レスキュー
※本文中に昆虫の写真が出てきます。記事の閲覧には、ご注意ください。
夏と言えば、私には、毎年の恒例行事がある。その名は、セミレスキューという。
セミは、長い幼虫生活を終えて地上に出てくる。そして、羽化するのに適切な木を選びそこに登って成虫となる。
その、地上に出てきてから、木を選ぶまでに、不幸にして歩道に落ちてしまい、木に辿り着けず、さまよい歩いている幼虫がいるのだ。
そのまんま放置していると、地面でやむなく羽化し。そうなると羽が曲がってしまい、広がらず、やむを得ず鳥かありのエサになってしまう。
そのセミを、迷えるセミを、せめて木に止まらせる処までして手助けするというのが、私のセミレスキューである。
なんのはなしです課。
今年は、いつもの通勤路で大きな改修工事をやっていて。木もたくさん掘り起こされて無くなったので、セミレスキューができないだろうと思っていた。
ところが、7月の下旬の土曜日、夜遅くなってから家内と買い物の帰りに歩いていると、トボトボ歩道を歩いている、迷えるセミの幼虫に出くわしたのだ。
私は、すぐさまセミレスキューにかかった。
すると、家内が言うのである。
「え?木に止まらせるの?家に連れて行かないの?」
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
えっ?さっちゃん(注)1がそんなことを言うなんて、珍しいな。
やむなく家に連れて帰り、ベランダに出て、ベランダ側から網戸に止まらせた。
セミの羽化は、結構微妙なところがある。
網目がセミの幼虫にとっては大きすぎるので、うまくハマらず、羽化できない可能性があるのだ。
特に我が家の近くは、90%がアブラゼミ。アブラゼミの幼虫は、結構小さい。
私の経験値として、網戸に止まらせて羽化させた場合、きちんと羽化する確立は、80%強といったところだと思われる。
そのことを家内に説明すると、家内は、ちょっと寂しそうな顔をした。
「網戸がダメなら、何がいいの?準備しようか?」
家内がそこまで言うのは、凄く珍しい。
とりあえず、網戸の羽化にかけてみることにした。
すると、深夜、見事に羽化しようと殻を破ったセミがいるではないか!
早朝には、セミは恐らく無事に飛び立ち。空蝉だけが残されていた。
あの日のそんなこんなを家内に語ろうとしてソファーをみると、家内が脚を指さして笑って言った。
コジくん、ちゃんとセミレスキュー、出来たね。
私は、倍返しの自主トレ(注)を自ら申し出た。
マッサージをすると、家内は上機嫌である。
家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。
(注2)自ら申し出てマッサージをすることを、私は、勝手に「自主トレ」と呼んでいる。率先垂範、である。
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