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22歳、童貞

数年前、ある映画祭のボランティアスタッフに参加した時のこと。映画祭が終了し、スタッフのみんなで打ち上げをしようとなり居酒屋に行くことになった。人数は10人程度で、二つのテーブルに別れた。どちらのテーブルも男女比は半々。

飲み会開始から、別のテーブルはとても盛り上がっていたが、僕のテーブルの方は会話をしているものの全然盛り上がっていなかった。必然的に僕のテーブルにいた何人かが別のテーブルに移動する。僕は飲み会で席を移動することができない。自分が移動すると、近くの人に「あなたといても楽しくない」というメッセージ出している気がするし、いざ移動して盛り上がってる席に行くのは集団に群れているようでダサイ。だけど、時間が経過して帰る人が出てきたこともあり、テーブルはついに僕一人になった。この瞬間に感じたみじめさは今でも覚えている。

そーっと別のテーブルに移動すると、そこでは恋愛トークで大盛り上がりしている。僕は、何とか話題を振られないようにとするが駄目だった。

「kさんって彼女いるんですか?」

「いませんよ~、できたこともないですからね~」

「じゃあ、、、」

「そうそう、僕童貞なんですよね~」

「同性が好きとかってわけでは~」

「普通に女性が好きですよ」

できる限り、気にしてないようにヘラヘラしながら答えたけど表情はとてつもなく硬かったはずだ。その後、腫れ物に触るような空気のなか数分色々と質問された。人からの視線があんなにも辛かったのは初めてだった。

これまで、彼女が欲しいであったり、SEXがしたいという欲はあったけど願望にすぎず、自尊心が削られたりはしなかった。でも、この飲み会以来、童貞であることは、自分が人として欠陥のある証拠となった。そして、僕が価値のある人間だと他人と自分自身に対して証明するために童貞を卒業したいと切実に思うようになった。

自尊心を満たすために彼女を欲しがるのは、典型的なミソジニーだし、人の価値なんかSEX経験の有無だけでは決まらない。分かってる、分かってる、それくらいのことは分かっている。でも、あの飲み会で受けた屈辱が忘れられない限り、この感情からは逃げ切れることができない。

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