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うつへの運動の効果-メタ分析を調べてみました

個人的にランニングを時折するのですが、元気がない時、走る前はおっくうですが走ると頭がさえるし気分もよくなって、ということが多く、走ることが手放せなくなっています。ランニングをすれば問題は少し解消して、ぐるぐる悩む事が減り、という感想です。

とはいっても、それは単に個人的な経験で偏ってますので、それが他の人にも当てはまる事なのかははっきりわかりません。以前、脳を鍛えるには運動しかない、という本を読んで、うつ病に対しても運動が効果があると書いてあって、やっぱりそうかと納得しました。ですが、本は2008年(翻訳は2009年)と少し昔に書かれた本であり、また、以前少し調べた時に、運動の効果はあまりないようなことが書かれていて、今はどうなっているのだろうかと思ったので調べてみました。

科学的発見は、後にその研究と同じ条件で調べてみると違う結果になったり、たくさんの研究をまとめてみると効果は思ったほど大きくないとわかったりと、なにかと事実が変わることも多いためです。

チャレンジしてみようと思ったので、英語の論文をまとめた論文を読んでみました。とはいうものの英語は苦手なので、Google 翻訳に頼りました。

研究の分野で違うようですが、心理学系の研究では一本の論文(研究)だけだと、根拠が少し弱いようで、たくさんの論文(研究)をまとめた研究、システマティックレビューとメタアナリシス、というようですが、その方が根拠が強くなるようです。

無料で公開されている論文を読んでみました。海外の論文は、購入をクリックすると日本円で5000円ぐらいの金額が出てきて、詳しくないので本当にそうなのかよくわかんないんですが、とてもお金かけれないです。 何かしら安くする方法もありそうなのですが。下の論文よりも新しい論文があったんですが、それがまさに購入だと円で5000円ぐらいと出てきて、だめだと思って古い論文にしました。 どなたか方法を知っていたら教えてもらいたいです。同じ論文でもなぜか PDF だと出てきたりするのですが、Google 翻訳はまだPDFの翻訳に慣れていないようで変なことになるので、PDFでないもので探しました。

運動とうつ病の患者さんについて(メタ分析)

Physical Exercise and Clinically Depressed Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis 2013 Silveira H.a, b · Moraes H.a, b · Oliveira N.a, b · Coutinho E.S.F.c · Laks J.a,d,e · Deslandes A.a,

この論文”運動とうつ病の患者さんについて”の論文まとめです。
要点を抜き出すと、

・軽度と中等度のうつに対しての研究。研究によって効果がばらつきがある。
・有酸素運動と筋力トレーニング。2種類の介入の間に統計的に有意な差がなかった。
・軽度のうつ症状の方が効果がある。
・60歳以上の方が効果高い
・運動は中程度の効果(SMD = 0.61)
・有酸素トレーニングは、うつ病の症状を軽減するのに抗うつ薬(セルトラリン)と同じくらい効果的。
・運動時間に関して、3日/週のトレーニングと5日/週のトレーニングの間に違いがない。一回当たり30〜60分?
・有酸素トレーニングと筋力トレーニングが抑うつ症状を軽減

といった内容です。Google 翻訳も完全ではない事と、私が英語に疎いので怪しいところもありますが・・・。

まとめると、軽度と中等度のうつに対して、有酸素運動と筋力トレーニング、一回当たり30〜60分?・3日程/週行うと、どちらとも抗うつ薬と同じぐらいの効果がある、しかしばらつきはある、というものでした。

次に紹介するのは日本語の論文です。

抑うつ改善に及ぼす運動の効果(日本語論文)

永松 俊哉 2013 抑うつ改善に及ぼす運動の効果 総合病院精神医学 25(3), 240-247, 2013

この論文には研究の歴史も書いてあって、なるほどと思いました。結局これを読んだほうがわかりやすいような。要点を抜き出すと以下の内容です。

・うつ病のレベルは概ね軽〜中等度
・2001 年発表のシステマティックレビューでは抑うつ改善に及ぼす運動の効果は明らかではなかった、検証プロセスや研究 デザインに問題のあったことが結論づけられ、当時はエビデンスが不十分
・2004 年には、抑うつの軽減やうつ病の症状改善に運動は有効との見解が示された。
・2007 年には,うつ病や不安障害の治療として運動が薬物療法と同等の効果を有することが示された。
・2012 年、抑うつ改善に及ぼす運動介入の効果量は「中」レベルに相当
・有酸素運動の有効性は概ね認知されているがレジスタンス運動(筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動)の効果についての評価は一貫していない。
・効果発現メカニズムについては不明の点も多い。
・運動経験の有無や運動に対する嗜好性の差異が効果に及ぼす影響についての検討はほとんどなく、今後の課題。

まとめると、
2001 年頃の研究では、研究の質が不十分で効果があるのかはっきりわからなかったが、その後質の高い研究が出てきて、2012 年頃には効果があると言えるようになった。今後の課題としては、効果発現メカニズムで不明な点があることと、運動経験の有無や好みがどのように影響するのか不明であること。
のようです。

私が以前調べた時に、運動の効果はあまりないようなことが書かれていたものを見たと上に書きましたが、それは2012年以前の研究のまとめだったのかもしれません。

最後にもう一冊、本の紹介です。

スタンフォード式人生を変える運動の科学

・ケリー・マクゴニガル 2020 スタンフォード式人生を変える運動の科学、大和書房

この本の2章から引用すると、
「科学者たちは、運動がもたらす抗うつ効果や不安軽減効果に関連するいくつかの遺伝子バリアントが、複数の遺伝子に存在することを発見した。そのような遺伝子バリアントを一つでも持っている人は定期的な運動による精神的な効用を受けやすくなる。たとえば、毎日少なくとも20分運動すればうつ病や自殺念慮のリスクが減少する効果が表れやすい。そして、先ほどの私の検査報告書のデータで、そのような遺伝子マーカーを探したところ、妹と私にはすべてそろっていることが分かったのだ。」
とありました。

これだけでは分かりにくい所があるので説明を加えると、この本の著者には一卵性双生児の妹がいて、著者も妹も運動が大好きで、その理由を確かめようと著者が遺伝子検査のサービスを利用して調べてみました。その結果をみると、著者には抗うつ効果や不安軽減効果を示す遺伝子が多く見られたようです。このあたりの事はまだ研究が進んでおらず、まだはっきりしたことは言えないようですが、今後研究が進むと、なんらかの検査を行うことで、その人に運動の抗うつ効果があるのかどうかがわかるようになるかもしれません。そうなると、うつ病の患者さんで運動が合う人に運動を勧めることができる、その人その人に合った治療法が少しわかるという未来が来るかもしれません。

こうやってまとめてみましたが、怪しいところもあると思いますので、詳しい方で間違ってるところがわかったら教えていただくと助かります。


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