岩﨑尚人 / Naoto Iwasaki

成城大学大学院教授。博士(経営学)。専門分野は,経営学,経営戦略論,経営組織論,国際経…

岩﨑尚人 / Naoto Iwasaki

成城大学大学院教授。博士(経営学)。専門分野は,経営学,経営戦略論,経営組織論,国際経営論。 ナレッジ・リンク代表取締役,ナレッジ・ビジネス・ラボ(KBL)代表。

最近の記事

コーポレートデザイン再設計のエッセンス④

Ⅳ.むすびにかえて 小生の敬愛する研究熱心な同僚が,スタンフォード大学オライリー教授とハーバード・ビジネススクールのタッシュマン教授による『両利きの経営』という書籍が大きな関心を集め,それを巡ってさまざまに研究が広がっていると解説してくれた。それを聞き込んだ小生は,あざとく本稿の執筆を決めた。その流行に乗って,これまで講演会や企業研修などで自身が主張してきたことを再検討してみようという魂胆である。  関心を集めている著作の初刊は2016年であり,翻訳されて日本語版が刊行された

    • コーポレートデザイン再設計のエッセンス③

      Ⅲ.コーポレートデザインの再設計とは 長々と論じてきたが,これまでの議論を整理して考えると,は極めてシンプルである。要するに,企業の内部システムが相互作用する外部環境と,事業構造,組織管理体制,組織風土や文化,企業統治構造などから構成される企業の内部システムとが矛盾することなく適合する全体構造をつくることである。そのためには,外部環境を変えるか,あるいは内部システムを変革するか,さもなければ両者を変化させるかを選択することになる。もっとも,コーポレートデザインを再設計するため

      • コーポレートデザイン再設計のエッセンス②

        Ⅱ.コーポレートデザインの基本概念 経営環境激変の中でビジネス転換を企図する企業が最初に考慮すべきは,経営環境の何が,どのように変わっているのかを明らかにすることである。そして,それが当該企業にとって,どういった影響を与えるのかについて知ることである。それなくしてビジネスを闇雲に進めると,元も子もなくなってしまう。当然であるが,変化への対応は早すぎても遅すぎても成果を収めることはできない。いかに巨大な組織であっても持てる経営資源は希少であり限界があり,タイミングが重要である。

        • コーポレートデザイン再設計のエッセンス①

          Ⅰ.はじめに 2020年11月,パンデミック騒動が日々激しさを増す中で,「日経平均29年ぶりの高値」が報道された。バブル崩壊後の最高値である。米大統領選を巡る不透明感が和らぎ,世界の投資家が運用リスクを取る姿勢を強めているからだという。確かに,長らく2万円ラインを行ったり来たりして,投資家をヤキモキさせていた株価が24,3225円になり,30年前の水準に近づきつつあるというのだから,期待も高まったに違いない。12月に入って間もなく27,000円までに伸張すると,米国バイデン大

        コーポレートデザイン再設計のエッセンス④

          ニュー・ノーマル前夜の情景⑤

          5.マネジメントの変化によるビジネスの創造 これまで本稿では,自分自身が生きてきた戦後の昭和,平成,そして令和のおよそ65年間に目撃してきた。あるいは目撃してきたであろう,社会を変える変化エネルギー創出の3つの要因,すなわち「グローバリゼーションの進展」,「情報通信技術とネットワークの進化」,「自然災害とパンデミックの脅威」について概観してきた。これらは存続することを究極的目的とした「企業」の経営環境を変化させる主要な要因である(注41)。しかも,それらは将来においても変化を

          ニュー・ノーマル前夜の情景⑤

          ニュー・ノーマル前夜の情景④

          4.自然災害やパンデミックの脅威 人類史上いかなる事象よりも,「グローバリゼーションの進展」と「情報通信技術とネットワークの進化」がスピーディに進展,進化してきたことは確かであろう。しかも,これらの進展・進化は,人類にとって概ねプラスの側面が大きかったといえる。もちろん,全くマイナスの影響がなかったというつもりはないし,場合によってはそうならない方がよかったという事柄もあるかもしれない。 (1)自然災害の脅威 例えば,すでに10年の時を経ようとしている,2011年3月11日

          ニュー・ノーマル前夜の情景④

          ニュー・ノーマル前夜の情景③

          3.情報通信技術とネットワークの進化 その一方で,この30年間に世界の社会的構造変化を引き起こしたもう一つの要因は,情報通信技術(ICT)の進歩と,それに伴って高度化したさまざまな機器や情報インフラ,そしてAI(Artificial Intelligence)の登場など「情報通信技術とネットワークの進化」である。 (1)IT革命とネットバブルの崩壊 1980年代半ば以降デジタル化が急速に進む中で,半導体の高集積化によるメモリー量の増大とCPUの処理速度の高速化によって処理能

          ニュー・ノーマル前夜の情景③

          ニュー・ノーマル前夜の情景②

          2.グローバリゼーションの進展指数関数的社会変化をもたらすであろう要因の一つは,「グローバリゼーションの進展」であり,それが創出するエネルギーである。 (1)国際化の時代 企業活動をベースに考えてみると,「グローバリゼーションの進展」の最初のフェーズは,1970年代半ばに始まる「国際化の時代」である。  第一次オイルショック後,減量経営を確立して,1980年代を通じて国際的に事業を広げ世界経済をリードしてきたのは,日本の大企業であった。同時代,半導体製造ランキングのトップ1

          ニュー・ノーマル前夜の情景②

          ニュー・ノーマル前夜の情景①

          1.はじめに 2019年春,天皇の崩御を伴うことなく,元号が平成から令和に変わった。1週間を超える服喪期間とともに,昭和から平成へと移行したことを知っている世代の者にとっては,何とも厳かさの感じられない時代の転換であった。しかし,その重厚さがないことを我慢すれば2020年,令和初の年始は,「オリンピック・イヤー」と騒がれ,明るく賑やかで,順調な滑り出しであった。  ところが,アジア圏の旧正月のスタートとともに新型コロナ感染症が世界規模で広がり始めて,騒がしさだけが一層激しくな

          ニュー・ノーマル前夜の情景①