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初めてのひとり旅。

街の人はとても暖かかった。
お店を出るとき
ありがとうございました、だけではなく、
「楽しんでくださいね。」と
朝食をいただいたお店では
「いってらっしゃい!」と
老舗のパン屋さんでは
「ここの空気も持って帰ったらいいよ!」と。


えいやっ、と訪れてみたカフェで
他のお店や楽しめるスポットを教えてくれたこと。
私の住んでいるエリアにほどなく近い、喫茶店やお香屋さんを
教えてもらえるといった、逆輸入のようで不思議な感覚が面白かったこと。
別々のお店で購入した2冊の本が偶然にも
少し繋がりをもつことに後々気がついたこと。
町内イベントのご挨拶でお店に来た方と、そこの店主さん
との会話中に混じらせてもらったこと。
ひょんなきっかけで2日続けて通わせていただけるお店に出会えたこと。
街の景色と穏やかな静けさが心地よく、
なんともなしに眺めていた幾らかの時間のこと。

念の為にと買っておいたガイドブック。
結果的に書かれていた内容とかけ離れた過ごし方をしていたように思う。


「写真、海と建物ばっかりやな。」
友人に言われた一言でハッとさせられた旅先での写真の数々。

訪れたお店の外観だけ撮らせていただいていた。
見返すたびに店内の装飾や空気感、
そこのお店の方のお人柄やとりとめなく話した内容。
あたかたもその部分の写真も撮っていたんじゃないかと思うほど
ぐわっとその光景が鮮明に浮かび上がる。

なんでもかんでも細かく撮って残してしまうのは
良い面もあるが、自分のなかではかえってリアルから
遠ざかってしまうように感じられた。

写真には残していないその場の空間の居心地の良さ、
珈琲を一口飲んだ瞬間、美味しさに感動したことは忘れられない。

物を買って帰るだけが自分自身のお土産ではないのだなということに、
ひとり旅を通して気付かされた。大変大きく、目に見えない物をお土産にして持ち帰ったらしい私は、旅行から暫く経った今も、ふとした時に様々な光景を思い出している。

近いうちにまた訪れたい。
そして自分にとって柔らかく過ごせる場所を。
どんどんと足を運んでゆきたい。


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