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ランドマーク(7)

 とにかくここから逃げだそう、と考えたのは、一度や二度ではない。天井が嫌いだった。壁が嫌いだった。だからわたしは屋上にいる。密室とはかけ離れた場所で、立てこもりを続けているような気分。わたしの意志で選んだはずの高校も、歪に成長した今となっては枷にしかならない。精神の連続性はいつのまにかぷっつりと途切れて、どこからかわたしは過去のわたしを理解できなくなっていた。

「あと三週間で夏休みなんだし、な」

 その放課後、職員室に呼び出されたときも、さして驚きはなかった。どうして担任でもないくせに、という疑問はふわふわと宙を浮かんでいたが、そのことを尋ねられるような関係ではない。

「卒業、できますかね」
「まずは進級だろう」
「ああ」

 背後のエアコンが吐き出す風のせいで、首筋が重たく感じられる。すこし気持ちわるい。

「学校には来られるんだから。不登校になるよりよっぽどましだ」
「まあ」
「あとは授業を受けてくれ」

 うんともいやとも言えないまま、わたしは冷風を浴びていた。

「なあ、海良はどうして理科を専攻したんだ」
「どうして・・・・・・高いところが、好きだから?」
「おもしろいこと言うなあ。あれか、塔か」
「そうです」
「ぼくが子供のころはそんなこともあったけどな」
「馬鹿みたいでしたか」
「情勢がこれじゃあな」

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