見出し画像

ボーイフレンド

次女は、大学生だ。そして、運動部に属している。アルバイトも少ししているが、部活動が中心なので、暇な時間は、そうそう、無い。

ところが、大学生は、自由なものだ。オフの日は、仲間たちと連れだって、遊びに行くことを最優先する。普段は、起きることがなかなかできないクセに、オフの日は、必要ならば早朝からでも起床し、出掛けてゆく。

真面目なアスリートは、オフは、身体を休めることを優先するだろう。そして次には、身体のケアであろう。だが、意識の中途半端な、大学生アスリートは、なかなかそうは、いかないもののようだ。


ある頃から、ひょっとしたら、次女にボーイフレンドがいるかも知れないと、我が家で話題になった。小学校の低学年から、運動一筋できた次女だ。高校の時には、厳しく管理された寮生活を送っていた。そんな次女に、ボーイフレンドができるなんて、私には、にわかには信じられなかった。

ところが、長女と家内が言うのである。証拠を見つけたのだと。

次女は、整理整頓は、まずまず、やる。我が家で一番やるといっても良い。だから、身の回りが散らかりすぎることは、無い。ただ、開けっぴろげで無頓着なところがある。机の上に、ボーイフレンドからのラブレターが、放置してあったと言うのである。

さすがに、現物は、私は、見せてもらってはいない。長女が次女に、

そういうのは、普通、隠しておくものだよ。

と、諭して片付けさせたらしい。だが、なぜか、家内は、その内容を知っていた。


去年、そういうことがあって、薄々は、知っていたのだが、家内は、どういうボーイフレンドかを知りたがり、次女に根掘り葉掘り聞き出したあげく、会わせろということになり、今年の、緊急事態宣言が開けてしばらくしたくらいから、何度か食事を一緒にした。

そして最近は、我が家に頻繁に呼ぶようになってきた。彼氏の狭い下宿にいるよりは、我が家に来てもらった方が、家内は安心だし、食事もきちんと食べられるし、それは、次女もボーイフレンドも、健康面でもお小遣いの面でも助かるし、というようなことを、家内は計算してのことのようである。

つまり家内は、懐柔策を駆使して、普通は、こそこそして秘密に築いていくような恋愛関係を、こちらには情報が透明な状態で、2人を付き合わせようとしているようだ。

家内は、よく、次女に言っていた。

ウソついて、ボーイフレンドのところに行ったりは、しないでね。

次女は、部の先輩から可愛がられていて、よく、先輩の下宿先に泊まっていた。その先輩とバイトが同じで、しかも1年生の時代は、部での下働き仕事も多い。さらに、学校や試合会場から近かったので、帰りが遅くなるときは、安全を考えても、そうしていたし、誰かの誕生日だと言えば、仲間内で集まってイベントをしたりして、先輩や同期のところに泊まりに行くことも多かったのである。

無論、所属する部は、女子部であり、泊まりに行くところは、その部の先輩や同期のところ、の、はずだった。


今年は、緊急事態宣言が出てから、すべてが変わってきた。部活動もままならなくなり、授業はすべてがオンライン授業となった。ステイホームが続き、家から出ない時期が長かった。バイト先も廃業してしまい、新たなバイトを探し、部活動が徐々に復活してきた後も、リーグ戦などの大会も、すべてが中止になった。そんな中、遊びも、何もかも、できなくなった時期があった。

そういう流れの中で、少しは回復している面があるものの、次女の生活も、大学生活も、部活動も、すべてが、イレギュラーの中で、進行している。

そして、家内の、ボーイフレンド、我が家に引き入れ策である。


この策は、今のところ功を奏し、最近、ボーイフレンドが我が家に遊びに来ることが、増えてきている。

そしてこのことが、また、ちょっと面白いことを、いろいろ、連れてくるのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?