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廃棄

先週、仕事で、倉庫に廃棄作業に行った。半年に一度、営業用のデモ機材を倉庫で廃棄するのである。今回は、大物の機材40台ばかりを、精鋭のデストロイヤーズ5名で廃棄していくことになっていた。

朝から作業をし始め、昼前頃に、その、自体が発生した。

ビリッ!!!

突然、私のズボンのお尻の辺りから、布がさける音がした。

うわっ!

驚いてすぐに立ち上がって、お尻の辺りに手をやると、ちょっとした穴が開いていた。

廃棄作業というと、そこそこの重量物を持ち上げて定位置に運ぶ。そして、いざ廃棄となったら、機材を地面に置いてハンマーを振り上げ、破壊行為に及ぶのだ。その間、立ったり座ったりを繰り返す。少し前から、そのチノパンがちょっときつくなってきたとは、思っていたのだ。それがとうとう、いってしまうとは……。

明らかにこれは、この春からの、世間の自粛傾向による体重の増加が原因の事故である。

周りの同僚のデストロイヤーズ・ブルーに、すぐにわかる?と聞いてみたところ、

今日のパンツは赤い事は、すぐに分かるよ。

と、親切に教えてくれた。確かに今日は、大切な機材に、ありがとうを告げる特別な日なので、せめて心を明るくしようと、わざわざ赤いトランクスを履いてきたのだ。それが、明らかに裏目に出た。目立ってしまう。

しかしこの時点で、私の心の中の何かが大きく吹っ切れた。私は、いつになくデストロイヤーズを指揮し、さらに廃棄作業のペースを上げ、仕事をはかどらせていく。すると、また、

ビリリッ!!

今度は派手にやったな。

私が聞くまでも無く、同僚のデストロイヤーズ・イエローが、

さっきよりも派手に赤色が見えてきたよ。

これまた、親切に教えてくれた。

一日作業を敢行して、ビリリッ!!と言った回数は、恐らく10回くらいだと思う。作業が終わり、帰宅する頃には、すっかりそれと確認できるほどに穴が大きくなっていた。

倉庫というのは、少し街の中心から離れた地域に存在している。そして、私は、結構な田舎に住んでいる。帰宅するのに、1時間45分以上は、かかる。

倉庫を、少し街早めの就業時間に出た。そして、何の遠慮も無く普通に歩き、電車に乗り、1時間30分以上かけて自宅の最寄り駅に着いた。

そこからまっすぐにユニクロに寄り道して、新しいチノパンを2本購入し、店で即座に履き替えた。


その日は営業用デモ機の廃棄をしに出掛けた。だが、思いもよらず、自分のズボンを廃棄してしまった。つくづく余計なことをしてしまったと反省しながら残りわずかな帰路についた。

そして思った。私は、位置づけとしては、デストロイヤーズ・グリーンくらいかと勝手に思っていたが、実は、デストロイヤーズ・レッドだったなぁと。


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