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心が動く感覚を、忘れたくない ーJAPAN JAM感想ー

2022年のゴールデンウィーク。久しぶりに旅に出た。
転職してから3年。コロナになってから3年。「いつでも遊びに行けるし」と思っていた場所が、なかなかプライベートでは行けない場所になっていた。今回行くことを後押ししてくれたのが、JAPAN JAMの存在だった。

音楽を浴びたいという気持ちがふつふつと湧き上がり、ゴールデンウィークだから何かの春フェスには日程的に行けるよなあと思いながらWEBサイトを行ったり来たりしていたときに、友人からJAPAN JAMに行くという話を聞いたのと、羽田行きの航空券を調べたら思ったよりも高くないといういろんな条件が重なって、気づいたらチケットを取っていた。

5月7日 千葉県蘇我市

当日まで天気予報はずっと小雨マークが消えなくて、朝起きたら曇りのマークに変わっていた。なんとかなる気がした。

会場で電子チケットを見せて、久しぶりのリストバンド交換。フェスの醍醐味。

逆さまにつけてしまった

会場に入ったら晴れていて、だだっぴろい空とステージが見えて、テンションがあがった。物販テントも飲食テントも、懐かしくて嬉しかった。野外フェスにやっと来れたと思った。

ステージではリハーサルをしていて、音が空にどんどん伸びていくのを感じて気持ちがよかった。そう、これが聴きたかったんだ。ライブハウスのこもった爆音も好きだけど、野外フェスのどこまでも音が飛んでいくような感じがするのも、たまらなく好きだ。

少し青空が見えていた

1ステージ目の優里を見ているとき、突然雨が降り、その後大粒のひょうのようなものが降ってきた。これ、知ってる。初夏に降るやつ。北海道はやっと桜が咲いたのに、本州はもう初夏なのだなあ、なんてことを考えながら、カッパがわりのウェアを着た。小雨くらいなら耐えられるけど、大粒の雨に耐えられるかはわからないなと思って、不安になった。

みんないそいそと雨具を出す

だけど、2ステージ目の秋山黄色のときには雨も止んで、来ていたウェアも、少し濡れたズボンも乾いた。不安な気持ちはなくなった。

3ステージ目のyamaのときには、青空も見えていた。ころころ変わる天気が、外で音楽を浴びているのだなあという気分にさせた。yamaは芝生に座りながらのんびり見ていた。こういう音楽の聴き方ができるのもフェスならではで気持ちがよかった。

図らずとも靴下の色が似た

この日のお目当ては、女王蜂とスピッツと10-FEET。vaundyとスキマスイッチも楽しみにしていた。つまり、後半のタイムテーブルを見る限り休みがない。幸いこのフェスはステージ被りが一切なく、ステージ間も5分とかからず移動できるので、仕組み的には見たいライブは全て楽しめるようになっている。しかし、それだとご飯休憩はおろか、トイレにさえ行けない。どうしようか悩んだ結果、せっかく来ているのだからと最大限楽しむことにした。
なので、お酒は一滴も飲まず、お昼に摂取したのは肉とポカリ。完全に臨戦態勢だ。

フェスってなぜか肉とポカリの摂取量が上がる

15:45 女王蜂

ずっと生で見てみたいと思っていたバンドのひとつだ。ボーカルのアヴちゃんは妖艶で美しく、強さもあって、本当に完璧な唯一無二の存在に思えたし、かつ完璧なスーテジングだった。ラストから2曲目の「犬姫」のときにだけ小雨が降ってきたのだけど、それが演出かと感じるくらい曲と照明と歌と演奏とマッチしていて痺れた。アヴちゃんが降らせたのだと言われても信じるし、それくらいのパワーがライブにあった。すごい。何かの神様なのかと思った。「次はわたしたちのライブで会いましょう」と言って去っていくのも最高にクールだったな。いつかワンマンに行ってみたい。

17:15 スピッツ

スピッツが出るから行くって決めたと言っても過言じゃないくらいの存在。もう20年くらい好きです。スピッツに関しては別の記事で感想が書けちゃうくらいに沢山思ったことがあるのですが、「一生のうちに聴きたいスピッツの曲リスト」という私的な脳内リストにリストアップされている「三日月ロックその3」が演奏されて、ものすごく嬉しかったことはまず記しておきたい。
あと、ちょうど夕暮れの時間帯にスピッツのライブで、それがとても美しすぎて、特に「みなと」のときの夕日が本当に本当に本当に綺麗すぎて幸せな時間だった。曲の世界が何倍にも広がっていく感覚。特別だ。だから野外フェスが好きなんだ。
別記事でもスピッツは夕日が似合うということを書いたけれど、このステージでさらにそれを痛感した。

あと、スピッツの往年のファンらしき人もちらほら来ていて、背伸びしながらステージを見ようとしていたり、ノリノリで曲を聴いたりしているのを見て、とてつもなく感動してしまった。コロナ以降、好きなものを知らない人とシェアする時間ってほとんどなかった。「自分の好きなものは誰かの好きなもの」という、当たり前のことを感じる機会がほぼなくなってしまっていたのだけれど、今回それを感じてあたたかい気持ちになれた。
まだまだ書きたいことはあるのだけど、とにかくスピッツ好きでよかったなあと思ったし、これからも好きでいたいと思うライブだった。

スピッツ後の夕日 もう雨雲は消えた

18:15 スキマスイッチ

スピッツからのスキマスイッチという流れに、どうしても2015年のJOIN ALIVEを思い出してしまうなあと考えていたところ、まさかの一曲目が当時も演奏された「僕と傘と日曜日」で、ますますあのときを思い出すような始まり方。あの時は大雨の中の演奏だったけど、この日はとても綺麗な夕日の中の演奏で、曲の思い出が数年越しに増える感じがよかった。
スキマスイッチのライブを見るのはそのときぶりだったけれど、めちゃくちゃカッコいいバックバンドを率いて、ガラナとか全力少年とか中高時代を思い出すような往年のヒット曲が演奏されると、否応がなしにもテンションは上がってしまう。全力少年がしみる歳になったなあ。こういう昔仲良くしていた曲に再会できるのも、フェスならではだと思う。

19:15 10-FEET

実は一番楽しみだったかもしれない。数年前のライジングサンで大トリだったときもライブは見ているが、10-FEETの良さを知らず、眠気に負けて全然楽しめなかったので、今回は予習をバッチリして臨んだ。(予習はフェスに参加する上で欠かせない儀式。曲を知らないよりも知ってる方が何倍も楽しい。)予習をしているうちに10-FEETにハマり、JAPAN JAMの数日前までは10-FEETしか聴いてなかった。おかげで以前から10-FEETを知っているような人間かと思えるくらい、ライブを楽しめた。

この夜のドキドキする空気感がたまらなく大好き。

暗くなったステージ、スモークがもくもくと焚かれ照明がぴかぴか光る中、みんなが拳を挙げたり飛んだりしながらライブを楽しんでいる空間がコロナ前となにも変わらなくて、声は出せないけど心の中でコールアンドレスポンスをしているのもわかって心が震えた。コロナによって音楽の楽しみ方やライブのあり方は変わってしまった部分もたくさんあるけれど、やっぱりこういうリアルな場所には敵わないと実感してしまった。
「蜃気楼」の前のMCもとてもよかったなあ。その場にいる人の心が動くのを感じたし、10-FEETの思いも曲に乗って届いたのを感じた。めちゃくちゃいいライブだった。

ありきたりだけど

生の音楽の力って、フェスってすごい。こんなに心が動く空間や時間ってそうそうない。音があって、言葉があって、人がいて。風を感じて、光を感じて、温度を感じて。
部屋で一人で音楽を聴くのももちろん大好きだし、オンラインライブにもとても救われてきたけれど、こんなに五感と心が動くのはやっぱりこの空間だけで、だからわたしは野外フェスというものが好きなんだなあと思わされた。すごく生きている感じがした。

こんな感覚はしばらく忘れていたけれど、わたしにはとても必要な感覚だ。それを思い出せてよかったし、行ってよかったと心から思うのです。

ずっと帰りたくないと思っていた


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