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悲しい話は 消えないけれど もっと輝く明日 ー「優しいスピッツ」感想ー

わたしは中学生のころからずっとスピッツが好きだ。当時はアルバムは全て買えなかったので、レンタルショップで借りてMDに録音し、繰り返し聴いていた。再生ボタンを押すといつでも彼らの曲に会えた。スピッツの曲たちは力強く励ましてくれるわけじゃないけど、そっと寄り添ってくれるような感じがして、多感な時期のわたしは彼らの音楽にいつも救われていた。

大人になってからもそれは変わらず、十勝に来てからは「優しいあの子」を繰り返し聴いた。何もわからないまま十勝に移り住み、いろいろな思いもしたけれど、たくさんの仲間に出会いながら前に進んでいったわたしの心境にとてもぴったりな歌だった。

ライブツアーの帯広公演のチケットも取っていた。しかし、結局そのライブは新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったので、十勝の地で「優しいあの子」を聴くことは叶わなかった。

ツアーが終わった去年の秋ごろ、スピッツのシークレットライブが行われたというニュースを見た。撮影場所は帯広の旧双葉幼稚園。特別な1日限りのライブに十勝を選んでくれたことがとても嬉しかった。

それが昨日放送された「優しいスピッツ」という映像作品だ。この日だけの特別なセットリスト。中学生のときに繰り返し聴いた「Holiday」とか、高校生のときに初めて行ったライブで演奏された「漣」とか、懐かしくて大好きな曲たちが次々と演奏されて、まるでずっと好きでいたことへのご褒美みたいな選曲だった。

この日のために選ばれた会場とスピッツの相性も抜群によかった。ライブハウスとかホールとかスタジオじゃなく、国の重要文化財にもなっている100年前からある古い幼稚園。シンプルなセットと照明。だからこそ音のひとつひとつが、曲自体の優しさが際立つ。「夕焼け」のときの夕日の感じがすっごくすっごく綺麗だった。スピッツってこういう色なんだよなあ、と思った。

このライブでは懐かしい曲だけじゃなく、新曲の「大好物」も演奏された。昔からずっと好きな人たちが、今もこうして活動してくれていて、新しいものを生み出してくれていて、そしていまだにわたしに優しく寄り添ってくれてるということが、とてつもなく幸せだと思った。

最後に演奏されたのは「運命の人」。「悲しい話は消えないけれど もっと輝く明日」という歌詞がとてつもなく好きだ。悲しいことを決してないものにしないのが、スピッツに優しさを感じる1番の理由だと思う。これからもスピッツと一緒に歳をとっていけたらうれしい。

旧双葉幼稚園は2月になったら一般公開もされるみたいなので、足を運んでみようと思う。


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