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AORとわたくし

レコード・コレクターズ誌2024年10月号はAOR特集。と言いつつ私は買ってないんですが。AORはどこまでを含むのかというのでいつも揉めてるイメージがあるんですが、私自身は割と定番しか聴いてないので、あまりその辺りは気にすることなく楽しんでおります。ということで今回は深く考えずに私が好きな作品をピックアップ。

Nick Decaro "Italian Graffiti

AORの原点と言われる作品なので、とりあえず私も入手した想い出が。ニックのヴォーカルの弱さは置いといても、普通に良作として楽しめる内容。ニック自体がアレンジャーとして名をなした人だけに、そこを楽しむべきかと。トッド・ラングレンやジョニ・ミッチェルなどの通なカバーもありつつ、一番のおすすめがこれ。ギターがとにかくいい。

Boz Scaggs "Middle Man"

AORといえばまず思い浮かぶのがボズ。"Silk Degrees"、"Down to Then Left"、"Middle Man"の3作はケチの付け所のない良いアルバム。曲単位では"Down to Then Left"に入っている"Hard Times"が一番好きなんですが、アルバムとしてはジャケットも含めて"Middle Man"が好き。シングルとしてもヒットした"Jojo"はなんといっても印象的なギターリフで、これはレイ・パーカーJr.によるものですかね?

ボズは"Silk Degrees"の前の"Slow Dancer"というAORのプロトタイプのような流麗なソウル・アルバムも必聴ですが、初心者はとりあえずベスト盤から入るのも良いかと思います。

Steely Dan "Aja"

スティーリー・ダンをAORとするかどうかは個人的には難しいなと思うわけで(TOTOも同様)、ぶっちゃけAORとして聴くのは"Aja"だけかなと。言わずと知れた70年代屈指の名盤としての地位を確固とした作品ですが、私が好きなのはバーナード・パーディのドラムスがたまらないこの曲。

続くアルバム"Gaucho"で一旦ダンの歴史は終わるわけですが、"Gaucho"の完成度の高さの一方で行き詰まり感があるところがなんとも切ないなと、後追いでも感じられるところが興味深い。

The Doobie Brothers "Minute by Minute"

マイケル・マクドナルド期のドゥービーズは毀誉褒貶が激しいのですが、第ヒット曲"What a Fool Believes"はやはり抗いがたい魅力があります。ということで同曲収録のこのアルバムのタイトル曲。"What a"もそうですが、マイケルの鍵盤楽器のアレンジセンスの素晴らしさはまさに絶品。

TOTO "Ⅳ"

前述の通り、TOTOをAORバンドと見るのは抵抗感があって、この人たちはやはり何でもありで何でもできるマルチ・バンドだろうと。で、代表作の"Ⅳ"ですが、これもやはりAORというよりAORも含む名盤という見方の方がしっくりきます。AORはAdult-oriented Rockの略であると同時にAlbum-oriented Rockと言われるように、アルバム単位で聴く(聴ける)という特性があるように思うわけですが、その視点から考えると"Ⅳ"はAORなのかなと悩むところ。このアルバムのAOR的な曲というと、"Make Believe”とこの曲を推します。とはいえ、よくこの曲をシングルカットしたな(いい曲だけどシングルとしては地味)とも。

Bobby Caldwell "What You Won't Do for Love"

前述の通り、AORはアルバム単位がミソと思っていますが、曲単位で強烈に好きな曲が何曲かあります。
まずはド定番ですが、ボビー・コールドウェルのこれ。聴けば聴くほど好きになる。クールですよねぇ。

Airplay "Cryin' All Night"

デヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンという、今見るととんでもないコンビによる唯一のアルバムより。アルバムも名盤扱いになってますが、個人的にはこの曲に尽きると思っています。この刻むタイプの鍵盤曲に弱く、ダリル・ホールが後に多用しますね。

Chicago "Good for Nothing"

シカゴもAORとして聴くことがないんですが、ピーター・セテラよりロバート・ラムの作風にAOR的な良さを感じます。こちらはあのUSAフォー・アフリカのアルバムに収録された、おそらくはアルバム"17"のアウトテイク。いかにもボツ曲らしいあっさりとした作りなんですが、ロバート・ラムのセンスの良さが光る佳曲。

Eagles "I Can't Tell You Why"


マイケル・マクドナルド期のドゥービー・ブラザーズはAORとして聴いてますが、イーグルスはあまりAORのイメージがありません。が、ティモシー・シュミット作のこの曲はもっと評価されていい極上のAOR。なんならイーグルスの中で一番好きな曲かも。収録アルバム"The Long Run"のみAORとして扱われることもありますが、この曲と"The Sad Cafe"くらいしかそのイメージはありません。

Kenny Loggins "This is It"

70年代の"Nightwatch"(ボブ・ジェームズのプロデュース)や"Keep the Fire"、"High Adventure"あたりまで、つまりは例の"Footloose"以前のケニーは多分にAORとして上質な作品を作っており、なるほど、マイケル・マクドナルドあたりとの共作が多いことにも納得。こちらはアルバム"Keep the Fire”からですが、次作"High Adventure"収録の"Heartlight"とともにぜひ。

Player "Baby Come Back"

言わずと知れた名曲中の名曲。プレイヤーはこの曲のせいで一発屋のイメージがありますが、続くシングル"This Time I'm in It for Love"も全米10位に送り込んでおり、その後も"Prisoner of Your Love"が26位を記録。いかにもウェストコーストのバンドらしい上品な音で、前述のイーグルスの後期のAORナンバーとの類似点も。

Go West "From Baltimore to Paris"

AORはアメリカのもの、というイメージがありますが、イギリス出身の彼らはなかなか一筋縄ではいかないデュオ。初期は"We Close Our Eyes"や"Call Me"などエレポのイメージがありながらも、"Goodbye Girl"のようなAOR的な曲も既に手掛けており、セカンド"Dancing on the Couch"ではそのイメージはほとんどなく、さらにはサード"Indian Summer”では前述のボビー・コールドウェルのナンバーもカバー。思うに彼らの場合はAORというよりはブルー・アイド・ソウルの系譜で見た方が割としっくりくるような。

Wa Wa Nee "Jelly Baby"

オーストラリア出身で、"Stimulation"のヒットでも知られる彼らですが、彼らもゴー・ウェスト同様にエレポというよりファンクやソウルの感覚も強い感じがします。ちっともリマスターされない彼らのファースト・アルバム(名盤)ですが、そこからの1曲。渋い名曲。

他にもマイケル・フランクス、ポール・デイヴィス、ウィルソン・ブラザーズ、ジョージ・ベンソン、スティーブン・ビショップ、ルパート・ホームズなどの代表作も一通りは聴いていますが、ことAORの場合、有名どころがやはり好きです。

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