だいたい
家内は、かなり大雑把な性格なのである。だが、そういう人ほど、こだわりは、ある。
家内のこだわりポイントは、ポイ活と、クーポンと節約である。ここに反することは、家内は、受け入れがたいのである。
結婚当初、かなり驚いたことがいくつもある。
そのうちのひとつは、布団の模様である。大雑把なのにも関わらず、上と下が判別できる布団の模様だけは、頭のほうが上、足が下にならないと、叱られるのである。模様は、機能には関係しない。そんなことを言ったところで、家内には許してもらえなかった。
だが、このこだわり、今ではどうでも良いらしく。自ら反対に布団をかぶり、堂々と口を開けて昼寝をしている図を見れば、人は、堕落するのは早いものだとつくづく感じさせられる。
だが思うに。結婚とは、所詮は、価値観の違うもの同士の共同生活で。お互いの価値観を認め、尊重し合い、人として成長するための長い訓練の期間なのだと、この歳になって、少しだけ分かってきたように思う。
家内は家内で、私のような変わり者と一緒に暮らし、我慢の連続で。私も、多少なりとも、家内の価値観を受け入れてきて、お互いに少しは成長してきたのだと、褒めてあげたくなる。
さて、話は変わって。家内が、こういうものを、プロジェクトの関係者から、もらってきた。
どうせならば使いたいと、我が家に持ち帰ってきたのだ。
1リットルの水に溶かすタイプの、粉末のパックである。そして、こう、言った。
これ、持って帰ってきたけれど、使い道がないなら、有難うとさようならを言おう(注1)か。
家内が言うに、1リットルちょうどの入れ物がないから、使えないのではないか、というのである。
私は、すぐ手元にあったペットボトルに目をやった。
ここに、あるよ。
家内に見せると、家内が返した。
これ、900だよ。
私は、なるほどと返したが、同時に、こう、言った。
我が家の普通のペットボトルは、2リットル。厳密にではなくとも、その半分の水に、一袋入れれば、問題無いよね。
すると家内は、ほんの一瞬、考えた素振りを見せた。
ふーん。そういう考え方も、ありと言えばありだね。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
大雑把な性格なのに、意外に、他人から言われたことは細かく守ろうとするんだよな。
コジの言ったことは、右から左なのに。
家内が、少し怪訝な顔をしたので、リトルと私は、すぐさま通信を遮断した。
やはり、家内は、心の中のやりとりを傍受する術を身につけているようだ。危ない、危ない……。
家内は、プロジェクトが一段落して、通常勤務に戻り、普通に通勤し、帰宅している。
また、夏から、新たなプロジェクトが発動するようで、秋には、また、ホテルに泊まり込みになるようである。
今の期間は、束の間の、休息のようなものである。
家内は、今、残務整理を持ち帰り仕事で、していて。今のところ、マッサージの要望は、出て来ていない。
そろそろ、自主トレ(注2)を申し出る時期なのかも知れない。
マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は、平和で明るくなる。
だから。
これでいいのだ。
(注1)我が家では、モノを大切にする観点から、丁重にモノを廃棄する際には、心から感謝をし、有難う、さようならと言って、お別れをするのである。
(注2)私は、家内のマッサージを、よくする。家内に促されずに、自らの申し出で家内のマッサージをすることを、自主トレと、勝手に呼んでいる。
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