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起業するときは、会社と個人事業主のどちらが有利?

起業するには、会社をつくる必要はない

事業を始める時に、会社を設立する必要がある、と思っている方が、ときどきいらっしゃいます。
そのようなことはなく、会社を設立せず事業を始めることは、全く問題ありません。(一般的に「個人事業主」になる、といいます)

ちなみに、最近は副業の解禁が話題になっていますが、副業であっても、会社を辞めて起業することであっても、「事業を行う」という意味で、本質的には同じ行為です。(税金や社会保険などの観点で異なる区別にされる場合はありますが)
こういったことからも、事業を始めるには、会社を作る必要はないことがわかるかとおもいます。

なお、「会社」というと、「株式会社」をイメージするかと思いますが、他にもいくつか種類があります。また、会社以外にも事業を行う主体として設立できる団体があり、それらを総称して「法人」と呼びます。

法人の種類を覚える必要はありませんが、行う事業の種類や、将来的にどういった事業展開をイメージしているかに応じて、適切な法人の種類を選ぶ方ことが望ましいです。なぜならば、法人の設立にはそれなりに手続や費用が必要で、かつ、別の種類の法人に変更しようとすると、これもまたかなり大変な手続が必要になる場合が多いからです。
どういった法人を設立するのが迷う場合は、専門家に相談するなど、慎重に行うことをおススメします。

なお、以下では「会社」を前提として説明をします。

「会社」を選ぶメリット

(1)信用力が向上する
会社を設立すると、個人事業主と比較して、対外的に良いイメージを与えることができる場合が多いです。
例えば、取引先、従業員の採用、銀行、補助金などの場合で、有利になる可能性が高いです。
また、株式会社の場合は「資本金」(事業に充てるために拠出するお金)も必要になります。資本金は1円でも問題ないのですが、その金額は第三者も知ることができるので、ある程度まとまった金額にする場合が多いです。
資本金が多ければ、それだけ本気で事業を行っているイメージを与えることができるかもしれません。

なお、許認可が必要な事業や、自治体や大手企業と取引をする場合などで、法人であることが必要になる場合があります。それらに該当するときは、会社(または適切な法人)で事業を始める必要があるでしょう。

(2)規模を拡大しやすい
自分以外の人も巻き込んで事業を行う予定の場合は、会社(特に「株式会社」)の方が適している可能性が高いです。具体的には、
・誰かと共同して事業を始める
・第三者からも、お金を出資してもらう
などの場合です。

会社を選ぶデメリット

(1)費用がかかる
個人事業主では発生しないが、会社だと発生する費用があります。
①税理士費用
会社は、年1度決算という作業を行い、年度の売上や利益を計算して、税務署に法人税を申告する必要があります。
この「法人税申告書の作成」という作業は、非常に専門性が高く、知識がない人が行うことは非常に困難です。

この「法人税申告書」にあたるのは、個人事業主の場合は、「確定申告」というものです。こちらは聞いたことがある方が多いかと思います。年1度、2~3月に提出します。

「確定申告」の場合は、難しくないとは言いませんが、特に小規模で事業を行っている方は、税理士に委託することなく自分で完結されている方も相当数いらっしゃいます。また、税務署や商工会議所の行っている相談会などを利用することもできます。

一方で、会社にする場合は、税理士に委託する費用が発生することは避けられません。
また、一般的な税理士事務所の場合、個人よりも法人の方が費用が高くなります。それだけ、法人税の申告書を作成する作業が大変だ、ということですね。税理士への費用は、申告書の作成だけを年1度だけ委託する場合であっても、10万円程度は見ておく必要があります。

②法人住民税均等割
聞いたことが無い方がほとんどかと思います。私たち個人は、住んでいる自治体に住民税を納めていますが、その法人バージョンです。(「法人住民税」といいます)
法人住民税は、利益の額に応じて納める部分と、利益に関わらず発生する部分(これを均等割といいます)があります。この金額は、年間7万円程度となります。

③設立費用
法人を作るには、いろいろな書類を作成して「登記」という作業を行う必要があります。登記には、登録免許税という税金が発生し、法人の種類や規模によって異なりますが、概ね6万円~15万円が必要になります。

また、設立に必要な書類作成は、知識が無い方が行うのは、かなり難しいと言えます。
自分でやる以外の方法では、司法書士という専門家に委託する必要があります。
司法書士に委託する費用は、7万円前後が相場です。

しかしながら、マネーフォワードfreeeでは、設立登記を委託することができ、利用料は無料です。(登録免許税などの実費は必要になりますが、司法書士への委託費用は0円です。また、電子設立によるメリットも受けることができます)
サービスへの囲い込みとして運営会社が行っている先行投資です。積極的に検討する価値があるかと思います。

(2)社会保険の加入義務がある
法人の場合、フルタイムの従業員を1名でも採用した場合、必ず社会保険(健康保険・厚生年金)に加入させる必要があります。(個人事業主の場合は5名未満ならば任意)
社会保険料は、会社と従業員が折半することになっているので、その分の費用が発生しますし、社会保険に関連する事務手続きも煩雑です。

結論

個人的な意見としては、起業する最初の段階では、「個人事業主」のほうがよいかと思います。(会社にするべき理由があれば別です)
理由としては、上記のデメリットが大きいこともありますが、何より、「スモールスタート」が原則だからです。
なるべく費用をかけず、とりあえずスピーディに始めてみる。ダメなら方向転換をしたり、最悪辞めればよいわけですが、そういった意味でも、かける費用は少ない方が有利です。

事業が軌道に乗れば、その時に会社を設立すればよいわけです。(これを「法人成り」といいます)
一方で、会社を作って事業を始めてしまうと、それを廃止して個人事業主に戻すのはなかなか骨が折れますし、支払った設立費用が戻ってくるわけでもありません。

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