見出し画像

個別株投資の難しさ

インデックス投資ではなく、より大きな利益を求めて個別株投資をするというのも戦略としてあるのだろうが、個人的には難易度が高く手法としての優位性はないと考えている。
……というのも、個別株投資での資産形成には越えなければならない高いハードルが少なくとも3つあるからだ。


第一に、銘柄選定がある。指数以上に爆上げする銘柄にだけ投資できればよいのだが、それができれば苦労はしない。
銘柄選定には手間や時間がかかるというのもあるし、何よりそんなに都合よく爆益銘柄を選び続けられるという想定は厳しくないか。自分はそれができると思い込めるほど自惚れていない。

比較対象が預金とかならまだ個別株投資で銘柄選定をするだけの価値があると思うが、比較対象がインデックス投資となるとそっちでいい、むしろそっちがいいと思ってしまう。市場平均強すぎ。

第二に、リスク許容度との兼ね合いがある。
とりあえず現物取引を前提として、現金比率(資産のうちどれくらいを個別株投資に回すか)や銘柄間の比率(個別株投資に回すお金で何銘柄をどれくらいずつ買うか)をどうするのかという。

テンバガーなど、数年程度のインデックス投資では達成し難い爆上げが個別株投資の魅力の1つかもしれないが、当然の事実として、◯倍銘柄で資産を◯倍にするにはその銘柄に資産の全てをぶち込まなければならない。

例えば、個別株に資産全部はまずいということで資産の50%で個別株投資をした場合、投資した銘柄が2倍になったとしても資産全体では1.5倍にしかならない。
また、資産の100%を個別株投資に回すが1銘柄はまずいということで5銘柄に資産の20%ずつを入れたとして、そのうち1つが2倍になったところで資産全体としては1.2倍にしかならない。

では単一銘柄への集中投資がいいのかというと、たぶんそれは違う。どんな優良(に見える)企業であろうと、単なる一企業である以上、業績以外でも不祥事や事件等であっけなく時価総額が吹っ飛び得るリスクからは逃れようがない。どれだけ株価の調子がよくても、単一銘柄への集中投資ではそんなリスクを常に抱え続けることとなる。
それぞれの価値判断によるだろうが、自分としてはそのリスクの取り方はまずいだろと思ってしまう。やったことあるから分かる。

そしてそのリスクを軽減したいのなら、現金比率を上げたり複数銘柄に分散して投資したりといった対策を取ることとなるが、前述のとおり「ある銘柄」が爆上げした時の資産増加は集中投資よりも劣ってしまう。
これらの対策は、結果論的な最適解を捨てて期待値的な最適解を求めるものだと思われる。結果論的な最適解は、現金比率なら0か100しかないし、銘柄間の比率なら上昇率が一番高い銘柄のみに100(≒分散しない)しかない。
それでも対策するのは、資産全体としてのリスクを下げるため、期待されるリターンの中央値を上げるためだろう。

リスクを抑えようとしたら個別株の爆発力も控えめになってしまう。現金比率を上げるほど、銘柄数を増やすほど資産全体での爆上げは難しくなるし、そもそもの銘柄選定の手間も増え難易度も上がる。それぞれどれくらいずつ買うかという判断も難しい(「それ」の最適解がインデックス投資みたいなところがある)。
結局超特大のリスクを取らないとインデックス投資を超えるリターンは見込みづらい。

「リスクが大きいからと金額を抑えたり銘柄を分散させたりして個別株投資をするくらいなら、いっそのことインデックス投資で1つの投資信託・ETF(自分の場合はオルカン)に資産の(ほぼ)100%をぶち込めばいい」というのが自分のスタンス、リスクの取り方だ。
手間はほぼかからないし、資産のほぼ100%であるため上昇率は個別株より低くとも利益の額としてはそれなりに出る。そして一企業の問題で資産の大半が吹っ飛ぶようなリスクは取らずに済んでいる。

第三に、売買のタイミングがある。特に、利確や損切りなどクローズのタイミングが分からない。自分はこれが個別株投資の最難関のハードルだと考えている。

その銘柄がどこまで上がるかなんて分かりっこない。2倍まで行くのか、5倍まで行くのか、10倍まで行くのか、あるいは10倍よりもさらに上がるのか……。上限付近で値動きが安定してくれればいいのだが、なかなかそうもいかないし下がったきり二度と高値に戻らなかったり(下手したら元の株価に戻ったりも)するから困る。
これは下落時にも同じようなことが言える。どこまで下がってどのくらい反発するのかしないのかなんて分かりっこない。

テンバガー銘柄を選べたとして、リスクを取りまくってその1銘柄に資産の全てをぶち込めていたとして、果たしてテンバガーまで保有していられるか?テンバガーのところで利確できるか?
10倍まで上がった後下がって安定するような場合だったとして、2倍になっても売らず、5倍になっても売らず、10倍になったところで売る(それ以上は引っ張らない)……これが本当に難しすぎる。そしてその判断を外してしまったら(ともすれば外さなくても)インデックス投資に劣後する。

分割しての利確・損切りは最終的な着地点の予測が合っている前提の行為であり、本質的な解答になっていない。テンバガー銘柄をダブルバガー銘柄と見誤って「1.3倍-1.5倍-2倍」に分割して利確してしまったり、ダブルバガー銘柄をテンバガー銘柄と見誤って全く利確しなかったり……。

ある株価水準の銘柄を売るべきなのか売るべきでないのかは結果論としてしか知り得ない。いや、上場廃止にでもならない限り最終的な「結果」は一生確定しないとも言える。

個別の判断が必要な中利確したくなる気持ちや損切りしたくない気持ちをどれだけ制御できるかも微妙だし、適切なタイミングでの利確・損切りが必要な時点ですごく不利な気がする
まあ「利確も損切りもしない」という判断もあるのだろうが、個別株投資でそれをやるのはどうなんだろう……。前述のとおり個別株であるが故のリスクがあり、個人的にはどんな個別株も永続保有には適さないとすら思う。

※なお、配当狙いの銘柄なら大丈夫ということでもない。業績の悪化や減配の際にどうするか。配当n年分くらい株価が上がった際にどうするか。配当狙いであっても個別株投資である以上はそのような難しい判断を迫られ、やはりその判断を外してしまったら(あるいは外さなくても)インデックス投資に劣後する。

そのため自分はインデックス投資で天井や底を判断しての利確・損切りは一切せず、お金が必要な時に必要な分だけ売って(利確して)いる。


自分は、ここまでに挙げたハードルを全て乗り越えて個別株投資で資産を築くことができる気がしない。やってみたことはあるがその時はダメだった。

インデックス投資であれば個別株の銘柄選定も銘柄間の比率も利確や損切りのタイミングも気にしなくてよい。自分の場合資産のほぼ100%がオルカンなのでリバランスもクソもなくお金が必要な時以外はただ買うだけ。全世界株か米国株かなどの議論はあるだろうが、投資先の指数などを決めてしまえば個別銘柄の選定や割合は基本的に自動かつ機械的に行われる。基本的に。

概して、結果を大きく左右する選択の回数をインデックス投資なら限界まで減らすことができる。余計な判断をなくし思考停止していられる。
まあその思考停止が人によっては難しいというのはあるが(個別株投資の難しさに比べたら些細なことだとは思う)。別の指数、特定の銘柄、別の資産クラス・投資対象などがその時その時で魅力的に見え、「その都度、常にオルカン(自分の場合)を選択し続ける」必要があるとも言えるかもしれない。

個別株投資は非常に難しい。
もちろんインデックス投資でも必ずお金が増えるわけではないが、リスクとリターン、難易度などを考慮すると、我々一般人にとってはやはりインデックス投資が最適だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?