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闘う人が放つ音に驚いた日(2023年9月24日、DDTを観戦して思ったこと)


DDTは

 段取りが良くて非常に心地よく楽しめる文化祭。
 2回目のDDT観戦もそんな印象だ。

 ダークマッチからガンガンに飛んでみせる須見和馬選手にテンションが上がる。
 夢虹選手の飛び技はどれも「ふわっっ」という擬音をつけたくなるくらい見事(「っ」は2つ書き添えたい!)。
 フェロモンズ解散カウントダウン、「この中に裏切り者がいる」と対角の面々に言い放ったディーノ選手。この場合の裏切りはヒールターンならぬセクシーターンか? などとふと思う。
 DDT参戦が一区切りとなる火野裕士選手。会場入り口では有志の方々が応援ボードを配っていて、裏面にはボードを使うタイミングから持ち帰りできない場合の対応まで丁寧な説明がついていた。8人タッグ戦は乱戦スタートから、火野選手と樋口和貞選手の激しいチョップの打ち合いへ。重い音が場内に響き渡る。どんどん真っ赤になっていく双方の胸板が印象的だった。
 全日本プロレスとの対抗試合は、ジュニアヘビー級の熱いタッグ戦。思えば全日本プロレスの選手初観戦だった。……また観たい団体増えるなぁ。
 DDT UNIVERSAL選手権、王者マット・カルドナ選手に挑むは伊藤麻希選手。東京女子プロレスの伊藤ちゃん! 可愛くてタフでリボンつきピザカッターも世界一似合う伊藤選手、体格差をものともせずつかみかかり、介入してくるステフ・デ・ランダー選手にもきっちり対応。たくましかった。
 スペシャルシングルマッチはKOUNOSUKE TAKESHITA vs MAO。ヘビー級対ジュニアヘビー級の体格差にどう対応するかと思ったら、MAO選手はTAKESHITA選手のリングイン時に早速襲撃。ハイペースな展開に持っていくものの、TAKESHITA選手の反撃は一つ一つが重くすさまじい音を立てる。終盤にはドン・キャリスも登場して、驚きの連続だった。
 メインイベントはKO-D無差別級選手権試合。王者クリス・ブルックス vs 挑戦者赤井沙希。開戦から蹴り込んでいく赤井選手を、クリス選手は場外でジャイアントスイングでぶん回して仕切り板に叩きつける。すさまじい音と共に倒れ込む赤井選手が場外カウント19でリングに戻る、といったハードな展開。赤井選手が全力で戦っている姿は本当に美しい。

 ……といった試合を観て、プロレス脳は満腹になった。

そして思うこと

 プロレスは1人では成り立たない、ということを、この頃はよく考える。
 陶酔で終わらない感情の揺らぎ、生きている実感、身体の感覚、といったことをプロレスがきっかけで改めて知った。
 今までハマってきたもの(音楽、演劇)と、何が違うのだろう。それを考えて思い至ったのが、「プロレスは1人では成り立たない」という点だ。

 音楽も演劇も奏者や演者が1人という形式は成り立つ。しかしプロレスは、レスラー1人では成り立たない。たとえ透明人間と闘う試合であっても、リングの上にはレフェリーがいる。リングの周りには観客がいる。

 音楽と演劇にも観客はいるけれど、何というか、舞台と観客の距離感がプロレスとは異なる気がする……と考えて、はたと気づく。

 距離感とは、心の距離感だ。

 観客の心が、感情が、どれほど揺さぶられて、揺れ続けるか。

 音楽や演劇も、確かに私の心を揺さぶってきた。人外ではないかと思う歌声を聴けて良かった、大泣きしてしまう舞台だった等々、大いに揺さぶられたのだけど、帰り道という現実で急速に酔いが冷めるような感覚に陥りもしたのだ(それは、私が音楽や演劇に「ここではないどこかを見せてくれること」を求めていたからでもあるだろう)。

 プロレスを観た後、揺さぶられた感情は、そうした酔いとは何かが違った。

 プロレスラーは、マスクで素顔を隠していようがリングネームを名乗っていようが、今この時を生きている人間で、それぞれに思いを抱えている。その思い、感情を、リングの上でぶつけ合っている。それを見る私の心も揺さぶられる。

 羨ましい、と思う。感情をぶつけても立ち去ることのない相手がいることを。

 プロレスを観て、そんなことを考えるようになった。

 さて、次はどんな試合を観られるかな。

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