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ソーシャルリスニングから『ソーシャルインテリジェンス』へ

みなさん、こんにちは。ソーシャルリスニングBlogです。
昨年末に1年間のまとめ投稿をしたから、久しぶりの投稿です。
今さらですが、今年もよろしくお願いします。

2023年1本目の記事は、「SNSデータ分析界隈」を俯瞰して、「ソーシャルリスニング」と「ソーシャルインテリジェンス」について考えてみたいと思います。


大したことができないソーシャルリスニング?


「ソーシャルリスニング」という言葉が日本で認知されるようになってから、おそらく10年以上が経過しているのではないでしょうか。
私自身は、初期のころからこの界隈に携わっていたので、当時の事を思い出すと懐かしさでいっぱいです(笑)。

その後、長い年月を経て、ソーシャルリスニングは日本のマーケティングやリサーチ界隈で一定のポジションに落ち着いたのかなと思います。
しかし、当初は大きな期待を向けられていたソーシャルリスニングも、現時点では以下のような認識になっているのではないでしょうか。

  • 投稿数のボリュームや、その上がり下がりがグラフで見えるやつ

  • ワードクラウドという言葉が散布されるアウトプットが出るやつ

  • ポジティブとネガティブの割合がでるやつ

  • バズった投稿が分かるやつ

  • たくさん使われているハッシュタグが分かるやつ

  • フォロワーの多いインフルエンサーが分かるやつ

そして、これらのアウトプットを並べて、「さーて、ここから何が言えるのかなぁ」と腕を組んで考えるのがソーシャルリスニング。

こんな風な認識やイメージを持っている人がほとんどだと思います。
そして、現実には、投稿量のグラフやワードクラウドやポジネガグラフを眺めて、何か深い洞察を導けることは稀です。
結果、ソーシャルリスニングというのは、「炎上監視」と「SNSマーケのネタ探し」のための方法論というポジションに落ち着いていると思います。


ツール機能が、やれることのマックス最大値になってしまっている

これを別の視点でとらえ直してみると、ソーシャルリスニングというのは、ソーシャルリスニング用のツールに搭載された機能を使い、そこからアウトプットされたものを並べて、何か示唆がないかを考える、という活動になっています。

つまり、
ソーシャルリスニングの価値=ツールのアウトプット
という図式です。

逆の言い方をすると、ソーシャルリスニングを行う時の分析者のマインドは、
「このツールにはこんな機能があるんだ、じゃあ出してみよう(ポン)。フーン、で、ここから何が言えるのかな・・・?」
なんですね。

でもこれって何か変じゃないですか??

定量リサーチなどをしている時にこんな風に考えないですよね?
「この集計ツールには因子分析の機能があるんだ、じゃあ出してみよう(ポン)。フーン、ここから何が言えるのかな・・・?」
なんて風に分析プランを設計するヒト、見たことないです。

考える順番って、

  1. そもそも調査を通じて何を解明したいのか

  2. そのためには、こういうデータ(設問)を取るべきだ

  3. そして、そのデータを元にこういう集計・解析をするべきだ

ですよね?

ソーシャルリスニングってツールありきと言うか、ツールの中でしか考えなくなってしまっているというか、そのあたりが大きな課題として横たわっているなぁと思う今日この頃です。

手段と目的が逆になってしまった闇


アンケートだろうがインタビューだろうが、データ分析だろうが、全ての調査・分析活動は、ビジネスにインパクトを生むためのものですよね。
やはり、ビジネスサイドが何を求めているのか、を考えないといけない。

その意味では、上記の

  • 投稿数のボリュームや、その上がり下がり見えます!

  • ワードクラウドという言葉が散布されるアウトプットが出ます!

  • ポジティブとネガティブの割合が分かります!

  • バズった投稿が分かります!

  • たくさん使われているハッシュタグが分かります!

  • フォロワーの多いインフルエンサーが分かります!

というのは、別にビジネスサイドからしたらどうでもいいんですよね。
ソーシャルリスニングというデータ分析を通じて生み出すべきは、こういったツールから直接アウトプットされるチャートじゃない。

さっきの定量リサーチであったように、

  1. そもそもSNSデータ分析を通じて、何を得たいのか

  2. そのために、どんな種類のデータを収集するべきか

  3. そして、そのデータをどのよに分析するべきか

を考えるべきですよね。
結果的に、3の部分でツールに搭載されている機能が使えるのであれば使えばいい。でも、ツール機能はただの「手段」なので重要なのはそこじゃない。もし3の部分に必要な作業がツールでカバーできないなら、ツール外で行うべき。

そして、1の部分である「そもそもビジネスにどんな価値提供をするのか」に答えることが重要です。

この、ある意味で「目的」と「手段」がおかしくなってしまっているのが、ソーシャルリスニング界隈の大きな課題だと思います。
ツールやその機能を走らせることがある意味で「目的」化してしまっているというか・・・

結果にコミットする「ソーシャルインテリジェンス」


ここで海外に目を向けると、ソーシャルリスニングという言葉の他に「ソーシャルインテリジェンス」という言葉も使われています。

ここで、グローバルでのSNS分析界隈ポータルサイトである「SIラボ」の定義を引っ張ってみましょう。

Social Listening
There can be two definitions of social listening: A category of technology that allows users to gather and analyze social media data and other forms of digital conversations with a focus on analyzing the content of the information shared in conversation. The practice of using social media data and other digital conversations to explore how people, organizations, and other entities discuss topics, themes, or other focuses of analysis to find facts and information. The analysis is typically quantitative and KPI-focused to quantify conversation. In a technological view, social listening technologies are closely related to AI-Enabled Consumer Intelligence Technologies. To better understand the professional practice of social listening, see the term Social Intelligence.
<日本語訳 ※DeepLで日本語化→ChatGPTで自然な表現へ>
ソーシャルリスニングには、一般的に2つの定義があります。
1つは、ソーシャルメディアやその他のデジタルコミュニケーションで共有された情報を分析することに重点を置く技術のカテゴリーです。この技術を使って、人々や組織などがどのようにトピックやテーマ、またはその他の分析の焦点について話し合っているかを探り、事実や情報を見つけることができます。通常、この分析は、KPIを用いて会話を定量化することに焦点を当てています。
もう一つは、会話で共有された情報の内容を分析することに重点を置くものです。ソーシャルリスニング技術は、AI搭載のコンシューマーインテリジェンス技術と密接に関連しています。ソーシャルリスニングの専門的な実践をよりよく理解するためには、ソーシャルインテリジェンスという用語を参照するとよいでしょう。この技術を使うことで、企業や団体は、消費者の意見やニーズに関する洞察を得ることができ、マーケティング活動に役立てることができます。

https://thesilab.com/social-listening-glossary/#letterS

Social Intelligence
The professional practice of analyzing social media data and other forms of digital conversations to generate a series of insights that can help businesses understand their brand, competitors, markets, people, and society in order to make decisions. The practice encompasses a multidisciplinary approach including hard skills in data analysis, and soft skills to interpret meaning from the data.
<日本語訳>
ソーシャルメディアやその他のデジタルコミュニケーションで共有された情報を分析し、企業がブランド、競合他社、市場、人々、社会を理解し、意思決定を行うための専門的な手法があります。それが、ソーシャルインテリジェンスです。ソーシャルインテリジェンスでは、データ分析のハードスキルや、データから意味を読み取るソフトスキルなど、多岐にわたるアプローチで実施されます。この手法を用いることで、企業は顧客のニーズや要望、嗜好、トレンドなどを把握し、その情報を活用して市場戦略やプロモーション戦略を策定することができます。また、競合他社の情報や市場トレンドを分析することで、ビジネス展開の意思決定にも役立ちます。

https://thesilab.com/social-listening-glossary/#letterS

はい。
ソーシャルリスニングの後半部分はソーシャルインテリジェンスと似たような事を説明しているものの、ソーシャルリスニングとはデータを収集し、それをKPI(定量変数)を中心に解析するもので、ソーシャルインテリジェンスは定量的・定性的に分析してビジネスの意思決定に活かすもの、という違いがあると理解しました。

こういう風に見ると、一般的に使われている「ソーシャルリスニング」って言葉は、まさにツールで何かをアウトプットするところで止まっていますね。
さらに言うと、上記で「本当はこうあるべきなんじゃない?」と言っていた内容は、まさに「ソーシャルインテリジェンス」だなと思いました。

やはり、ビジネスの意思決定に活かすためにSNSデータをどう扱うかを考えるべきで、ツールが何をアウトプットできるかは問題じゃない(ただの手段の1つでしかない)ってことだなと思いました。

ソーシャルインテリジェンスのすすめ

このブログも、ソーシャルインテリジェンスが日本にもっと広がるといいなぁと思い活動してます。
ブログ名が「『ソーシャルリスニング』Blog」なのはご愛敬という事で笑

海外ではソーシャルインテリジェンスが広く認知され、色々な調査、研究が進んでいます。また、日本にあるグローバル企業さんでも、ソーシャルインテリジェンスの活用が本格化する兆しを見せています。

日本では、SNS分析と言うと、「ソーシャルリスニング」をイメージしてしまって、「あー例のあれねぇ・・・」みたいなお返事をいただく事も多いのです。しかし、「ソーシャルリスニング」と「ソーシャルインテリジェンス」は全然違うものだとご理解いただきたいです。

去年に投稿した記事たちもソーシャルリスニングという視点で見ると、「はて何のことかな?」ってなると思いますが、ソーシャルインテリジェンスにとってはとても重要なことたちだと思っています。

今年も、ソーシャルインテリジェンスを少しでも広めるべく、色々と発信しておこうと思いますので、よろしくお願いいたします!!

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