『キヲク』Every Little Thing(思い入れのある曲シリーズ)

今日はEvery Little Thingの『キヲク』について。

ELTは『Shapes Of Love』辺りから認知した。
その頃は当時の流行のTK的なサウンドを踏襲していたが、五十嵐充さんの脱退があり、『愛のカケラ』以降は徐々に王道のポップスサウンドに傾倒していくことになる。

個人的にこの『キヲク』が収録されているアルバム『Many Pieces』 から『Door』の辺りまでが楽曲的にもサウンド的にも好みに合っていて好きだ。

『キヲク』には少し印象深い思い出がある。
この曲に出会ったのは、当時購入したザッピィという雑誌がきっかけだった。
いつの間にか廃刊になってしまったザッピィ。

ザッピィには近々リリースされる楽曲のダイジェスト版のようなものが収録されたCDが同梱されていて、そこから新しいアーティストを知ることも多かったのだけど、とある月のCDの一曲目に収録されていたのがこの『キヲク』だった。

イントロから印象的でギターの音もカッコイイバラード曲といった感じで、歌が入るまでは誰の曲なんだろうと思っていたところ、持田さんの歌が入ったところで「これELTなのか!」と驚いたのを覚えている。

この前から少しずつ生音多めのサウンドに変わってきていたが、ここに来て更に変貌を遂げた印象がある。

持田さんの声や歌い方も、初期のような高音が突き抜けるようなものではなく、少しハスキーで深みのあるものに変わってきていたので、音楽性の変化とのバランスも良いと思う。

そしてこの変化に伴って、伊藤さんのギターにも変化が見られる。

初期のTK的なサウンドの時はいわゆるHR的なギターフレーズが目立ったのに比べて、この頃はより歌に寄り添った燻銀なフレーズが見られるようになってきた。

『キヲク』にもアコギのコードストローク、クランチで弾くアルペジオ、サビの歪んだバッキングに上メロ的なフレーズと様々なパートが入っているが、どれも初期にはあまり見られないタイプのフレーズになっていると思う。

またギターソロも見るからにテクニカルな物ではなく、大きな間合いの音に抑揚を付けて泣きのフレーズを聴かせてくれる。
派手ではないがとても印象的で、その後に続くラストのサビの劇的さに拍車を掛けてくれている。

そして曲全体のコード構成について言うと、この曲も転調の嵐で、Aメロ、Bメロ、サビと全てキーが変わっている。

特にBメロからサビに移る転調ではキーが6つ上がっており、構成音がほぼ被らないキーへの転調なので非常に劇的な変化に聴こえると思う。

ELTの転換点に位置すると思うこの一曲。
是非聴いてみてもらいたい。

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