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手戻りを減らす仕事の依頼方法
はじめに
部下に仕事を振る際に、下記のようなストレスを感じている上司の方はたくさんいるかと思います。
仕事を依頼したときに、成果物の内容が自分の想定と全く違うものが出てきた
手戻りが発生して、スケジュールに遅延した
結局自分でやることになった
これらの原因を深堀りすると、仕事を依頼する側(依頼者)と仕事を実行する側(担当者)との間で、仕事に対する抽象度の高さに違いがあると言えます。一般的に、担当者の方が依頼者よりも仕事に対する抽象度が低いため、依頼する側がなんとなく仕事を振ると、担当者は混乱します。
一方、担当者が対応できる抽象度の高さで仕事を依頼すると、担当者の仕事への理解が明確になり、仕事がスムーズに進みます。
この記事では、仕事の抽象度の設計、仕事の依頼方法などについて解説します。
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仕事は3レベルで階層化できる
「仕事」と一口に言っても内容や難易度は千差万別です。この記事では、抽象度を軸として、仕事を3レベルに分類します。抽象度の高い順からそれぞれ、問題、方針、タスクと表現します。
問題
「問題」とは、自分が理想とする状況と実際の状況との間に存在している「ギャップ」のことです。目標達成のために解決すべき事柄を指します。
方針
「方針」とは、問題を解決するためにめざす方向性や、大まかな流れのことを指します。方針とともに、解決策の候補もいくつか提示します。
タスク
「タスク」とは、問題を解決するためにやるべき具体的な作業のことを指します。
この3レベルのうち、どのレベルで担当者に仕事を振るかは、担当者の抽象度レベルを見極めて決めます。もし、担当者の力量把握に失敗し、担当者の認識できる抽象度を越えた仕事を振ると、期待した成果が得られず、お互いに不満が溜まります。
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仕事の抽象度と担当者の抽象度のレベル
依頼した仕事の抽象度が担当者の認識可能な抽象度より高い場合
上司の想定した成果物と異なるものが出来上がる
担当者は仕事内容を理解できず、何から手を付けて良いか分からずストレスが溜まる
担当者は仕事に対しストレスを感じ、自信を無くす
依頼した仕事の抽象度が担当者の認識可能な抽象度より低い場
仕事の進め方が細かく指定されているため、成果物のブレは少ない
担当者はマイクロマネジメント感を感じ、主体性やアイディアを出しにくい
担当者はやらされ感を感じるので、次第に仕事への意欲が下がる
依頼した仕事の抽象度が担当者の認識可能な抽象度と同じ場合
仕事の大枠や目的が共有されているので、成果物のブレは少ない
仕事の進め方に裁量があるので、担当者の自発性やアイディアが成果物に反映される
担当者の主体性が育つ
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担当者に振る仕事の抽象度の見極め
以降では、依頼者と担当者がお互いスムーズに仕事を進めるために、「担当者に振る仕事の抽象度の見極め」について解説します。私は下記の3つの観点から、担当者に振る仕事の抽象度を判断しています。
依頼する仕事に関連する業務経験があるか
担当者と自分の間に信頼関係があるか(阿吽の呼吸ができるか)
担当者の論理的思考力が高いか
担当者の業務経験も大事ですが、最も大事なのは担当者の論理的思考力、コミュニケーション能力といったソフトスキルの領域です。ソフトスキルが高ければ、業務経験がなくても、周囲と適切にコミュニケーションを取り、仕事を進められるからです。
仕事の依頼事項の洗い出し
仕事の担当者と仕事の抽象度が決まったら、下記の5W1Hを箇条書きにします。依頼する仕事内容は、JiraやBacklogといったチケットツールで管理するとなお良いです。
Who: 担当者
Why: 目的、なぜやるのか?
What: 成果物
How: 仕事の進め方
When: 期限日
下図は、横軸を仕事の抽象度、縦軸を5W1Hとした図です。仕事の抽象度ごとに、担当者に伝えるべき項目を◯印で表しました。
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※ 〇 ... 担当者に伝える
※ 無印 ... 担当者に伝えなくても良い
ここで最も重要なのは「仕事の目的」です。仕事の抽象度によらず、依頼する仕事の目的は必ず伝えます。 目的以外の部分は仕事の抽象度に応じて省略可能です。例えば、問題レベルの高い抽象度であれば、担当者に目的だけ伝え、何をいつまでに完成させるかは、担当者に考えてもらうようにします。
方針、タスクレベルの依頼の場合は、Whatも重要となります。これは成果物定義や完成の定義と言われるものです。例えば、プレゼン資料の成果物は「社内の●●の資料を参考に、PPT 4枚で作成」のように具体化して定義します。これにより、成果物のブレを小さくし、思ったのと違うものができるリスクを減らします。
進捗の管理
仕事を依頼したら、担当者に「2割8割共有」を依頼します。2割8割共有とは、仕事の進捗の20%の段階で1回、80%の段階で1回共有してもらうことです。
20%の時点では、担当者が考えている成果物の方針が間違っていないかを確認します。方針が間違っている場合、ここで修正が可能です。
80%の時点では、成果物をあとどれくらい洗練させるかを確認します。担当者の考えている100%の成果物が、依頼者にとっては120%(過剰品質)になる場合もあるため、これ以上作業が必要か否かも確認します。
2割8割共有
2割: 資料の章立て、フォーマットができた段階で共有してもらう
8割: おおよそできた段階で共有してもらう
共有時は、できるだけ作成中の成果物を見せてもらいます。成果物を見ずに口頭だけで確認すると、後で認識の齟齬が発生しやすくなるため、避けるべきです。
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依頼した仕事の振り返り
依頼した内容と成果物、完了日をもとに、担当者の仕事に対する抽象度のレベルを振り返ります。
仕事がスムーズに進んだ場合、仕事の抽象度レベルがちょうど良いもしくは低かったことになるため、次回依頼する仕事の抽象度のレベルをやや上げます。一方で、仕事の手戻りや期限超過などで仕事がうまく進まなかった場合、担当者の抽象度のレベルが想定より低いと考え、次回依頼する仕事の抽象度のレベルを下げます。
仕事の振り返りをする際は、担当者に仕事の進め方や負荷などの感想をヒアリングすることで、担当者の抽象度のレベルをより正確に見極められます。
この振り返りサイクルを何度も繰り返し、担当者に仕事を何度も振っていくことで、担当者のレベルを正確に見極められるようになります。
まとめ
仕事には、抽象度の高さに応じて、「問題」、「方針」、「タスク」の3レベルがあります。仕事を依頼する際には、3レベルを意識し、依頼者と担当者の間で抽象度を合わせることが重要です。抽象度が高すぎると成果物が期待通りでない可能性が高まり、抽象度が低すぎると担当者の成長やモチベーションに影響します。このため、依頼者は担当者の経験や信頼性、論理的思考力を考慮して仕事の抽象度を判断し、依頼事項を明確に伝えることが重要です。また、進捗管理と仕事の振り返りを通じて、担当者の抽象度レベルを正確に把握し、次回の依頼に活かすことが必要です。
この記事により、スムーズな仕事の依頼につながれば幸いです!
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