってきた感があることも、僕の判断を後押しした。

シドニーで体験したワクチンの予約や接種、副反応についても、次の投稿で書きたいと思います。

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