ソーシャルリスニングにおける、「問い」の解像度

みなさん、こんにちは。ソーシャルリスニングblogです。
今回は、ソーシャルリスニングを進める上でとても大事な、「問い」について考えてみたいと思います。

ながくソーシャルリスニングに携わっていると、クライアントさんから色々なお悩みをお聞きします。
クライアントさんの抱くお困りごとは、組織に起因するものもあり、本当に多岐に渡るんですが、大きくは以下2点に集約できるかもしれません。

  • ソーシャルリスニングでビジネスインパクトを生むことができない

  • ソーシャルリスニングで深い洞察を生むことができない

本質的には両者は同じことを言っているんじゃない??って疑問もありますが、ここではいったん、①ソーシャルリスニングのビジネスインパクト、②ソーシャルリスニングでの分析の深さ、という風に理解してみたいと思います。


ソーシャルリスニングにおける「問い」とは


ここで何度も登場する「問い」ですが、調査の文脈ではリサーチクエッションとか、ビジネスクエッションと呼ばれるようなものをイメージいただければと思います。

ソーシャルリスニングに限らず定量ても定性ても、調査プロジェクトをスタートする際に、企画書とかの冒頭に記載することも多いんじゃないかと思います。

ーーーーとは何か。
ーーーーを理解する。
ーーーーの把握。

こんな風な言い回しで企画書に1つから複数のポイントをリストアップすることがあると思います。

こういったリサーチクエッション/問いを記載することは、ソーシャルリスニングに限らず調査プロジェクトであれば珍しいことではありません。
しかし、(少なくとも)ソーシャルリスニングでは、この「問い」をしっかりと定義することが非常に重要です。「問い」のクオリティによってプロジェクトの成功・失敗の半分は決まっていると言っても過言ではないと思います。


ソーシャルリスニングの困りごとと「問い」の関係性


問いの立て方には、「縦方向」と「横方向」があると考えています。
縦方向とは、「その問いが、リサーチの上位レイヤーであるビジネスとしっかり紐づいているか」の視点です。そして、横方向とは「分析対象に対してどのくらいの粒度と解像度の視点を持てるか」のイメージです。

この2つの方向性によって、ソーシャルリスニングにおける困りごとと「問い」には深い関係があります。

まず、ソーシャルリスニングによって大きなビジネスインパクトを生めない、という困りごとは、ビジネスの課題や今後向かおうとする方向とリンクした形で「問い」を定義できていない、というのが大きな原因の1つです。

また、ソーシャルリスニングで深い洞察を得ることができない、という困りごとは、目の前を通り過ぎるデータから”何かを気づく”ための「問い」を定義できていない、というのが大きな問題だと思います。

ソーシャルリスニングで思ったような手ごたえを感じることができないと、「ツールの使い方が不十分なのではないか」「人工知能、機械学習の活用が足りないのでは」「データサイエンティストが必要だ」みたいな議論になってしまいがちかもです。
しかし、正直こういった部分は「末端の話」であり、データから何かを生み出すためにはNice to have(あったらあったでいいよね)以上のものではないと思います。
弊社では、ソーシャルリスニング用のツールも提供しているので、こういったことを言うのは良くないのかもですが、これが真実だと思います(笑)


ビジネスインパクトを生むために「問い」が求められる理由

ひとつめの、ビジネスインパクトとソーシャルリスニングについて考えてみましょう。

これは決してソーシャルリスニングだけに限った話ではないんですが、リサーチという行為はビジネス活動のためにあります。
つまり、ビジネスを前に進めるための何かを提供することが求められます。

そのためには、以下のようなフローでリサーチに期待される役割を明確にすることが大切です。

  1. ビジネスが今どういう状況にあって、

  2. 何をゴールとして定義していて・どっちの方向に向かおうとしていて

  3. そのための意思決定に対して、不足している情報は何か

このようなプロセスで「ビジネスにとって足りないピース」を明確にすることで、そこからソーシャルリスニングが答える価値のある「問い」が見えてきます。

やはり「答えることが価値につながる問い」をしっかり見定めて、そこに答えを出すことが、ソーシャルリスニングがビジネスインパクトを生むための最も重要なことです。

これをなしに、「ソーシャルリスニングではこんな事が出来るんだ!」「ソーシャルリスニングでこんなグラフが作れるぞ!」「刮目せよ!これが最先端の人工知能の英知である!」みたいなことをどんなに繰り返しても、ビジネスインパクトを生むことは難しいと思います。逆に、特に求められてもいない部分で分析者だけが鼻息を荒くして、余計な(有難がられない)レコメンデーションを量産するだけ、という事態にもなりかねません。

ソーシャルリスニングなどのデータ分析/ビッグデータ活用は、まずデータがそこに存在してしまうこと、また、ツールを導入すれば、何の目的もなくても、それっぽいチャートやグラフをいくつでも作り出すことができる、という闇の側面があります。
その結果、何かを作り出している気分だけになってしまい、結局なんのビジネスインパクトを生むこともできずに悩んでしまう、という事態に陥ってしまうのではないでしょうか。


深い洞察のために「問い」が求められる理由

それでは次に、ソーシャルリスニングでの洞察について考えてみたいと思います。

ソーシャルリスニングはある意味、SNSデータという手段を用いて社会を行動観察する行為だと言うことができると思います。消費者が調査という営利行為とは全く無関係の状態で、自然な生活・行動の中で生み出されるSNS投稿というカケラ(データ)を眺めることで、そこからビジネスやマーケティングに意味を成す、何かの発見やヒントを得る活動です。

そのため、ソーシャルリスニングを行う分析者は、調査目的のために作りだされたものではない「データ」を眺めて、何か(面白いことに)気づかなければいけません。

この「気づく」というのがポイントです。ここで「問い」が非常に重要な意味を持ちます。

ここで話が脱線するんですが、少し前に、とある有名ホテルの伝説的な清掃員さんを特集したTV番組を見ました。
その清掃員さんは、部屋の掃除やベッドメーキングなどを超人的なスピードで、かつ完璧なクオリティでこなしていくんですが、その作業の中で窓に付いた1この指紋を見逃しませんでした。
窓に付いた指紋って光の反射とかの関係で見えない時も多いですし、なかなか発見できませんよね。でもその清掃員さん曰く、「あると思って窓を見ると見つけることができる。ただ漠然と窓の方に視線を向けても見つけられるものじゃない」といったことを言っていました。

これが「気づき」と「問い」の関係性そのものだと思います。
つまり、ただ漠然とSNSデータを眺めていても、そこから何かに気づけるわけじゃないんです。そこには気づくための意識の持ち方、のようなものが必要になってきます。

この「何かに気づくための意識」が「問い」ということです。
これは仮説とか疑問といった別の言葉でも表現できるかもしれません。

○○ってどういう事なんだろう?
〇〇について、どんな実態があるのだろう?
〇〇ってもしかしたら、こういう心理や行動があるのではないか?

こういった仮説や疑問のような「問い」を、「網羅的に」「細かい粒度で」「MECEに」持てることで、分析者がデータに向き合う時の意識の持ち方がぜんぜん変わってきます。
そして、この意識(視点と言ってもいい)の持ち方が分かることで、ただ漠然とデータを眺める状態から抜け出すことができます。

このように、網羅的で詳細な「問い」をしっかり持てていないと、データに向き合う意識を持つことができず、分析に深みがでないという事態に陥ります。
ここに付いても前述の「ビジネスインパクト」と同じで、ツールを使いこなすとか、そういう話ではないことはお分かりいただけるのかなと思います。


「問い」に関するあるある

最初に「問い」とは、リサーチクエッションやビジネスクエッションと呼ばれる類のものだ、というお話をしました。
リサーチクエッションなら、必ず企画書に書いてありますよね。でも、よくあるのが「お飾りとしてのリサーチクエッション」じゃないでしょうか。

・・・・を把握する。
・・・・の実態を理解する。
・・・・を明確にする。
のような文言で、企画書の最初に記載しているものの、なんとなく前例踏襲的に固定のフレーズをコピペしているだけで、その内容がビジネスインパクトを生むための「足りないピース」を示していなかったり、分析の視点を生み出すような解像度を持てていない、といったケースは散見される気がします。

もちろん、そういうリサーチクエッションの書き方で問題にならない環境や背景があることも理解しています。
特にくり返し実施される固定化されたスキームの案件の場合、だいたいの設計や質問内容、集計軸、レポート構成は決まっているし、そのリサーチ結果の役割や使われどころも関係者の中で暗黙知的に決まっているので、わざわざリサーチクエッションを事細かに記載しなくてもよい、いや、記載する必要性がない、という事は往々にして存在すると思います。

ただ、ソーシャルリスニングに関して言えば、やはり正しい「問い」をしっかり立てることは、実際の分析作業と同じくらい重要で、プロジェクト成功の半分は「問い」の立て方と解像度で決まる、と言って過言ではないと思います。


まとめ

最後までありがとうございました。
最近、1記事あたりの文字数がどんどん増えているような気がします。本当はもう少しコンパクトにサラッと読める内容にしたいなと思いつつ、気が付くとこんなボリュームになってしまいました。

今回は、ソーシャルリスニングにおける「問い」について考えてみました。
ポイントは以下です。

  • ソーシャルリスニングに関する悩みの半分は「問い」の立て方によるもの

  • 分析がビジネスインパクトを生むのも半分は「問い」の立て方で決まる

  • 面白い分析ができるのも半分は「問い」の立て方で決まる

  • 企画書の1ページ目はお飾りではない

といったことをお伝えできていればうれしいなと思います。

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